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◆◇◆◇◆


 さてさて『作品』とやらがどれほどのものか、早くに知ることができるのは光明だ。戦況を大きく変えられるかも知れないな


『保険』も残ってるし、順調だな


 …これは、これは


「ゴートン殿、何故私を

 大罪人としなかったんだ」


「何のことでしょうか」


 ゴートンがヤナマとの取引と会合を終え『ホクホク』気分で帰路に着こうとした背中に問いを投げかけるものがいた


 その者は咳き込み、四肢は痩せ細り、それでもなお身を焦がさんと内に闘志を燃やす御仁だった


「国王陛下」


「何故だ」


◆◇◆◇◆


 ゴートンはしらばっくれようとしたが、シルバーブラッドの怒り狂わんとする気迫を押し殺している姿から『哀れみ』を向けられているのではないかという、誤解を読み解いたことで弁明をするべく振り返った


「国王陛下、私は決して哀れみで

 貴方様を大罪人としなかった

 訳ではございません」


「では何故」


「あの中で」


 ゴートンは言葉を被せる様に一言添えると


「唯一

『迷宮を育てた末に壊していた』のは

 貴方様だけでした」


「…」


「迷宮の褒章、報酬というべきでしょうか?」


 ゴートンはリバレーの報告書、並びにアノス・アーロンの獲得した『報酬』に目を通した上で理解したことがあった


「国王陛下は聡明ですね

 迷宮が攻略された暁に付与される

『報酬』の法則に自力で到達された」


「そこまで調べたか」


「えぇ、私の剣は

 実直で、非常に優秀ですから」


『賢者の石』───アノスが手にした紛うことなき本物。シルバーブラッドが欲してやまない物品がそれだった


「苦節20の年月の始まり

 私が欲してやまないものが

 幻ではないかと思っていた所に舞い込んできた

 希望だった」


「えぇ、ですが貴方様は国王だ

 民を巻き込みかねない成長を

 果たす前に迷宮を討ち

 落胆を続けたことでしょう」


「アーロンの若き領主よ、分かるか

 この苦しみ、この怒りが」


 分からないとは言い難かった。【神剣使い】とは剣の軌跡からそのものの辿った挫折や苦悩が副次的に分かる代物だった。断片的ながら最も新しい国王の記憶は三度と触れない剣と『たった一振りで地面を下す』そんな記憶だった


 言い難かった。しかし、ゴートンは言葉を飲み下すと突き放す言葉を口にした


「分かりません」


 神剣使い【極】であるゴートンにとってそれらは挫折たり得ない。それというのも、自分のもの、他人のものが迎える挫折のひとつ先の実力を持てる、それは定められた道筋であり、確約されている【スキル】


 並び立つものが居るわけがなく、衰弱の一途を辿る国王の苦悩など分かるにはあまりにその足取りは軽い


『今』───ゴートンにとってその強さは、踏み越えるべく存在する段差、その一つでしかなかった


「ならば…」


「なので」


 故に歩み寄る努力、段差を降りる努力をゴートンがしないわけがなかった。登ることの困難さを知るゴートンにとって横道に逸れた上で他人の努力を間近で見続けることなど兄の後ろ姿で学んだ昔取った杵柄、その者が望む結果を導き出すのは造作もなかった


 ゴートンは無作法にも国王に向かって手を差し出すと不敵に笑った上で悪魔的な提案を申し出た


「ヤナマを滅しませんか?」


「!!?貴様」


 国王が剣に手をかけた瞬間にはゴートンは柄を手で押さえ抜くことが出来ないようにしていた


「滅すと言っても今すぐに

 しかも物理的にではございません

 誤解なきよう」


「…ッ」


◆◇◆◇◆


 剣の理を読み解き、己が力とする神剣使いの【最尊】に近き者───最早剣を抜くことさえ許されぬというのか


「(勝ちの目は細いか)」


「滅すと言っても今すぐに

 しかも物理的にではございません

 誤解なきよう」


「…ッ」


 一度振れば切り伏せることは容易いというのに、神剣使いとてその宿主であるゴートン・アーロンは剣が本領ではない。と侮ってはいたのは認める。しかし、それができぬ盤面に引き摺り込まれるとは


 鞘に納まっているようで常に抜き身、刺すも刺さぬも本人次第ということか


「聞こう、だが民を守り、繁栄を約束するのは

 王族の使命であり、形ある誇りなのだ」


「重々承知しております

 国王陛下を縛り付けるシガラミの硬さは」


(わっぱ)

 貴様は何をしようとしている?」


「さて、協力していただけるのであれば

 作戦の全容を明らかとしますが

 いかがですか?」


「…」


 決めかねる、ここで手を取れば望む者が手に入る。しかし、それは同時に国王という身でありながら私利私欲で動くことは


「私は国王が健在なら

 押し負けてたかもしれませんね」


「…あまり老骨を煽るな」


「いえいえ、剣であったにも関わらず

 筆にならざるを得なくなった

 シルバーブラッド様を煽るだなんて…とても」


◆◇◆◇◆


 瞬間抜き放たれた剣撃の凄まじさたるや


 放たれたはずの剣撃は建物、人、草木に至るまでその攻撃に気がつくことなく、ただ雲だけが歪むことで辛うじて剣の軌跡を確認できる現象だった


「やはり、衰えというのは恐ろしいな

 今や標的ひとりにすら的を絞れんとは」


「…」


 ゴートンは『致命回避』が砕けていないことを知りつつも不敵に笑った


 これ見よがしに抜いた剣は砕かれ、軌跡は見えていたのにも関わらず、それに反応した上で的確に薙ぎ払われ【スキル】による有利込みで劣勢に立たされたこの状況。衰えて、尚戦神


「この老骨をどう使おうと?」


 シルバーブラッドの続く言葉が軍門に加わったことを意味した


「ありがとうございます国王陛下

 いえ、白金等級冒険者シルバーブラッド様」


「今は金等級だ、童」


◇◆◇◆◇


『元伝説の冒険者』───シルバーブラッドがゴートン・アーロン率いる『作品』を意図的に呼び出す作戦に参加することとなった

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