白梅花が散る前に
掲載日:2014/01/12
辺りは、白い、白い花の海。
僕の上に降り注ぐ、六花の花弁。
君は、覚えているだろうか。
願いを込めて、目を閉じる。
―――ひらり、白い一片。
一年前―――
白い花を見上げて、一人の少女が佇んでいた。
その頬を一滴の雫が伝う。
僕は言葉もなく、その純真な横顔に見とれてしまった。
彼女が笑ったなら。
もし、彼女が笑ったならば、その笑顔は白梅花の花のように、無垢で美しいに違いない。
それから毎日、彼女は白梅花を見に来た。
幾度か顔を合わせるうちに、言葉を交わすまでになれた。
僕は、ますます彼女に惹かれていく。
彼女の笑顔が見たい。
そう強く思わずには、いられなかった。
だから、白梅花の季節が終わる頃、僕は君に云ったんだ。
「僕は、毎年この白梅花の世話をしているんだ。
もしも、僕に・・・。」
僕に君の笑顔を見せてくれると、云うのならば・・・。
来年の。
『白梅花が散る前に、笑顔を見せてくれないか。』
―――ひらり、またひとつ。
降りしきる、白い花弁。
高鳴る鼓動を落ち着けながら、僕は目を開ける。
見えた白い靴の爪先。
僕は、ゆっくりと顔を上げる。
白梅花が散る前に。
―――見せてくれた君の笑顔は、最高に綺麗だよ。




