辞書をかじる夢
ある日、僕は夢を見た。
大きな虫の化け物になって、端から辞書をかじっていく夢だ。
虫の化け物となった僕は、図書館を襲撃し、日本語やら英語やらドイツ語やら中国語やらの辞書を端から端からかじっていく。ガジガジガジガジかじっていく。
そうして、かじって飲み込んで、吸収してしまったページは、僕の新たな力となる。
攻撃力や防御力は増し、新しい能力が使えるようになっていく。
空気を切り裂いて敵を攻撃したり、重力で物を重くしたりできるようになる。
さらに、僕は辞書だけでは飽き足らず、他の本にも手を出し始める。
画集に写真集、健康について書かれた本。歴史書に哲学書。育児書に教育関連書籍。美味しいパンの焼き方に、ケーキやデザートのレシピ本。世界中の文化や風土に関するデータ。囲碁に将棋にチェスにオセロの解説書。
図書館だけでは満足できず、僕は街の本屋を襲い始める。そうやって、次から次へと日本中の本屋を食らって回る。
そうして、そのたびに僕は成長し、強くなってゆく。
その代わりに、僕の体は重くなり、動きは鈍くなっていく。
大量の文字と知識で、僕の体の中はいっぱいになり、ついには身動きが取れなくなってしまう。最後は地面にめり込んで死んでしまう。
そんな夢。