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94-1

◇◆◇◆◇


日差し降り注ぐ窓辺でひとりの少女が涙を流しながら起き上がった。陽の光を乱反射するひと雫が頬を伝い、顎の先からひとつ、またひとつと布団の上にシミを作っていく


「なに?これ」


啜り上げる呼吸、少女は訳が分からず窓の外を見た。それは『何度も』見ている筈の景色であり、『夢の中』でも同様に見ていた景色だった


「アノス・アーロン」


『アノス・アーロン』───少女は幾たびも重ねて聞いた人物名を口にした。しかし、その名は少女の記憶では人物名などではなかった


◆◇◆◇◆


『コンコンコン』───ノックの音。数秒してから扉が物々しい音を立てて開いた


「これはこれは、リリ・アーロン様」


「おはようございますロベルト様」


「ティナ様は今戦地に出られております

 帰りは明日の朝でございますが」


「それは、残念です

 剣姫様は多忙なのですね」


「これは失礼、して御用は他にある様子」


アーバレスト家を訪れたリリは出迎えてくれたロベルトという執事に対して一礼をすると『黒と白のアーテルの花』を差し出した


「アノスのお墓参りを

 させて頂きたいと思いまして」


◆◇◆◇◆


『〜アノス・狩猟犬〜』───アーロン家からアーバレスト家への融和の印として贈られた犬。死因はティナ・アーバレストの魔力暴走によるモノの旨が墓石に綴られている


 リリは丁寧に墓石の前にそれを置き、祈りを捧げ始めた。祈りを終えると振り返り、ロベルトに一礼をした


「アーテル、英雄への献花とは

 アノスも浮かばれるでしょう」


「そう、ですね」


 リリは朝見た夢を思い出しつつ、早まる鼓動を抑えつけた。リリは今日で齢を12とする。それは『神託の儀』───最も女神様に近い場所、教会でスキルを授かる神聖な儀式を受ける年となったことを意味する


「見守っていて下さい」


「不遜、私も見守らせて頂きます」


「ありがとうございますロベルト様」


 リリ・アーロンは『授かることで経歴に関係なく経験や技術、知識を身に宿すことになる"それ"において【領域の剣に相応しいスキル】を望まれている存在だった

 

 激化する化け物との戦争に求められている戦いに役立つスキルをだ

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