5月12日
昨日に引き続き、戦闘訓練に明け暮れた。
右手との連携も上手くとれるようになり、右手の力についてもコツや応用の仕方などが理解できた。
出来ることは身体能力向上、ちょっとした空中浮遊、純粋な破壊力向上などなど……
本当に万能な力だ、確かにこれなら左手とやらとも戦えるかもしれない。
ただ少し気がかりなのは、右手と左手は双方サイズ可変らしい。
まあ、俺の身体に入った理屈を考えたら納得はできるのだが。
1~2mだと思っていたが、本当はもっと遥かに大きいとのことだ。
実際になってもらったら、本当にでかかった。
正確なデカさを測りようがないが、きっと3人が不自由なく暮らせるくらいの家が出来るくらいのデカさだったな。
そんな相手と戦うと考えると一抹の不安も芽生えるというものだったが、
『私と左手はほぼ互角、そこに君が一緒に戦ってくれるのなら必ず勝てるさ』
と励ましてくれた。
やはり俺の中に入っているだけあって、思考も筒抜けなのだろう。
訓練の最中に色々質問したことがある。
そもそもこんな開けた空き地で訓練して騒ぎにならないのかと。
『私の力である程度の認識阻害効果をもたらしている、普通の人間にはまず見えないだろう』
左手に見つかったりしないのか?
『10年以上も君の中にいた私を見つけられなかったんだぞ?』
……それはまあ、確かに。じゃあなんでそんなに長い間見つけられなかったんだ?
『そもそも、私たちの環境はお互い不利な状態なんだ。私は「外側」から人間に関わり、左手は人間の「内側」から関わり現世に帰す。そして今は、私は君の内側に入り、左手は外から私を探していて、つまるところお互い慣れない環境なわけだ。お互いを探知するレーダーのようなものはあるが、それも機能しづらいくらいにはね』
なるほど?海にいるワニと、陸にいるサメみたいな感じになっちまってんのか……?
『君の中に潜んでも、私が君に話しかけることで、左手に見つかるリスクは上がる。死者も微力ながら例外ではない。それで、私は基本的に君と話せず、死者たちも話せない日があったわけだ。長い間、君に真相を打ち明けられないでいて、改めてすまないね』
別にそれはいいよ。ちなみに、左手を倒せたらどうするつもりなんだ?
『手を繋ぐ力を持つ私だけが、我々全員を元の存在に戻せる。それも左手が私を狙う理由だ。だから、みんなを一つに繋げて元に戻る。それが私の目標だね』
と、色々明らかになった一日だった。
しかし今日も今日とて疲れた。
今日も早く寝て、疲労回復に努めるとしよう。




