*戦闘開始
「……」
時弥が所定の位置に付いた事を確認し互いに無言で頷く。
様子を窺っていると男はタバコを吸ったあと苛つくように足下に捨て革靴で踏んづけた。溜息を吐いて家の向こうに見える木々に視線を泳がせる。
「!」
今だ! 杜斗は一気に山から飛び出す。
「!? なんだきさ……ぐはっ!?」
言い終わらないうちに時弥が男の背後を取って跳び蹴りを食らわせた。
「はい、大人しくしてね~」
「……やる事がえげつないなお前」
大きな声を出される前に相手を叩くのは当り前だが、まさか跳び蹴りを食らわせるとは思わなかった。
杜斗は呆れながら手際よく物色して武器を奪い縛り上げている時弥を見下ろす。
「とりあえず1人だね」
杜斗に武器を渡し手をはたきながら立ち上がる。
「ハッ!? もしかして……」
「ん?」
何かに気づいた時弥は顔を青ざめた。
「あのおっさんに変なことさせるために理絵ちゃんを……!?」
「だから待てって!」
家に向かって走ろうとした時弥の首根っこを掴む。
「お前の考えは短絡的すぎる!」
「だってぇ~……」
「とにかくだ。こいつをどっかに隠せ」
「了解」
2人は肩と足をそれぞれ持ち上げて男を運んだ。とりあえず近くの倉庫の奥に押し込む。そして再び山の中に隠れて様子を窺った。
「! おいっ高瀬?」
出てきた藍色スーツの男は仲間がいない事に気がついて呼びながら辺りを見回る。
「どこに行ったんだあいつ……。ぐぎゃ!?」
時弥は再び背後から忍び寄り跳び蹴りをお見舞いした。
「……他のやり方ないのかよ」
「これが一番、効果的なの」
そうだろうな。完全にのびてるぜ……と杜斗は目を据わらせて気絶している藍色スーツを見下ろす。
同じように縛り上げ倉庫の奥に押し込んだ。そしてまた山の中に隠れて様子を窺う。