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スケッチ
悲しい事に、猿飛佐助は、真田雪、由利詩来と同じクラスである。
美術の時間、教諭が提示したのは、先日、教諭自身が釣り上げてきた、サクラ鱒だ。
筆を走らす、静寂の音。
静かな空気、寂たる教室。普段の騒々しい日常が、うって変わって穏やかなものになる。
心洗われる、佐助の心境はまさに、それだった。
だがしかし、佐助のささやかな望みは、いつもすぐに打ち砕かれるのが、常だった。
「そう言えば、今のこの状況って――」
ふと詩来が、そう呟いた。
「どうかした、ウタちゃん?」
画用紙から、顔を上げて、雪。
「男子たち今、全員、マス書いてる」
エンピツの、折れる音が、そこかしこからした。折ったのは、全員男子だった。
「マス書いて、写生してる」
聞いた雪は、頷いた。
「そうだねえ、写生してるねえ」
佐助はキレ、怒鳴った。
「下ネタはやめろっつってんだろ!」
佐助の望む、平穏な日常は、こうしていつも壊されるのだ。そして、純情な男子達は、そうじゃない子も含めて、ドキドキさせられるのだった。
てか……くだらねえなぁ、おい。