68
◆◇◆◇◆
「もう抵抗は終わりですかね?」
「くそ!」
俺が一体何をしたっていうんだ。リバレーで貴族の男に唆され大恥をかいた挙句、逃げた先でこんな始末
「これでまたひとつ我が野望に」
動け、動け動け動け、動け!俺の足、ホーン・キャットが何だ!一撃一殺
そうすれば、必ず
「おぁあ!!」
噛みつかれても動け!千切れても怯むな!振り続けろ倒せないわけじゃ
「無駄です。大人しく死んどけです」
まだいるのかよクソ…
「『ファイヤランス』」
「はぁあ!」
「御免」
「『クラウンスパイダー』」
「【ホーリー・ジャベリン】」
「!?」
◆◇◆◇◆
「アノス様、前方にて戦闘が」
「数は?」
「ホーン・キャット10数頭とそれを連れている
黒装束の中肉中背」
「10ですか」
「誰か襲われてますな」
「リバレーで面識のある戦斧使いが
襲われています」
「ゴウマン?何でこんなところに」
「戦闘準備、馬をレパスさんに任せて
襲撃に出るよ」
◆◇◆◇◆
ものの見事に壊滅した黒装束陣
「何者ですか」
「世直しの旅をしている者よ!」
「とその付き人」
「ただの冒険者です」
「荷物持ちです」
「…」
「何とまとまりの無い人達ですか」
5人それぞれが反応を示す。黒装束の男は苛立ちを露わにしつつ冷静に言った
「ですがこの数は好機
冒険者ども、苦しみたくなければ
大人しく…」
「…」
「!?」
男の言葉を待たずしてアノスが攻撃に転じた。鋭い『牙脚』からの『糸での絡み取り』───直撃を嫌った男は飛び上がり交わしたものの空中に張られていた糸に触れた瞬間、張っていた糸が男を簀巻きにして拘束を完了させた
「なにか話そうとしてませんでした?」
その姿にドン引くフラワーライト
「留置所で聞けばいいかと」
アノスは淡々と怪我人の処置に移っていた
「ふむ、しかし妙ですね」
「?」
アノスは指先から伝わる感触に違和感を感じ、レイアは瞬時に霧散した敵の気配に辺りを見回した
「皆さん、警戒を」
アノスはそう言って簀巻きを搾り上げた
「…」
「ふむ、これは変わり身の術ですかな?」
『身代わり◾️』───破砕音が静まり、アノスが拘束を解くと中からは赤黒い液体がこぼれ落ちるばかりで肝心の黒装束は影も形もなかった
「(確かに捉えたと思ったのに不思議だ)」
「そこ!」
「くそっ、何ですかこいつら
無礼にも程があります」
黒装束の男は肩で息をする中、レイアの蛇腹をまともに受けた。深々と突き刺さるそれを抜くことは失血を近々招くことになるだろう
「『◾️◾️』」
「!?」
気がつけば地面に落ちる蛇腹の剣先。驚き固まるレイアを他所にシルビア、リリアナ、フラワーライトが攻撃を仕掛けるも攻撃は掠ることはなかった
黒装束は状況が圧倒的な不利であると理解するや否や、先程までの威勢を撤回する様に捨て台詞を吐いて逃げていった
「くっ、覚えてやがれです」
『脱兎が如く』───土煙を上げる程の踏み込みによる逃げ足は異常な程早く皆が取り残された
◆◇◆◇◆
「初めは驚きましたが
大したことありませんでしたね」
「えぇ肩透かしを受けましたな…」
皆が黒装束が去った後、各々が戦闘後の処理に移った。レイアは蛇腹の剣先を見て顔を顰めていた
「…?」
「リリアナ?」
「これは…」
「!?何でこれがこんなところに」
リリアナとシルビアは液体の中から何かを手に入れた
◆◇◆◇◆
「ゴウマンさん大丈夫ですか?」
「…」
「喉を潰されているんですね。今回復を」
「ちげぇよ!!」
「?」
◆◇◆◇◆
疲労困憊の元負傷者を乗せて揺れるアノスの馬車の上でアノスはゴウマンと話をしていた
「アーロンの者が手を挙げてしまい
申し訳ありませんでした」
「やめろ、その件については忘れろ」
「ですが」
「頼むから」
「…分かりました」
いつぞやの決闘騒ぎの前日のこと、アノスは自分の身内が手をあげたことを謝罪したがゴウマンはこれを受け取らなかった
「その腕、イバシルさんが?」
「イバシル?いえこれは色々ありまして」
「…そうか」
ほんの少し見ない間の変化にゴウマンが戸惑いを隠さないでいた。続けてゴウマンはアノスの無くなっていた腕から首元に視線を動かすと『そこで』輝く『錫の装飾品』を見て視線を逸らした
『錫の装飾品』───鉄の装飾品、等級より2つ上の等級、ギルドから受ける全幅の信頼の証
「…」
「ゴウマンさんはハーサバルで
何をされていたんですか?」
「あ?いや」
ゴウマンは視線を泳がせると観念した様に口を開いた
「ハーサバルには、行けてねぇ」
「それはどうして」
「…」
「アノス様!」
「すみません」
「…」
身の毛もよだつ光景を思い出したゴウマンは身体が震えて止まらなくなった
◆◇◆◇◆
「…」
「これ、アレですよね」
「うん『バグ』だね」
皆を出迎えたのは天まで伸びる漆黒の『境目』───地形が丸ごと消えている様に見えるそれは、アーテルレストの作り出す夜異常の闇だった
「アノス、分かったろ
これがハーサバルに行けない理由だ」
震え続ける身体───『恐慌』を押し殺したゴウマンがアノスに行った
「あれに触ったら身動きが取れなくなって
引き摺り込まれる俺の仲間も…」
「分かりました」
「…なぁ」
「皆さん下がってください」
「?何を」
リリアナとシルビアが皆を下がらせた。漆黒の壁、遠目に見れば柱の様なそれに手を伸ばすアノス
「おい!アノス!やめろ」
「ゴウマン、見とけ」
「何言ってんだ!触ったら引き摺り込まれて」
「【デバッグ】【Optimize】」
◇◆◇◆◇
『【Optimize】』を確認
『バグ』への対処に移行
『報告』
【バグ】による『存在消失』を
【デバッグ】により『解決』しました
『魔法陣』による『拡散』を『推奨』
『魔法陣』『展開』
… … …『完了』
◆◇◆◇◆
アノスがかがみ込むと周りに展開される魔法陣に魔力が順次流れ込んでいき、明滅を繰り返した後、異常な速さで広がりを始める
周囲の魔力がアノスの魔法陣により捌けていくと誰の目にも見える大きさの魔力の粒子が周囲に浮かび始め、幻想的な景色を作り出す
「【Execute】」
アノスが呟くと魔法陣が光の柱を天高く吐き出し、一瞬にして漆黒の柱を消し去り、ハーサバル領域が姿を現した
「???」
「ら、ゴウマンさん…その人達誰ですか!?」
「!エノコ…ロ…え?」
皆が気がつけば柱に飲み込まれていたであろう2人を凝視していた。件の2人はポカンとした様子の姿でそこに居た
一息ついたアノスは立ち上がると手のひらを眺め続け、リリアナが急いで駆け寄ってきた
「アノス様、お加減は?」
「うん、大丈夫。問題は」
『◾️』───消えずに残っている光すら反射しない、通すことのない黒い塊がアノスの手の中で黒い粒子を放っていた
◇◆◇◆◇
『ハーサバル領域』の『バグ』を『解決』
『バグ』を『◾️◾️』
『Suspend』───
『指定空間』に『存在消失』を『発生可能』
『存在消失』───『星の夢』から『隔離』することにより『定命の世界』での干渉が実質不可能になる




