5月10日
全てを思い出した。
だみーめすかーの、雪というのは良いヒントだった。
白い背景は、俺が思い出せていなかったからじゃなく、最初から白だったんだ。
ずっと前の出来事だった。
俺は、9歳頃に家族でスキーに行ったことがある。
その時に、俺は怖い想いをした。
正確には、したと思い込んでいた。
リフトに揺られていた最中のことだった。
突然空から、でかい右手が降りてきて、俺の目の前に来た。
「心苦しいけども、君の力を借りよう。拒否権を与えられないことを申し訳なく思う。これから君の頭にはたくさんの人が入り、そして君は狙われることだろう。その時まで、たくさんの人に助けてもらいなさい。君が生きる限り、彼らも味方だ」
そんなことを言って、でかい右手が原理不明ながら俺の胸の中に入った。
そしたらリフトが降り場前で急停止、体がリフトから降りた。
当然離れているから、降り場とリフトの間から滑り落ちた。
寸前で、近くにいたスタッフに手を掴まれ、ギリギリ落ちずに済んだ。
後から来た母にめちゃくちゃ心配したと半ば怒られていた。
そんな記憶だ。
右手を忘れていたのは、俺が小さかった故か、怖い想いをした故か。
どちらにしろ、俺はまた確かめなきゃいけない。
俺の中に右手がいる。
そいつに何もかもを聞きださないと。
頭の中の人間はなにか、右手はなんなのか、なんで俺の中に入ったのか。
全部聞かないと、確かめないと。




