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◇◆◇◆◇


【Suspend】


◆◇◆◇◆


「『アーテルレスト』」


「…ッ!ッ!?」


 グレイは悶えながらも何とか立ち上がるとアノスを視界に収めた。瞬間、青ざめ油の上に尻もちをついた


『???』───最早人といっていいのか怪しい魔力と風体のそれがアノスの代わりに立っていた


 身体から立ち昇る魔力により姿は見えず、闇によりシルエットばかりがグレイの視界に収まる。夜より暗い漆黒が夜の領域の内に居て尚もハッキリと視認できた


「こ、黒龍…!?」


 アノス?はグレイに歩みを進める。グレイは後退りをしようとするも抜けた腰に先の悶える程の蹴り技により思う様に四肢が動かせず思う様に距離を縮離せられずにいた


「ネ、【ネオ・サイクロプス】!」


 グレイ何とか振り絞った言葉で化け物の名を呼んだ。揺れる大地と遠くの巨人の人影がグレイとアノス?の間に割って入った


「『咆哮』」


「【サイクロプス!お願い!】」


 グレイが『ネオ・サイクロプス』に【お願い】をすると、ネオ・サイクロプスは再びの咆哮の後、アノス?目掛けて棍棒を振り抜いた


 直撃、耳をつんざいた衝撃音、昇る砂埃にグレイは安堵した。しかし、砂埃の内に生じた人影に身体を震わせた


「ど、ど、どういうことなのデス」


 砂埃の内からアノス?は一歩、また一歩とグレイに向けて歩き続けていた。ネオ・サイクロプスの棍棒には『還元』の影響を受けた名残であるアノス?大の大きさの穴が空いていた


「来るな!来るな!!来るな!!!

 来るな!!!!」


 半狂乱で千切った草や砂、土を投げつけるグレイ


「【ホーン・キャット】!

 【スライム】!」


【呼び出し】───【?】のスキルで呼びかけに応じたモンスターや化け物がアノス?に向けて果敢に挑むもその魔力に触れた瞬間、モンスターはその部位が消し飛び、化け物は『還元』され『エーテル』となった


「化け物が!人の皮を被った化け物が!」


【共感】───【?】の『自分が思ったこと』や『対象の思ったこと』を相互で共有することのできるスキル


 ネオ・サイクロプスは『グレイの忌避反応』に呼応して、勇猛果敢にアノス?に掴み掛かろうとした


 しかし、ネオ・サイクロプスの真っ赤な体皮───物理現象『斬・衝・穿』に圧倒的な耐性を持つ筈のそれが見るも無惨に引きちぎられた


 正確を記すならば『消し飛んだ』


 手の平から伸びる指。その付け根から指先だけを残して、跡形もなく『消し飛んだ』


 地面に転がるネオ・サイクロプスの指先はやがて光の粒子となって消えた


「ば、ば…」


◆◇◆◇◆


 ネオ・サイクロプス───D級の化け物。D級と区分されている一方、その厄介極まる性質から実質的にE級とされている


 巨人に劣るものの高い身長に加え厄介な性質───物理現象への圧倒的な耐性。類稀なる自己回復力。サイクロプスとは思えない俊敏性。計り知れない怪力


 戦況において人員を割かねばならない厄介モノとして名を連ねる


◆◇◆◇◆


 そんな厄介モノが両の手の指を失い、再生することすらできずに膝を折った。アノス?を前にしてネオ・サイクロプスは倒れ込みにより押し潰しをした


「っぐぇ…」


【共感】───臓物をひとつひとつ潰される感覚が腹から徐々に昇ってくる。膵臓、肝臓、横隔膜、肺、心臓、首。なまじ高い回復力が仇となり、死に行く過程をグレイは共有され思わず吐いた


「ふ、あ、嫌だ」


 光の粒子となって消えたネオ・サイクロプスからアノス?が再び姿を現すとグレイは必死になって立ち上がり、やぶれかぶれに走り出した


 何度も躓き、転んでも手を支えに立ち上がり、ひたすら遠くに逃げようとした


「聞いてない、あんな化け物がいるなんて

 聞いてな…」


◆◇◆◇◆


 グレイの必死な逃走は呆気なく終わった


『巻き戻し』による慢心か

 はたまた『経験不足』による『被弾』か


 定かではないものの

 確かなことがあるとするならば


『夜に消えた』


 グレイの全身を『アーテルレスト』が

 包み隠すと同時に街明かりから遠く離れた

 領域の端で『エーテル』へと『還った』


◇◆◇◆◇


『ハーサバル・グレイ』

『残り5』

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