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記憶を失った白龍姫と聖龍騎士  作者: 悠木 源基


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第31章


 七年前の大火災で両親が行方不明になり、家を焼失してしまった私は、母様の実家であるオーリス家に引き取られた。

 オーリス家は郊外にあったので、被災せずに済んだのだ。

 叔母のアーダと義理の叔父は両親のことは毛嫌いしていたけれど、甥や姪までは嫌ってはいなかった。

 しかも私は年下のいとこの面倒をよくみていたので、叔母夫婦にとっては良い子守兼家庭教師ができたと喜んでいたと思う。

 父方の親戚が引き取るという話を全て断っていたから。

 

 それまで縁のなかった父方の親戚がなぜ引き取るなんて言い出したのかといえば、母様が白龍姫だと明らかになったことで、その娘を養女にでもすれば色々と旨味があると考えたみたいだ。

 父様の兄達の家は全て燃えてしまった。だから私を引き取れば再建をする時に色々と役所や業者達に優遇してもらえるのではないか、そんな思惑があったのだろう。

 今まで散々我が家を見下し、利用してきたというのに、本当に彼らには羞恥心とか矜持はないのかしら。

 

 でも、もっと図々しかったのは、父様の後輩騎士達だった。

 生前大変お世話になったから、その恩返しに遺児となったお嬢を引き取らせて欲しいと言ってきたのだ。

 家も店も焼失して、馬鹿息子達の学費も払えなくなっているくせに。魂胆が見え見えで気分が悪くなって、彼らの目の前で吐いてやったわ。

 

 叔母夫婦は母様達が白龍姫と聖龍騎士だと分かってからも、何かあるごとにネチネチと二人の悪口を言っていた。

 二人のせいで自分の兄達は騎士になって戦死してまったと。そしてその結果、自分は跡取りにならざるをえなかったのだと。

 叔父様達が生きていることを知っていた私は、罪悪感をそれほど感じることなく、ずっとそれをスルーしていた。

 

 未だに誰にも教えていないけれど、オーリス家の裏の岩山が白龍姫の聖地だ。

 そこに両親は眠りについている。両親の側に居られるのなら、叔母達の愚痴を聞くことくらいどうということもなかった。


 そして、三年前にツーホーク領がドラティス王国から独立してリューランド国となった。

 その時、陰で独立運動を進めてきた二人の叔父様達が家族と共に帰って来た。すると叔母様の態度が急変した。

 

「今頃帰ってきても、今さら当主の座は譲りませんよ」

 

 愛しい叔父達の顔を見た途端に、歓喜の声を上げる前に、叔母様はそう叫んだ。

 あれ? 当主になりたくなかったんじゃなかったの?

 叔父様達も苦笑いをしていた。彼らは姉と妹の暮らすこの地を守りたかっただけだった。

 そしてそれが実現した今、当主の座など望んではいなかったのに。

 それにオーリス家は白龍姫の系図から外れるのは明らかだったので、何も知らない妹が当主のままでも一向に構わないと叔父達は思っていたそうだ。

 

 本来オーリス家の娘とワントゥーリ家の息子が結婚するなんてことはあり得ないことだったらしい。

 ワントゥーリ家は三守護家であり、影からオーリス家の姫を守る存在だったのだから。

 しかし、父様と母様はそのご先祖様の血に逆らって愛し合ってしまったのだ。

 そしてその二人の娘である私がキンペリー家のルーディー君と婚約してしまったのだから、さぞかしご先祖様もびっくりだろう。

 私達の子供がサーラ姉様とメシトウ家出身のマータン義兄様の子と結婚したらどうなるのかしら?

 いや、いとこ同士はさすがにまずいわよね。それにご先祖様の血が濃すぎて、今頃になって龍以外のフェニクスとかユニコーンとかグリフォンが誕生しても混乱するわよね。絶対に阻止しないと。

 思わずそんな妙な妄想をしてしまい、ブンブンと頭を振った。

 

 するとちょうどその時、ポンポンと肩を叩かれた。びっくりして振り返ると、そこに眩いくらいに美しい顔があったので、私は二度びっくりしてしまった。


「何を驚いているの?」

 

 見かけは女神だが、その声は大分低くなっていて、やっぱり男の子だったのだなあ、などと馬鹿なことを思ってぽーっとしてしまった。

 一年振りに見る愛しい人。そしてこれからはずっと一緒にいられるのだ。

 彼は北方の地からその北にある国にある大学に最少年齢で入学し、しかも飛び級でこの春卒業したのだ。

 そしてこの春、私の職場の所長となることが決まったのだ。


「ますます格好良くなっていたから、思わず見惚れちゃった」

 

「それは僕の台詞だよ、愛しのお姫様」

 

「予定より早くない? これから駅に行こうと思っていたところだったのよ」

 

「君に一分一秒でも早く会いたくて、一つ前の汽車に飛び乗ったんだよ。

 だから父達は次の汽車で来るよ」

 

「まあ!」


 私は嬉しくなって婚約者の腕にしがみついた。

 

「聖堂の用事はもういいの?」

 

「ええ。明日の結婚式の準備は万端よ。ターリャ姉様はもうサーラ姉様の家へ戻ったし」

 

 サーラ姉様とマータン義兄様は、この国が独立した後にこちらに戻ってきて結婚した。

 義兄様はこの国に新しくできた学園の教師になった。姉様も教師になるつもりだったけれど、すぐに妊娠したのでそれは叶わなかった。

 そして今二人を妊娠中なので、私がターリャ姉様の結婚式の準備を手伝っているのだ。

 

 私とルーディー君は手を繋いで、すっかり復興した王都リューキの街の中をゆっくりと歩いた。

 これから聖地へ向かうつもりだ。

 

次章で完結となります。

17時10分頃の投稿となります。

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