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◆◇◆◇◆


 フラワーライトを庇い海へと落ちたシャルは水中で思うように動けずにいた。フルプレートが足枷に成り下がっていたのだ


「(呼吸は大丈夫…だけど)」


 金属の重みにより、刻一刻と海底に引き摺り込まれていくシャルは焦り、なんとかして海面に浮上しようと躍起になっていた


「(このままじゃ)」


 海底の陽の光を返すことのない暗闇を一瞥し、足のすくんだシャルはより一層もがいた。しかし、身体は沈み行く一方だった


「(…何かくる)」


 無防備を晒すシャルに対しモンスター達は妥当な行動を取り始めた。その一団は眼前に迫るシャルに構うことなく突っ込んだ


「(不味い、ハリナガシだ)」


◆◇◆◇◆


 フルプレートに響く無数の小さな衝撃


 ハリナガシ───細長い身体に鋭い鼻先、成魚になっても10cm行くか行かないかの回遊魚だが、非常に危険なことで知られている。その訳は遊泳時の平均速度、初速が120kmというとんでもない性質を持っている点だ


 内、外を水で満たされているシャルにとって、衝撃が直で襲った


 フルプレートはかろうじて勢いを押し殺すに至ったが、歪み方からして次はないことが窺える。ハリナガシが旋回を続ける『狩り』の行動に出た時シャルの目に飛び込んできたのはハリナガシの作った水流ではなく、程なくして水面を一瞬で染め上げた真っ白な閃光


 アノスの『白竜』による発光がハリナガシの"今にも"シャルを射殺さんとする流れを止めるに至った


 発光に目を奪われるハリナガシを他所にシャルは海面に向けて決死の思いで泳ぎ出した


◆◇◆◇◆


「…」


『ハーサバル・グレイがいる』


「…」


 しかし、そこにあるのは空間だけだった


 人の気配はなくただ確かにハーサバル・グレイの『何か』がそこにあることは間違いなかった


 俗に聞く魂などの類ではなく、ただそこに『何か』がある。多くの不可思議を体験したアノスは迷いなく


「【デバッグ】」


【デバッグ】を使う


◇◆◇◆◇


『ハーサバル・グレイ』

 消失処理が実行段階で

 強制終了しています


『星の夢』より『確認』

【制御魔法】の【Update】『Code』を『発行』

 この問題と『接触』して下さい


◆◇◆◇◆


「【Update】」


『ハーサバル・グレイ 該当4』


「(空間そのものに人の残滓が残るのか)」


 音もなく、感覚もなく、実感もなく、しられることもなく、ただ示される該当者数の減少だけがハーサバル・グレイの消失をアノスただひとりに伝えていた


「後3」


 アノスは本当に何も無くなった空間に背を向けると港に向かって歩き出し、直様走り出した


「よりにもよって」


 船が出る音がガラんとした街中に響いていた


◆◇◆◇◆


「もう少し、あと少しです」


「グレイ様?何かおっしゃられましたか?」


「何でもないです、さぁ救助を始めましょう」


 沖に向かって進む船の上、不敵に笑うグレイがいた

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