そして、読者向けの小説を書いてみた
実は、前回の出来事は、もう何ヶ月も前の話だ。
アレから、僕は精神的大ダメージを負ってしまい、執筆量が激減してしまったのだった。
“普通の読者さん”の言葉は、それほどまでに絶大な威力を持っていたわけだ。
散々、悩んだり迷ったりした末に、僕はエロ小説を書き始めた。それも、かなり露骨で過激なエロシーンがバンバン登場する小説だ。
さらに、それは特殊な趣味へと走っていく。普通の人が敬遠するようなプレイや描写をいくつも行った。
そうして、案の定、また普通の読者さんは激怒した。
僕は、徹底的に罵倒され、非難された。
「私が言ったのは、こういうコトじゃないのよ!むしろ、これじゃあ、全く逆じゃないの!!」と。
でも、今度は以前ほど傷ついたりはしなかった。
むしろ、僕は快感すら覚えていた。
「ザマア見ろ!やってやったぜ!!これこそが、僕の世界!僕の描く小説だ!!読者なんてクソ食らえ!最初にいるのは作者!小説というのは、作者の世界に読者が入門してきているに過ぎない。理解できない読者なんて、みんなみんな去ってしまえばいい!!」
心の底で、僕はそう叫んだ。
でも、同時に僕は反省もした。
「さすがに、ちょっとやり過ぎただろうか?じゃあ、次は、もっと読者向けの作品を書いてみるかな?」と。
そうして産まれたのが、「拾った彼氏を理想の男性に育てるまで」という女性向けの恋愛小説だった。
けれども、この作品も途中から、僕の世界へと染まっていく。いや、正確に言えば、それは“僕の世界”ではない。「拾った彼氏を理想の男性に育てるまで」という作品の主人公である“私”の世界だった…