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◆◇◆◇◆


「グレイじゃないわね」


「私はし、シャル、ハーサバル・シャル

 グレイのい、妹に当たります」


 フルプレートから現れたのは女性だった。見た目は10代前後、身体の所々に鱗を持っている


「その見た目…」


「私は『泡沫の同法クラックドフェアリーズ』です」


「なんて事…」


 フラワーライトはフルプレートアーマーの中から現れたのがグレイなどではなく、その妹であり『半人』だったことに唖然とした


 それは数ある禁術の中でも目に見えた変化をもたらし、ひと目で魔術協会の定める法を違えたことの分かる代物だからだ


「(こんな『未来』見えなかった)」


 加えてフラワーライトのとある【スキル】がそれを予知できなかったことに顔を顰めていた


「どうか…兄、兄様を責めないで下さい」


「…」


「兄は…」


「理由はどうであれ、これは

 規則違反です。然るべき処分が降ることを

 覚悟して下さい


「ま、待って下さい」


 フラワーライトの取りつく島もない態度にシャルは驚き立ち上がると傍に鎮座していたフルプレートが地面にバラバラに飛んでいき、水を吐き出しま


 シャルはそんなことはお構いなしにフラワーライトの服の裾を掴んで懇願した


「私が!私達がいけないんです!」


「離して下さい」


「お願いです。お、願い、です」


「ちょっと!」


 呼吸を苦しそうにするシャル、それでも尚フラワーライトに温情を懇願し、意識を失った


『半人半魚』───割合は個人差あれど『半人』と付くものは二足歩行をし、人ならざる特徴を持った混ざり者のこと


 この場合、身体のいずれかに『魚』や『水生生物』の様な特徴を有する。『鰭、鱗、瞼、鰓、水掻き』など


◆◇◆◇◆


 フラワーライトはシャルを持ち上げて悲しい顔をした。シャルは鱗以外に、顎と首の境に『鰓』があったのだ


「何て惨い…」


 フラワーライトは理解した。フルプレートは言わば彼女の生命維持の品であり、地上で生身を晒せば分と生きられない身体をしていることを


「…」


 ひんやりとした身体に留まる体温を前に『責務』が両の手にのしかかった


『処分』───魔法、魔術によって生み出された『半人』は混沌の時代を境に『禁術』に分類され、その行使や活用を禁忌と定められた


 目の前、腕の中で衰弱していくそれは『人であって人ではない』このまま見殺しにしたところで何の問題にもならない。寧ろそれが王族であるフラワーライトにとっての最善でもあった


 しかし、王族として、民であれば救うことこそ王族の責務であることも同時に『視界に散乱し、映るフルプレート』がフラワーライトを責めたてていた


 迷った末に歩み寄ろうとする歩が物語っていた


『揺れる天秤と制限の境』───フラワーライトは立ち上がり、シャルにフルプレート装着させ始めた


 見た目からは感じられない軽量さに加え、緻密に刻まれた魔術式を見て、より一層の複雑さをもたらした


 フルプレートの装着を終えると泡と異音を鳴らす兜の隙間から静かな呼吸音が聞こえ始めた


「…『アノス・アーロン』へ」


 フラワーライトはキャリアーを飛ばしながら『ホッとした』自分を嫌悪した


「お父様ならどうしたのでしょう」


 飛んでいく鳩の背中を見送るフラワーライトは泣きそうな声でひとり呟いた


◆◇◆◇◆


「(面倒になりましたね)」


 事態の奇妙さにため息をついてしまった。ハーサバルでの嫌な予感の正体が力では解決できない事柄になるとは思いもしなかった


「(シルビアも近くにいるのでしょうか)」


【気配遮断】の大きな難点は『隊の統率が取れないこと』に尽きますね


「(漁獲祭の方も動きはなし)」


 このまま何もなければ良いのですが【スキル】がそんなことを認めないとばかりに反応している


 こちらにはレイア様、シルビア、フラワーライト様、冒険者と手札は潤沢にありますが


「(何でしょう、根本的な脅威を

 見落としている気がします)」


◇◆◇◆◇


【第六感】───結局のところ五感の延長のため、【天啓】や【未来視】が如き性能を有してはいない。ただ『何か』を感じるだけであり、その出所や要因の特定は個人の力量に左右される


 詰まるところ『塹壕のカナリア』である

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