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モービルスーツ


会議の席上、あまりに荒唐無稽な真田雪の提案に、望月六華(りっか)は何を言われたものか、理解が出来なかった。とはいえ、それも一瞬、すぐに思考を回復させて、彼女は雪の言葉を反復した。

「私に作れと? その、バンダムとやらを」

「そう! バンダムさえあれば、他校、おそるるるに足りず!」

 雪は拳を握り締めて、本気でそう確信しているようである。まあ、実際作れるのであれば、その確信は間違ってはいない。作れりゃね。

「ふうむ。そもそも何故、私にバンダムとやらを作らせようと思ったのだ?」

 ――どうせ十環(とわ)がDVD貸したんだろうな……。

 タイムリーに連邦のピンクい制服に身を包んだ筧十環を眺めながら、佐助は早々に結論付けて、どうやったらこの下らない会議をさっさと終らせるかを考える事にした。

「昨日の深夜にオヴァハンゲリオンの再放送を観て」

「なんでだよ!?」

 我知らず、佐助はつっこんでいた。

「うん。だって、紫のは生物兵器でしょ?」

「うんそう」

 佐助より先に、十環が頷く。

「でも白いのは、完全機械だから、六華ちゃんにもいけるんじゃないかと」

「なるほどぉ」

 感心する十環と三好清海。

「そのバンダムとやらは、完全機械なのか、十環」

 確認してみたところ、即答した十環へ、畳み掛ける六華。

「デカイか?」

「まあ、大きいかな。ファーストで三十五メートルはあるけど」

「デカイな。コックピット作らねば」

 六華はどうもやる気らしい。

「ちょ、え? 作る気か?」

 佐助は面食らう。

「うむ。完全機械なら、科学者魂の見せ所だ」

 六華はそう答えた。

「この前、CPUとか作れっつった時、無理だとか言ってなかったか?」

「佐助。お前は馬鹿か? お前のCPU(脳ミソ)のクロックは一メガヘルツか? いいか? 科学というものは、ちいちゃくするのがしんどいんだ。ケータイだって元々はデカかっただろう? デカイのなら、やりようもあろうと言うもの!」

 六華は不敵すぎるほど不敵に微笑んだ。

「とはいえ、三十五メートルは流石にデカ過ぎる。パワードスーツサイズなら、三日で作れるが……」

「マジでか!?」

「だが、用意して貰うものがある」

「用意しましょうとも。ご先祖様の名にかけて!」

 雪は安請け合い。

「では、バンダリウムを調達して欲しいのだが」

「ばんだりうむ? なにそれ?」

 雪は首を捻る。十環は、嘆息してのち、解説し始めた。

「レアメタルの一種でこれが使われたモービルスーツだからこそバンダムという名称でそれまでのモービルスーツには無い強度の装甲を――」

「ウザイ! オタクが調子こくほど見苦しいものは無い!」

 三好伊為三(いなみ)が叫んだ。

「ゴメン……」

 十環はしょんぼりした。

「つーか、六華。あんた何でピンポイントでバンダリウムとか突けるわけ? 知ってなきゃ無理でしょ。知らない体でここまで進めといて」

 霧隠才麗が指摘した。

「当たり前田のクラッカー。名作科学番組は新旧問わずチェックするのが科学者の基本だし」

「あれって、科学番組か?」

 才麗が呟いた途端、ピースの先端の灰が落ちた。十環が感極まる。

「そう! アニメじゃない! 現実のもの!」

「まあ、それはそれとして、調達が無理でも、明日迄に製作できる。むしろ、今日中に出来るが……性能は落ちる」

「早っ!」

 思わず佐助がそう口にしたが、直後、ふと悟った。

 ――ああ。まじめにやる気ねえわ。六華の奴。

「じゃあ、明日! 費用は?」

 と、雪。鼻息が荒い。

「そうだな……。ゼロだ」

「じゃ、ゴー!!!!」

 雪がゴーサインを出した。

「ちなみにコレが、一番人気のファーストのデザイン」

 パパッと十環がチラシの裏に書いたのだが、気持ち悪いくらい上手かった。


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