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知りません。日本語の話せる方を呼んでください。さようなら。
「エクスキューズミー?」
三好伊為三へ、道を尋ねる外国人観光客は哀れである。
三十代ほどの白人男性だ。彼は、駅に行きたかった。それを尋ねる前に、しかし、
「ユーキャンスピークジャパニーズ?」
非常に流暢なアクセントで、伊為三はそう言った。白人男性はかなりほっとした表情になった。しかし、妙な事を訊くな、とも思った。
「ノー」
白人男性は言いながら首を振った。伊為三が何も続けてこないので、彼は、駅への道順を改めて訊ねた。
「ジュヌコンプランパ。アプレケルカンキパルルジャポネ」
「ホワット?」
「オルヴワール」
手をひらひらさせて、悠々と、伊為三は立ち去った。
何がなにやら、わからぬまま、白人男性はその場にしばらく佇んでいた。