プロローグ:邂逅
初めまして,惣菜コーナーと申します。
ずっと頭の中で構想を練ってきたものを遂に出します。
初心者かつデビュー作なので拙い所があるかと思いますがお許しください
嗚呼。空って、綺麗だなぁ。
―――――――――――――
その日は、よく晴れていた。絶好の観測日和だ。
夜風に当たる。夜の光を受けながら扉を開け、一段飛ばしで屋上まで駆け上がる。
――先輩、絶対喜んでるんだろうなぁ。
そう思いながら、屋上に出た。
「今到着しましたッ、先輩!」
くるり、と。望遠鏡を覗いていた先輩が振り向く。
「よぅ、遅かったじゃん?」「妹がかまちょになったので、相手してたら遅れちゃって」「おうおう、元気そうでなによりなにより」
他愛のない、いつもの会話。頭上には、綺麗な星空が広がっている。
今日は流星群が降るらしく、先輩――ダリアは、いつもより機嫌が良さそうだった。
「ほら、もう始まっちまってるし。お前も見なって」「流れ星に祈っとけよ。“合格しますように”って」「もう試験終わったし、あとは神頼みだけだろ?」
矢継ぎ早に話しかけられ、私は望遠鏡を覗き込む。
「わぁ……綺麗」「だろ?」
無意識に、そんな言葉が漏れていた。
――その瞬間。
一際大きな流れ星が、空を横切った。
「おや? ありゃデカいな。隕石になりそ〜……ほら、お祈りお祈り。デカいのは叶えてもらえやすいかもよ?」「あっ、そうか!」
慌てて、ぱん、と手を合わせる。
「高校合格しますように、高校合格しますように、高校合格――」
その願いは、途中で途切れた。
――あの流れ星。
あれは。
あれは、
流れ星なんかじゃ、ない。
人だ。
ぶわ、と全身の毛が逆立つ。思考が真っ白になる。
――なのに。
身体が、勝手に動いた。
「おい、どうした!?」「え、えっと、その……用事! 用事思い出したので帰ります! ごめんなさい!」
自分でも何を言っているのか分からないまま、階段を駆け下りる。
杖を握る。魔力を流し込み、空へ浮上する。
――飛行。
あの高度は、法律で禁止されている。じゃあ、なんであんな所に。
魔力切れ?事故?
ぐるぐると回る思考を振り切り、速度を上げる。
視界の先。裏山へと落下していく“それ”が、眩い光を放っていた。
――どうしてか。
それを、知っている気がした。
―――――――――――――
――なんだろう。
浮いている。眩しい。
知っているはずの言葉。知っているはずの意味。
それらが、うまく掴めない。意味は分かるのに、感覚がない。
――分からない。
ただ、空が綺麗だった。
あの線は、たしか――水平線。
知っている。けど、見たことがない。
……でも、見たことがある気もする。
自分が、定まらない。
――ゴシャ。
遅れて、音がした。
何かがぶつかる音。
違う。
――私が、ぶつかっているのか。
木々の間を裂くように落ちる。――雷のように。
枝が折れ、葉が散り、視界が揺れる。
地面。背中に、衝撃。
呼吸が、止まる。
――嗚呼。
やっぱり。
空は、綺麗だ。
―――――――――――――
草を掻き分ける。折れ曲がった枝を押し退け、前へ進む。
これだけの枝が折れるほどの衝撃。なら、本当に――
死んで、いるかも。
――そんな想像は、間違いだった。
開けた場所に出る。
散乱した木々。その中央に。
――それは、いた。
人影。多分、自分と同じくらいの年頃の少女。
けれど。
あの高度から。あの速度で。
これだけ木をへし折って落ちてきて。
――無傷。
傷一つ、ついていない。
理解が、及ばない。
なのに。
分かってしまう。
――あれは、普通じゃない。
背筋を、何かが這い上がる。
原始的な。本能的な恐怖が、
私を支配した。
―――――――――――――
「……ねぇ。」
声をかける。
目の前の、杖を持った少女が――びくっ、と肩を跳ねさせた。
顔は、真っ青。
嗚呼。これはきっと、驚いている。
表情に出やすいタイプらしい。
――でも。
どうして?
分からない。
そう考えながら、ゆっくりと立ち上がる。
そのたびに、少女はわずかに後ずさる。
警戒されているらしい。
……どうしてだろう。
「私は、何が駄目?」
その言葉を発した瞬間。
少女は、化け物を見るような目でこちらを見た。
そして。
――逃げた。
全力で。一切の迷いもなく。
……なぜ。
ほんの少しだけ考えて。
――追わなければならない気がした。
理由は分からない。
それでも。
私は、山を駆け降りる。
深夜の鬼ごっこが、始まった。
次の話に続きます。
投稿は不定期かもしれません




