*ピンチかもしれません
「! 高瀬? 崎村? どこに行きやがった」
えんじ色のスーツを着ている男はキョロキョロと辺りを見回した。
「!? なんだてめぇっ」
「あ、しまった」
今度も跳び蹴りしようと駆け寄った時弥だったが、技をかける前に振り向かれてしまい立ち止まる。
「あのバカ」
杜斗は頭を抱えた。
「どうした!?」
えんじの声で他の男たちも建物から出てくる。
「あっおまえ」
ピアスが時弥を指さした。
「やあ。お元気?」
にっちもさっちもいかず時弥はニコリと笑う。
「なんだこいつは?」
黒スーツの男は顔をしかめて時弥を見定めるように見つめた。
「こいつですよ。言ってた自衛隊のやつって」
「! 理絵ちゃん」
茶髪が黒スーツの後ろから少女を連れて現れる。
「なるほど」
黒のスーツに身を包んでいる老齢の男はそう言って口の端を吊り上げた。
「向こうから出てきてくれた訳か」
下品な笑みを浮かべると、えんじスーツが懐からハンドガンを出して時弥に向ける。
「うへ……」
さすがにこれはピンチ。
と思った刹那──銃声が響き渡り、えんじスーツはハンドガンを持っていた腕を押さえていた。
「はら……? あ、杜斗」
「世話やかせんな」
出てきた杜斗の手にはハンドガン。先ほど縛り上げた男たちから奪っていたものだ。
「お前らも動くなよ」
「くっ……仲間がいたのか」
苦々しい表情で杜斗を黒スーツは睨み付ける。
「武器を捨てろ」
「くそ……」
茶髪とピアスとドクロブレスレットが改造モデルガンを放り投げた。それを見て時弥は安堵の溜息を漏らす。
「なんとなく事件解決?」
時弥が発した瞬間──銃声が空に響き渡った。
「え……?」
「ぐっ……」
気がつけば目の前に杜斗が立っていた。