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◆◇◆◇◆


 淡々と宿の受付で金銭を払い、手続きをすると萎んだ鞄を肘で受け取りつつ、宿を後にする


 受付が『何か』をアノスに手渡し耳打ちをした。アノスは張っていた肩を下げ、一礼をすると受け取った


「ありがとうございます」


「ありがとうございました」


「アノスさん!」


 宿の受付に挨拶をするとアノスはシルビアを一瞥し、宿の外へと向かった


「アノスさん!」


 宿の下にいるシルビアが陽の元にいるアノスに声を掛けた。怒号にも似た発声。立ち止まったアノスはそのまま返事をした


「シルビアさん、どうしたんですか?」


「リリアナは、置いていくんですか?」


「はい、シルビアさんは

 リリアナをお願いできますか?」


「何故!」


 宿の外に出たシルビアは声を荒げてアノスに問うた


「どうしてだと思いますか?」


「力不足、だからですか」


「違います」


 背中を向けていたアノスは振り返ると真っ直ぐシルビアを見て言った。その顔に悪意はなく、善意もなく───ただ『当然』と言った。当たり前のことを言っただけと言う雰囲気を出していた


「彼女は既にアーロンの庇護下にありません

 アーロンの給仕役が自らの

 力不足を憂いていなくなることに

 僕はどうこう思っていません」


 受付で受け取った鞄をアノスが背負った。時間はもうない。明日発つと言っていたがそれはリリアナを思っての行動だった


 しかし、当のリリアナがパーティから抜けたことでアノスは既に出発の意思を固めていた。もう止まる理由はどこにもない


 止められない


「じゃあ、何であんな冷たく」


「彼女はアーロンのものではなく

 ゴートンの手ではなくなった

 僕に付き従う意味もない」


「…」


「僕も彼女を雇う意味がもうないので」


 アノスは『銀色の装飾品』を首から掛けた。最早シルビアがいなくても個人で戦える証拠でもあった。これより『剣』としてひとりでも行動ができる証拠だった


「シルビアさんもお世話になりました」


「待って…」


「後はリリアナとこの町で───」


「待ってって」


「───冒険者として」


 シルビアの言葉を無視するようにアノスが続ける。シルビアもそれに負けじと言葉を紡ごうとするも止まることのないアノスの一方的な別れに"とうとう"


「待てって言ってんだよ!」


 シルビアが泣き出した


「…」


「さっきから一方的なんだよ。

 せめて、理由を教えろよ」


 元の口調が出るほどの激昂。感情が表に出る程の余裕がもうシルビアにはなかった。そんな様子にアノスが驚き、少し考え、口を開いた


「何故リリアナは

 僕の命令や承諾を

 得ようとしていたんですか?」


「…それはアノスさんが」


「僕が水銀の装飾品を手に入れたのは

 ついさっきです。宿の中

 それまではシルビア

 あなたがリーダーと言って差し支えなかった」


「…」


 力不足、それはリリアナだけではない。いやリリアナはそもそも矛としての役割を真っ当できるだけの実力はあった───荷物持ちとしても問題はなかった彼女。問題は心の在り方がアノスにとってあってはいけないモノだったのが原因だった


「リリアナはアーロンのものでない以上

 それを問うべきはシルビア

 あなただったのにです」


「…」


「そして」


 アノスは踵を返すとシルビアから視線を切った。立ち尽くすシルビアは遠ざかっていく背中に手を伸ばそうとして歪んだ視界に両手をついた


「待って…」


「お世話になりました。シルビア

 とても助かりました」


「待って…」


 力不足───シルビアの限界をアノスは気がついていた。『影』の一件。グランドグラットンでの力不足。仲間を繋ぎ止められない現在(いま)。無自覚のストレスは既に限界を迎えていた


「僕はひとりで行きます」


 遠ざかっていく背中を眺めるシルビアは宿屋から出てきた従業員に抱えられ『宿の陰』に担ぎ込まれる一瞬


「お願い」


 遠ざかっていく背中に絞り出す様に呟き、歪む陽炎が掛かる視界に遂には意識を手放した


◆◇◆◇◆


「アノス」


「お待たせしてすみません」


 バーテンとフラワーライト、レイアの御前に到着したアノスは片膝をついてフラワーライトにこうべを垂れた


「騎士団に所属しようともあろう者がそう

 頭をポンポン下げる者ではないぞ」


「いいではありませんかバーテン

 せっかくついて来てくださると

 言うのだから」


「して、リリアナ嬢とシルビア殿は何処に?」


 レイアが不思議そうに尋ねた


「2人にはこの町に残って貰う旨を伝えました」


「なんと、そうであったか」


「いいのか」


 その決断にバーテンが尋ねたが真っ直ぐと見つめ返して来たアノスは迷うことなく告げた


「十分です』


 夢の終わり───刻一刻と深刻さを増していく戦線に彼女達を連れていくにはもう苛烈さが増しすぎていた。アノスはこれより『修羅』を極める決意を固めた


「ハーサバル・グレイはどうなりましたか?」


「処刑が決まり

 後釜としてシャルとグラの両名を

 ハーサバルの領主として据えました」


「それは大丈夫なんですか?」


「対外的には圧政を敷いていたグレイを

 シャルが討ったことにしますので」


「…」


 僕はそれ以上余計なことを聞かないことにした


◇◆◇◆◇


『ハーサバル・グレイ』の『討伐』を確認


『天啓』

『グレイ』の討伐による

『星の夢』より

『変数値』を【デバッグ】に『付与』


『最適化』

【極】【デバッグ】

 アノス・アーロン


 これより先

『S級デバッグ』『進行不能バグ』への

『最終フェーズ』に『移行』


『内容』『S級バグ』

『化け物の領域』における

『非活性化』イベントの

『トリガー不在』に『対処』

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