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これは、“真の小説の書き方”なんかじゃない!!

 “違うな…”と、僕は思った。

 ここ数日の僕の小説の書き方、これは違う。“真の小説の書き方”ではない!!


 何がそう思わせたのかは、わからない。

 けれども、心の底の直感が、そう語っている。

 なあ、そうだろう?僕の心の底に住まう男よ?


「ああ、そうさ」と男は言った。

 心の底の世界から抜け出してきて、僕の目の前に座り、そう言った。

「お前の小説の書き方は、こんなもんじゃなかったはずだ」

 男は、ハッキリとそう断言した。


「じゃあ、どう違う?以前と比べて、どう違う?前と比べて、僕はどう駄目になった?」

 その問いに、男はこう答える。

「無難になったよ。小綺麗こぎれいにまとめようとしてやがる。良くもなければ、悪くもない。あえて言うなら、“そこそこ”だ。そこそこいい小説だし、そこそこおもしろい。おそらく、この方法では、読者に安心感を与えるコトはできても、衝撃を与えるコトは不可能だろう」


 思っていた通りの答が返ってきて、僕は安心した。

 いくらか厳しい答ではあったけれども、“僕が心の底で思っていながら、上手く言葉にできなかったコト”をハッキリと言ってもらって、僕は安心したのだ。


 男の言葉は、まだ続く。

「以前のお前ならば、もっと“情熱”を持って小説を書いていた。今の小説に、それが全くないというわけではない。いくらかはある。だが、決定的ではない。情熱が先行しているタイプの作品ではない。“ついでにある”といった程度。オマケに過ぎない」

「オマケ…」

「そうさ。誰に遠慮しているのかは知らないが、そつなくまとめようとしてる。『なるべく矛盾がないように』『読者に嫌われないように』そういう思いがプンプン臭ってくる。伝わってくるぜ!」

「……」

 僕は、何も言い返せない。

「お前の小説は、そんなものだったか?誰かに嫌われないための小説だったか?違うだろう?そうじゃないだろう?そうじゃなく、『世界中の人間から嫌われてもいい!』『既存の世界を破壊してやる!』そういう思いが根底にあって初めて、創作に向ってただろう?忘れたか?その頃の思い!情熱を!!」

「思い…情熱…」

「体裁なんて、どうでもいい!設定なんか、ムチャクチャでいい!!矛盾しまくりでいいじゃないか!!代わりにあふれるほどの情熱を!熱意を!魂を!それが、“小説”ってもんじゃなかったのか!?“おもしろい”ってコトじゃなかったのか!?」

「熱意、魂、おもしろさの正体…」

「そうさ!もう1度、取り戻せ!あの頃の魂を!!文体はムチャクチャ!!誤字脱字だらけ!!人々からは総批難の嵐!!だけども、お前自身は最高に満足しながら、書き続けていた時間があったろう?」

「満足しながら書く…」

「そうさ!そうすりゃ、他の誰から見捨てられようと関係ねえ!!このオレだけは、見放したりはしねえ!!心の底からお前の援護をしてやるよ!!」


 そうか…

 僕は、いつの間にか“無難な小説”を書こうとしていたわけか。

 意識してか、無意識の内にかは知らない。だけど、結果的に、そうなってしまっていたコトだけはいなめない。

 それなりに満足しつつ、それなりに形の取れた、それなりの小説。

 それじゃあ、駄目だったんだ!


 休もう!今夜は休もう!

 僕は、そう決めた。

「毎日、2話ずつ進めていく」というノルマは達成できないけれども、今夜はもう休もう。

 きっと疲れているのだ。肉体的にも精神的にも疲れ切っているのだ。

 だから、以前のように情熱を最優先にした小説が書けなくなってしまっている。そうに違いない。


 この休みは、決して“逃げ”ではない。

 明日の為に、あえて休む。“休息”に過ぎない。

 そうだ、この間、決めたばかりじゃないか。

「今年は、適度に休みを取れるようになろう!そうして、その休みが、さらなる小説の質の向上、能力の向上につながるように!」と。

 半日休もう。丸々1日ではなく、とりあえず半日。

 そうすりゃ、きっと、明日はもっといい小説が書けるさ!!

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