表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢は有能侯爵夫人と結ばれたいー理解されないと思ったら、あっさり受け入れられましたー  作者: 餅月 響子
序章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/17

第10話 マーナの感情は頑丈な鉄壁で守られているかもしれない。

 赤い三角屋根のお城にはいつも鳩が飛び交っていたが、今日は何故か不吉な様子でカラスが一羽飛んで来ていた。何事も無ければいいなとキュリアクス・ゲウサは腕の筋肉を確かめてからベランダからエリーサベト・モルベリの部屋へと入った。ベランダに出たのは、天気を確かめるためだ。ここにいてちょうだいと朝から頼まれごとを受けて早くも3時間。いつになったら、エリーサベト・モルベリは戻ってくるのか。そもそも、何故ここにいなければならないのか意味が分からなかった。誰かに何かを言われたらすぐ戻るので用事があったら伝言を預かっておいてと言われる始末。まるで、電話番のようだ。ストレッチをして、どうにか時間を潰すキュリアクス・ゲウサは天井を見上げた。

 そこへ―――


「ねぇ、キュリアクス。ここで何をしているの?」

「……え? あ、ああ。ザンドラか。エリーサお嬢様かと思いました」

「あんな小娘と一緒にしないでもらえる? うーん、でも若く見られたってことかしら。それは喜んでいいの?」

「ええ、ええ。喜んでください。日々の努力の結晶でしょう。エステやお化粧にさぞかし……あ、これは失言だったか」

「まぁ、分かるのね。そうなのよ。エステには行ってませんけども、化粧品にはこだわっているわ。美容院には、御妃様に勧められたお店に行ってるのよ。キュリアクスも見る目があるわね」


 キュリアクス・ゲウサは、まさか喜ばれるとは思ってもおらず、冷や汗をかいて笑ってごまかしていた。部屋の中にはもう一人静かに仕事をしていた。それは、侍女のマーナ。2人の話を横目でチラチラと見ながら、熱心にエリーサベト・モルベリのベッドメイキングを行っていた。ザンドラ・ピーロネンが若く見えるという話はお腹を抱えるほど面白いと感じており、笑ってはいけないと必死で耐える姿があった。どうしても感情というものは隠しきれないもので、体が小刻みに震えていた。


「……あら、マーナ。何をしているの。風邪でも引いたんじゃない? 大丈夫かしら」


 細かいところによく気が付くザンドラ・ピーロネンは、彼女の額に手を乗せて確かめようとする。さらにおかしくなって顔が青くなって何も言えなくなっていた。キュリアクス・ゲウサはこの様子が笑っているのを最初から気づいていたが、何も言わずに黙って口を塞いでいた。それを見るのも面白くなってきたからだ。ここからは、ザンドラ・ピーロネンだけ理解に苦しんでいた。


「ねぇ、ちょっと大丈夫なの?! あなた。顔が青いわよ。一体何を食べたら、そんな色に……誰か、助けを呼んだ方がいいじゃない?」


 さすがのキュリアクス・ゲウサも笑いをこられることができずに大きな口を開けてゲラゲラ笑った。それを見たマーナはこんなに必死でこられているのにずるいと怒りに変わって青い顔から真っ赤な顔へと変貌した。


「え、え。ちょっと、あなた。一体どうしちゃったの? もう、誰か呼んでくるわ!」


 訳の分からないマーナの顔色に驚きを隠せないザンドラ・ピーロネンは、足早に部屋から出て行った。部屋の中には、マーナとキュリアクス・ゲウサだけになった。


「……さっきから何をしてるんですか。ザンドラの前であんな笑い方して!」

「すまんすまん。あまりにも面白くてな。悪い悪い」


 キュリアクス・ゲウサは目から涙が出るほど笑ってしまっていた。ポンポンとマーナの頭を軽くたたいた。それにさらに怒りを見せて、ハンターのごとくバシンと腕を振り払った。まさかの攻撃にさらに笑ってしまうキュリアクス・ゲウサだった。

 

「笑ってないで、早くエリーサベト様を探しに行ってはどうなの?」

「あ、ああ。そうだなぁ。でも、ここにいてちょうだいと指示されていたからなぁー……まぁ、いいだろう」

「え?! それっていつまではおっしゃっていなかった?」

「あ、ああ。何も。時間は特に指示されていないなぁ」

「エリーサベト様は覚えてらっしゃらないのかしら。今日はパトリック様とのレッスンをする日だったんじゃないかと思うのだけれど……」

「え、それは、絶対に言うと断言する予定ではないのか。一体何を考えているのか。探さないと。マーナ、ここに残っていてくれないか」

「え?! でも私、他の部屋のベッドメイキングの仕事が残ってて……ちょっと、キュリアクス! ……全く、話も聞かずに言ってしまったわ。私だってやることあるって言ってるのに」


 ブツブツと文句を言いながら、端のテーブルの上に飾っていた小さなレプリカのお城のおもちゃに触れて、中のお姫様を動かしてみた。自由自在に動かせたら、どんなに楽かと思ってしまうほどだった。


「エリーサベト様にそっくりね。本当にお人形みたいになってくれたら、どんなに私たちも楽か……」


 さっきまでの楽しい雰囲気が一気に現実に戻されてしまったマーナだった。立てかけていた箒を持ち直して掃除を念入りにすることにした。


 いつ戻るか分からないエリーサベトを待つ時間が長く感じたマーナだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ