表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/23

見知らぬ天井

 ドラは、一筒、ニ筒、白。

 ふと、嫌な予感はした。だが、ツモってきたドラ牌を捨てる右手が止まらなかった。

 上等なブランドスーツを着た、五十年配の、社長業をしているという男が、千代の捨てた白板であがった。

「ロンッッ!!!」

 社長は半ば叫びながら、手配を見せた。

 中中中・發發發發(暗カン)・九萬九萬九萬九萬(暗カン)・一筒二筒三筒(一筒チー)・白単騎。

 しめて九十六符。

 三暗刻、小三元、中、發、チャンタ(食い下がり)、ドラ四。十一翻。

 青天井なので、九十六符を、場ゾロと合わせて、十三回、倍にし、それを更に四倍。百点未満の数を百点に切り上げると……。

 96×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×2×4。

 イコール3145800点。

 いつもは千点千円だが、青天井レートは二分の一、つまり、千点五百円として、千代はこの局、百五十七万二千九百円を、社長に渡した事になる。

「千代ちゃん、折角競馬で獲った百万が解けちまったね」

 千代の対面に座った駄目徳が言った。

「解けたどころか、足が出ちゃった。ま、挽回するわ。まだ三局残ってるし」

 千代は強がったが、内心舌打ちしていた。白板を何故捨てた? ドラを切るのは、まあ、よろしい。しかし、社長は緑發と九萬の暗カン、ドヤ腱からの一筒を食っている。普通なら、いや、平生の千代ならまず、ドラの初牌など振らない所だ。

 こういうミスが、流れを変えるのを、千代は知っている。ドヤ腱も駄目徳も、ミスを犯した千代を狙ってくるだろう。

 千代は気合を入れ直して、配牌を取った。ドラは南。それが三丁、配牌時にあった。ダブ南ドラ三。

 ――絶対に取り返す! 三十符でも十三翻あれば取り返せる! あと八翻!

 だが、八翻など、そう簡単に作れるものじゃ無い。なんとなれば仕事も辞さない覚悟だった。

 だが、結局、千代は残り三局でようやっと五十万円取り戻すのが精一杯だった。

「豪気だね。惜しげもなく百万出しちゃうんだから」

「博打で獲ったお金だからね。無くて元々」

 そう言って、千代は笑った。当然、心では泣いていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ