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戦線に突如として現れた船団によって戦況の落ち着きを取り戻した。矛に対する十分な盾の登場はそれだけに心強い物だった
◆◇◆◇◆
「何をするのです」
「グレイ様!」
「大罪人ハーサバルグレイ
お前は反逆罪、国家転覆未遂
禁忌罪で拘束させて貰う」
「なんの話です!」
「惚けるな」
アノスは船に乗ると即座にハーサバル・グレイを拘束した。困惑する乗組員を他所に淡々と続けるアノス
「フラワーライト様が既に
お前を拘束する様に発信済みだ」
グレイを簀巻きにしたアノスは残りのハーサバル・グレイを観測するべく船室の外に出た
◆◇◆◇◆
空の明るさが徐々に鮮明になっていく中、事態の混乱がより現実味を増していく、最も人死が出ていないことは
残りは2体、それぞれ海の中、【デバッグ】を直接使うことはできないとなればアノスは補助に徹するべきだと判断した
「『キャリアー』」
リリアナ、シルビアを気に掛けつつも戦況の安定を最優先にフラワーライトへと鳩を飛ばした。現在の戦況において新型は役目を全うできないと判断し、旧型による前線の交代と安定を打診する内容を
「…」
アノスは水面を睨んだ
「出てきて頂けるのであれば
危害は加えません。拘束に留めます」
水面にて重なる2体のハーサバル・グレイを。視界ではなく【デバッグ】にて観測できている2体を睨んでいた
「は、はい」
水面に現れた鎧をアノスは船上に引き上げ、もう一体が現れるのを待った
「もう一体は?」
「グラ、この方は味方です」
「グラ?」
アノスが驚く中、船を叩いた浅波を起こした主は月鼠の真横に現れた。今現在暴れ散らかしている60級とは別個体、30級のグランドグラットンだった
「これはどう言う?」
「これはハーサバル・グレイ
私の兄です」
「…」
ハーサバル・グレイである筈の鎧。アノスは眼前の事象に己の目を疑った。ハーサバル・グレイである筈の鎧は自らを『兄』と呼称している奇妙な現状に口を開いた
「あなたはハーサバル・グレイではないと?」
「はい、私はハーサバル・『◾️◼︎◾️』」
「【デバッグ】」
◇◆◇◆◇
『Entity No◾️◾️◾️』
『ハーサバル・グレイ』のバグ個体
『Entity』の『名称』が『未登録』です
『星の夢』より『確認』
『◾️◼︎◾️』───『シャル』
『Bag Search』───『Same ID』
使用中のIDが重複しています
【Request】
『星の夢』より『確認』
『Entity No』───『登録』
【Request】───『変数』『登録』
『ハーサバル・シャル』を『登録』
───『参照』『問題ありません』
【デバッグ】終了
◇◆◇◆◇
「ハーサバル・シャル
グランドグラットンの暴走を
どうにかできますか?」
「で、できるか。分かりません」
「今は打つ手がありません
避難の協力という体でどうか」
「は、はい」
アノスはグランドグラットンをグラと呼ぶ個体が『これ』の制御を行えると一応の判断をしつつ、もしものために全体の避難を開始した
「…」
ハーサバル・シャルを背に乗せる『グラ』を前にアノスは言った
『あなたの処遇は追って決めますので
そのつもりで』
『…』
やりとりはなかった。しかしグランドグラットンは静かに瞬きをすると背中に乗せたハーサバル・シャルを共に60級へと向かっていった
「…さて」
アノスは糸を引き絞ると『猫の手』を散開させ始めた




