幽霊なんて信じてない
美穂子(みほこ)は深夜、一人で人気の無いトンネルの前に来ていた。ここは有名ではないが心霊スポットである。美穂子は懐中電灯を片手にトンネルの中へ入って行った。
トンネルの中では自分の息遣いと足音だけが反響する。
美穂子は幽霊なんて信じてない。今までいろんな心霊スポットを巡ったが、幽霊を見た事は一度もなかった。心霊現象にも悩まされてない。
なら何故年頃の女がこんな事をしているのか。
美穂子はトンネルの反対側に着く。
「やっぱりいないじゃん……お父さん……」
思い出すのは亡き父の言葉。
美穂子が病室で見舞いの花を飾っている時、父は言った。
「お父さんが死んでも美穂子達の事見守ってるからな」
美穂子は呆れながら父の言葉を聞いていた。
「幽霊なんている訳ないんだから馬鹿な事言ってないでさっさと病気治してよ」
父は困った様に笑う。
しかし、治療の甲斐なく父は死んだ。
幽霊がいるとわかったら……それを確かめられたなら……自分はこんなに寂しくならないだろうか……。
だから美穂子は心霊スポットを巡っては幽霊を探している。
父の死と向き合う為に。
美穂子はトンネルを折り返し、来た道を戻る。
もうすぐ出口だ。
「今回もいなかったな……」
ため息をつき、トンネルを出ようとすると……。
「また来てね」
幼い少女の声が耳元ではっきりした。美穂子は勢い良く振り返るが、当然誰もいない。生暖かい風が吹く。
「……」
美穂子は走ってその場から去った。後ろから少女の笑い声が聞こえた気がした。
朝、美穂子はごはんを食べるのにあくびをしながらダイニングに来た。
「おはよう美穂子」
母がテーブルで朝食をとりながら美穂子に挨拶をする。
「おはよう」
美穂子の席にはすでに朝食が置かれている。美穂子は席に座ってトーストをかじる。
「今日も心霊スポット行くの?」
母は聞く。
「もう行かない」
美穂子がきっぱりと言うので母は目を丸くする。
「なんで?」
「幽霊はいるってわかったから」
美穂子は窓から空を見上げる。
「(見守っててね、お父さん)」
見上げた空は晴れ渡っていた。




