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◆◇◆◇◆


「『キャリアー』」


 レイアの一団と合流を果たしたアノスはゴートンに急ぎヤナマへの援軍、もしくは迷宮の探索をするように文を飛ばした


「負担を強いてしまいましたね」


「大事になる前に確認できるなら

 安いものですが」


 アノスは荷馬車ではなく、リリアナに背中をさすられているシルビアを見て失敗したなと反省をした


「仲間への負担が大きかったみたいです」


「でしたら」


 レイアとアノスが話している所に顔を覗かせてきた御仁がいた。純白のドレスと王冠、口元を隠した状態で、馬車の中から声を2人に掛けた


「そこの方を私の馬車に」


「殿下、よろしいのですか?」


「えぇ、レイア様が

 ここまで親しげに話した方の

 従者の方々なればこそ、それに」


「…」


 アノスは頭を下げ、片膝をつき視線を地面に向けていた


「レイア様のご友人であれば

 私の友人でもあります

 放ってはおけません」


◆◇◆◇◆


「レイア様のご友人であれば

 私の友人でもあります

 放ってはおけません」


「恐れ入ります」


「面を上げても構いません」


 上目で確認する───面をあげていいと言われても真っ直ぐ見ることを許されたわけではない、視界に収めるのも必要最低限にするための作法で声の主を確認する


 ジルバレー領域、第一王位継承権保有者のフラワーライト王女その人だった。神託の儀で【聖女】を受けた第二皇女。各地に赴き立ち所にその土地での争い事や問題ごとを解決するというその人だった


◆◇◆◇◆


 アノス様がシルビアを焃蛇の君に任せ、私の扱う馬車に乗り込み出発を待っていた。何故あの馬車に乗らないのか気になった


「あちらに乗らなくてよかったのですか?」


 アノス様は頷き、続けた


「呼ばれたのはシルビアさんだけだからね

 僕が乗るのは違うよ」


「そういうものなんですか?」


「同席を許可するとは言われてないからね

 あそこはシルビアさんだけを

 乗せるのが正解だよ」


「…」


 本当にそれが正解なのか私には分かりませんがひとつ確かなのは噂で聞く焃蛇の君と実物は印象がまるっきり違ったという点だ


「アノス様」


「ん?」


「あのレイアっていう剣士」


「うん」


「全く赤くないですね」


「僕も同じこと思ったよ」


◆◇◆◇◆


「ただの軽い乗り物酔いですね」


「あれほど揺れ動けば酔いもしましょう」


「【安らぎを】」


【状態回復】───世にも珍しい『魔力回復』を行える【聖女】の『内包スキル』。副次効果として『状態異常・精神』を徐々に回復させることができる


「それにしても聞いていた印象とは

 全く違いましたね」


「といいますと?」


「迷宮殺し、龍殺しって聞いた時には

 どれほど屈強な方かと思いましたら

 幼さ残る可愛らしい方でしたので」


(おのこ)が聞いたら卒倒しそうな

 ものいいですね」


◆◇◆◇◆


「ハーサバルまでどれほどでしょうか」


「1ヶ月だね」


「長い旅になりそうですね」


「うん」


◆◇◆◇◆


「お集まり頂き感謝します

 ジルバレー領の…」


 会合の開催の挨拶を聞いていたゴートンは『かの剣豪』シルバーブラッドの衰弱具合を前に


「(凄いな)」


 未だ燃え盛る闘志、肉体の力強さに驚きを隠せずにいた


「(俺もあんな風に歳を取りたかったな)」


『キャリアー』───そんな中、ジルバレーの結界をすり抜け飛んできた一羽の鳩に皆が釘付けになった


 その鳩がアーロン領、現当主であるゴートンの手元に降り立ったことで会場の皆が白い目を向け始めた。ただひとりシルバーブラッド国王を除いて


「(頭の固い奴らだ)」


 ゴートンは鳩をひと撫でした───鳩は解けるように一通の便箋へと姿を変えた


「アーロン領当主、ゴートン・アーロン

 余程急を要する事項なのであろう?」


「アーバレスト領との婚姻の件か?」


「開示したまえ、貴様にはその義務がある」


「(ふむ、これは)」


 野次には耳を傾けることなくゴートンはアノスから届いた便箋に目を通し、静かに微笑んだ


「ゴートン・アーロン殿

 差し支えなければ内容の公表を」


 激しくなる野次を一喝したシルバーブラッドにゴートンは便箋を丁寧に折りたたむと立ち上がり話を始めた


「先ずは無礼への寛大な配慮

 ありがとうございます」


「っ」


 ゴートンは野次を飛ばしていた輩に皮肉を込めつつシルバーブラッドに感謝を述べた


「先程私の兄であり、剣である

 アノス・アーロンから

 今回の大侵攻に関する報告書が届きました」


「…」


「現在、ハーサバルに向けての遠征を

 進めていることは皆さんご存知かと思います

 ですが規模が規模なだけに

 どの領域がどれほどの規模で

 侵攻を受けているか定かではありません」


 そんな演説じみた内容を話す最中、2通目が届き中身を一瞥するとヤナマ領当主を見つめ不敵な笑みを浮かべた


 ヤナマ領当主のヨナはその様子に蛇に睨まれた蛙が如く、その身を震わせ視線を泳がせた


「しかし、これの発生原因が迷宮

 であることは皆さまにお伝えしています

 ですがこれを放置してしまった場合

 何が起こるかはアーバレストで

 経験済みと思います」


 アーバレスト現当主、バレリア・アーバレストが深く頷いた


「し、しかし、当問題は黒龍討伐にて

 解決したのではないのか!」


「そ、そうだそうだ」


 ゴートンはその言葉を待ってましたとばかりに手を上げた。瞬間兵士が会合中の部屋へと雪崩れ込むと野次を飛ばしていた領域主を含む面々を次々に捕まえ始めた


「何を!?」


「離せ!!」


「無礼者めが!」


「無礼なのはお前らだよ

 国賊にして、人類の敵めが」


『2通目』───ゴートンが独自に進めていた迷宮管理に関する報告書、アーロンの奉仕人総出での調べが丁度届いたのだ


「大罪人、私腹を肥やすために

 迷宮を意図して放置し

 今回の大侵攻に際して領域を危険に晒した」


「…」


「これは明らかな人類に対する反逆行為だ」


「ち、ちがう!」


「あれは、そう!見落としていたんだ」


「神様…」


「(はぁ、馬鹿だな

 欲をかいて単純な方法をとるからだ

 管理下にない迷宮は違法だし

 見落としていたのなら尚更ダメだろ)」


◆◇◆◇◆


「さて、潔白の皆さまばかりになった辺りで

 ひとつ、新しい情報を」


 ガランとなった空席ばかりの目立つ会合の場でゴートンは『1通目』───アノスが焃蛇より聞いた内容を記した報告書、その内容はハーサバル領の侵攻原因となった迷宮の位置、それを放置するように命じたヨナの側近の名前が記されていた物を手に


「今回の大侵攻、これを放置した場合

 侵攻のみならずF級を超える化け物が

 迷宮より出現する可能性があります」


 ゴートンは階段を一歩、また一歩と降りていくと一番下まで降りきりヤナマ領当主を見上げて続けた


「ヨナ・ヤナマ、何故あなたを残したか

 分かりますね?」


「ひっ」


「あなたの迷宮が最も肥え太っておいでだ」


『地図』───地図と呼ぶには俯瞰し過ぎており、もはや風景画のそれはヤナマをぐるりと囲む山々のひとつ、山頂に記された迷宮の位置だった

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