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◆◇◆◇◆


 ハーサバル領域の中は不気味な程にいつも通りの様子を見せていた。ただひとりアノスだけがその理由を知っていた


【Suspend】───『存在消失』


 ハーサバル領域に居た人達は自分達が消えていたことにすら気づいていないだろう


「ではアノス殿、シルビア殿、リリアナ殿

 また」


 アノス達とフラワーライト達は別れるとそれぞれ別の目的地へと向かった。兎にも角にもハーサバル領域への到着を果たした


◆◇◆◇◆


 ところ変わってヤナマ領域では、避難活動が続いていた。未知の脅威が発生し、フォードの危険性があるとのことで『作品』なる存在はボカしての避難が続いていた。民の命を預かる者としてどの様な被害をもたらすのか未知数である以上備えなければならない


 領域内の住民は恐怖により通常では考えられない行動をとる。かと思いきや、至って冷静かつ迅速に領域からの避難に従っていた。その顔に安心と信頼、そして笑顔さえ浮かべて


 それもその筈、何と言っても『元白金冒険者』にして『国王陛下』で在らせられるシルバーブラッドが戦場にいるのだから


「順調、順調」


「悪い顔をするな…」


「陛下こそ」


「強敵との死闘こそ

 我が本望、血湧き肉が踊る」


「国民が聞いたら喜びそうな言葉ですね」


 民の全幅の信頼の象徴たるシルバーブラッドの参戦はやはり有利に働くばかりだった


 誰もその四肢が痩せているなどと気にする者は居らず、今でも最強無敵の『剣』として、民の信頼を一心に受けている。その姿にゴートンもまた安心感を受けていた


 かつて憧れていた存在が過度な偶像などではなく、等身大の憧れそのままなのだったから。筆嫌いという一部を除き


 むしろその方が良かったまである


「ヤナマの焃蛇がいないのが

 少し不安要素かな」


「童、一つ教えといてやろう」


 腕を組むシルバーブラッドは諭す様に言った


「1本でも欠ければ

 成り立たない戦場なんて物は

 負け戦も同然よ」


「そうですね」


「分かっておるだろうがな」


「ええ」


 大声で笑うシルバーブラッドはゴートンの背中を力強くも柔らかに叩くと一呼吸置いて続けた


「その1本が折れうる戦況は最悪

 故に想定し、備えねばなるまいぞ」


「はい」


 父親以上の父親、頼もし過ぎる背中の何と大きいことか、学ぶこと多き戦争前夜は


「む」


「これは」


 瞬間的な緊張により、烈火の如く凪いでいたシルバーブラッドの心の臓を、高鳴らせた


「来たか!」


「避難活動継続、攻略部隊発進」


◆◇◆◇◆


 迷宮を中心とした化け物陣営、アーバレスト同様の陣形をとった化け物の作戦を前にゴートンが切った手札は───


「魔法使い部隊、『儀式魔法』用意」


『『『

 研ぎ澄まされし理の円環

 不変を否定する志向の監獄


 躍動し、沈黙を刻みて

 終わりを告げる永遠の夢


 偏在する砂の支配者

 自らを律する精密の偶像


 今際に満ちる有限をここに

 』』』


 参本の光輝く針が天と地に広がり、それぞれが周り始める。天は時計回りに、地は反時計回りに


『儀式魔法』───多くの人員もしくは莫大な魔力に加え、魔法陣や神聖物、人間などの『指向性』を持って発動を可能とする魔法の総称


 迷宮から漏れ出てくる魔力の何とも禍々しいことか、フォードの前兆が地響きになって民の足を急かし始めた


「さぁ、開戦の狼煙を上げい」


「『『『『アイン・ソフ・アウル』』』」


◆◇◆◇◆


 化け物が密集するF級迷宮


 フォードの発生と同時に展開された儀式魔法

 D級を優に超える化け物が迷宮から漏れ出

 蹂躙せんとなだれ出し


『瞬きの間に消え失せた』


◆◇◆◇◆


「続け童!!!」


「シルバーブラッドに続け!!!」


◇◆◇◆◇


 第1・2・3波

 一掃直後


 シルバーブラッド

 ゴートン・アーロン指揮の元

『ナンバル山 頂上F級迷宮』の

 攻略作戦が幕を開けた

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