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「(あの閃光は一体?)」
水面にようやく顔を出したシャルは辺りを見回した。先の閃光を見たのは自分だけではない様で殆どのものが瞬時の昼を仰ぎ見ていた
惚ける一同をいの一番に現実へと引き戻したのは『魔力炉エンジン』の駆動音だった
皆が聞き慣れ、希望とする『鹵獲船』の『エンジン音』───『龍骨』が船団に合流し、救助を始めたが有効打の不在は依然として変わりがなかった
50級の致命となる一撃は魔法において上位、近接に至っては剣豪の中でも───振るけん一撃が風を鳴き止ませ、地を揺らす程の剣の使いでなければ悉くが分厚い肉の層に阻まれてしまう
詰みであった
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「ゴウマン様、撤退の準備はできてますが」
「…」
「引き時とは…」
「立て直しが分岐点だろ」
「決断を」
ゴウマンの戦い方は勝てる戦いに乗り、負けそうな戦いからは分岐を起点に離脱を始める。そうすれば勝てれば不問となりやすく、負けたとしても有耶無耶となる
「被害は?」
「多大ではあるものの浅く
立て直しにそれ程時間は掛からないかと」
「…(兄貴には悪いが)撤退するぞ」
「分かりました」
「では【幕引き】」
皆が救助などに忙しい合間にゴウマン一行撤退を完了。紙吹雪が吹き荒れ、皆の視界───ゴウマンに対して向けていた細かな意識からもゴウマンを覆い隠し、気がつけばゴウマンはいなくなっていた
光の粒子になっていく紙吹雪が儚く霧散して行き、結局のところ彼を気に留めるものなんて者は居なかった
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「沖に出る方法がない」
海に出る方法がない、辺りの散策をしていち早く戦線に復帰しなければとアノスは焦りのようなものを受けていることだろう
「(どうすればいい)」
発艦可能な船は多くが沖に出ており、残るは準備を要する船ばかりが残っていた。船の整備ができる人員はおらず。やがて
「(廃れた工場だ)」
今は遠き漁獲祭の名残へと辿り着いた




