深い深い海の底を泳ぎ続けるだけの人生
深い深い海の底。
どこまでもどこまでも泳ぎ続ける。
終わりのない戦い。
果てしない旅。
毎日、小説を書き続けるというのは、そういう気持ち。
もしかしたら、「この人生は、間違っていたのかも知れないな…」と思うコトが、今でもある。
もっと普通に当たり前に生きて、結婚して、子供がいて、幸せで暖かい家庭を築く。代わりに、小説は書けない。全く書けないわけではないだろうけれども、間違いなく、今よりは質は下がり、量も激減する。
そんな人生を歩んだ方がよかったのではないだろうか?
それは、“あり得たかも知れない可能性の世界”の僕の姿。
残念ながら、この人生は、そうではなかった。何もできず、誰からも認められず、代わりに1つだけ能力を得た。“小説を書く”という能力を…
これはリスクにまみれた人生。まるで、自爆兵のようなもの。爆弾を抱えて、戦場を走り回る。いつ爆発するかも知れない。1度、爆発すれば、それで終わり。肉体は粉々に吹き飛び、再起不能。だからといって、進まないわけにはいかない。その場に立ち尽くすこと程、危険な行為はないのだから。
何がどうあろうとも、進み続けなければならない。
それを別の言葉に言い換えれば、“小説を書き続ける”しかない。
これは、呪われた人生。
それゆえの快楽もある。多くの人が、その人生で、ただの1度も味わうことなく死んでゆく。そうのような快楽だ。
その為に背負ったリスクは、あまりにも大きい。普通の人には、背負いきれない程、大きな大きなリスクだ。
全ての人との交流関係を断ち、たった1人、孤独に進み続ける。小説を書く以外のありとあらゆる能力を失い、それでもなお戦い続ける。実際にそうできているかどうかは、わからないけれども。少なくとも、そのくらいの覚悟はある。
さあ、進もう!
昨日も書けた。今日も書いた。ならば、明日も書く。
明後日も、明明後日も、その次の日も。書けるだけの小説を書く。
それだけの人生さ…