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「――で、この場合のthisは……」
片耳にイヤホンをした岩山千代の動きが止まった。目を閉じて、片手でイヤホンが外れないように押さえたまま、微動もしない。
「あの、先生?」
「し――っ!」
生徒の声をそれだけで止めた千代。
ざわ……
ざわ……
と生徒達は訝るが、一分後、
「よし。獲った」
特に表情を変えるでもなく、千代は呟いた。
「……競馬、ですか?」
「That‘s light。いやー、最近キテるわーわたし。昨日のスロットも設定6の台掴めたし。もういっちんち中、出っ放し。ま、最後らへん? バケが多かったけど結局万枚行ったしね。さっきのレースも三連単の万券GET。中央からの転厩馬なんだけど――」
訊かれるのを待っていたかのように、千代は笑顔で語りだした。
「あの、自慢話はいいんで、授業してください」
「なによー。せっかく百万円になったのに」
ざわっ!