*実は脱がなくても凄いんです
空が明けてゆく──時弥は静かに目を開けて薄暗い外を見つめた。
「……」
胸の中で眠っている少女の頭を見下ろす。
このまま相手の人数が変化しないなら行動に出てもいいかもしれない……多少の怪我はやむを得ないだろう。
寝ていたので体はまだちゃんと動かない。仕掛けるなら昼間か。
「ン……」
「!」
そんな事を考えていると少女が目を覚ました。
「おはよう」
「あ、おはよう」
縛られて倉庫にいなければ普通の挨拶だ。否、時弥の笑顔が縛られている事など忘れさせてしまいそうなほど爽やかなのである。
「よく眠れたかな?」
眠れる訳がない。
「……」
理絵は言い出せずに苦笑いを返した。
「自衛隊にいるって、どれくらい?」
「まだ入ったばっかだよ。新人もいいトコ」
肩をすくめる。
少女はそれに残念そうな顔をした。期待はずれだと思っているのだろう。当り前と言えば当り前だが。
脱ぐと凄いが今の見た目では強そうには見えない。
少女の感情が見て取れて時弥は少しムッとしたが、強そうに見えて相手に警戒されても困ると思い今の見た目に感謝しておく事にした。
言っておくが悪くない見た目である。単に「強そうには見えない」というだけだ。
「……」
ていうか……時弥はふと考えた。
杜斗はいつ行動に出るんだろうか? そこの処は打ち合わせしていない。捕まってる手前、俺からの行動は出来ないよね。じゃあ向こうの行動待ち?
「どうしたの?」
何か考え込んでいる時弥の顔をのぞき込む。
「! ああ、ごめん。なんでもない」
心配させないようにニコリと笑う。その時、3人の青年が時弥たちに向かって歩いてきた。
「女、来い」
「え?」
理絵はびくりと体を強ばらせた。「どうしてあたしだけ?」という顔をして近づいてくる男を見上げる。
「ちょ、ちょっと待って……どうして彼女を?」
「うるせぇ! おまえには関係ないんだよ」
なんとか止めようとした時弥の肩を蹴る。
その途端──時弥はカッとなった。目が据わって無表情になる。
「!?」
青年3人はスッと立ち上がる時弥にギョッとした。手足をロープで拘束していたハズなのにそれらは床に投げ捨てられている。
「な……?」
両耳ピアスに無表情のまま近づき逆手に青年の手を掴んでキレイに投げ飛ばした。
「ぐえっ!?」
受け身の取れない投げ方をされてしこたま背中を打ち付ける。
「なっ、なんだてめぇ!」
茶髪が驚いて改造モデルガンをヒップホルスターから抜く──が、その手首を掴み上げまたも投げ飛ばした。
「ヒッ……な、なんだよおまえ」
残った青年は少女の腕を掴んだまま引きずるように後ずさりする。
「彼女を離せよ」
無表情な瞳で言い放ったその口元は少し吊り上がっていた。