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◆◇◆◇◆


「あのバカ娘」


 日が経つ中、ところ変わってジルバレー領域内、会合準備中の大応接室の準備に際して起こる僅かな音にさえ、かき消される程抑え込んだ怒りを口にする男がいた


 ジルバレー領主にして、国王を名乗ることを良しとされている人物、ジルバレー・シルバーブラッドである


 心底呆れた様子を見せているのには理由がある。彼の娘であるジルバレー・フラワーライト───お転婆娘が理由である


 齢20───成人を8超えても落ち着くことなく、東奔西走。何かと問題に首を突っ込んでは解決をする


「どうして、こんなことになったのだ」


 シルバーの悩みのタネは尽きないのである。解決───これが正規の手順を踏んでのことであれば良かったのだが、大抵が力任せの解決。知恵の輪を腕力で引きちぎる愚行とあってその後始末は尽きない


 何より問題なのが彼女の【聖女】───『回復』や『支援』においてこれの右に出るものがないことに加え【天啓】と呼ばれる『未来予知』じみた『内包スキル』を持ついわば『複数スキル持ち』に近い存在である


 とある日に突然『旅に出ます』と置き手紙を残して行方をくらませ、ヤナマの大侵攻を止めたと言う


 噂によれば現在はアーバレスト領に向かっているのだとか、どうか粗相だけはしてくれるなと願うばかりである


◆◇◆◇◆


「アーバレストか」


 あの家のティナという娘も剣にしては収まる先の鞘を持たず触れるものを皆傷つける諸刃と聞いたが今ではその悪評も聞かないときた


 姉の者がついていて漸く剣となっていた娘をどうやって嗜めたのか、アーバレスト・ブランドーに聞いてみるのも良いかもしれん


「次は」


 アーロンか。前当主が亡くなって久しい領域だ。『天井天蓋』───アーロンの中でも剣と筆に秀でた逸材だったに惜しいこと


 席を継いだとされるイバシルも他と比べ優秀ではあったが『天井天蓋』と比べては酷な差がある


「…そして、神託の儀による選別か」


『選別者』致し方ない犠牲と言えよう。隠居するもよし、実力をつけるもよし、こればかりはどうしようもない。長男、実子であろうと『当主』の一声でどうとでもなってしまう


 そんなアーロンの代替わりは忙しなく、次期当主であるゴートン・アーロンの手腕はいかほどか、今後に期待するばかりである


「さて、リバレー領は」


 リバレー、ギルドなる自警団の様な組織を構築に力を注いでいる領域。他領域への交通網を支えてくれている───剣の町だったな


 昨今ではモンスターの活発化によりその需要は高まる一方、質の低い輩が増えてきたときく


「全く嘆かわしい」


 自らが戦場に赴き、存分に剣を振るいたい。だというのに己が拳に力は入ることはなく、日に日に痩せ細る肢体を恨めしく睨むことしか叶わないとは情けない


◆◇◆◇◆


 同時刻、アーロン領から出発した馬車の中でアノスはふと『胸騒ぎ』を覚えていた。『アイツ』の言葉を反芻するたびに頭の中で引っ掛かりが増えていく、そして

 

「ヤナマ…」


 吟遊詩人の歌の通りなら大侵攻を追い返すのに成功したと見れるが、それでも名前が上がったことに遅れながら気がついた


「(何か)」


 アノスの脳裏に『大侵攻』の解決までの経過が『並べられて』いくと全身に走る悪寒と共に取り返しのつかない勘違いの可能性に行き着いた───歌の中では確かに大侵攻で発生した化け物共への対処は終わったと言っていた


 ではそれが発生する原因となった『迷宮』の存在は?それについて、ついぞ語られることはなかったことを考慮した時、フォードの再発が予想される結果に行き着いた


「だとしたら…」


「アノス様?」


「リリアナ、少し飛ばして」


「分かりました」


「アノスさんどうしたんです?」


 リリアナは手綱を弾くと馬を急ぎ足にした。アノスは『キャリアー』でゴートンにこのことを伝えたが同乗していたシルビアはその事態に置いてけぼりを受けていた


「アノスさん?一体何を」


「ひとつ気掛かりなことが」


 大丈夫だ、フォードを領域内の戦力で相殺できるなら後は確証が欲しい。幸いヤナマ出身者が近場にいる


◆◇◆◇◆


「ふむ」


「レイアさんどうされましたか?」


「これはこれは…レパス殿馬車を暫し

 止めて頂けますか?」


「?」


 手綱が弾かれる音がした後ゆっくりと停止した馬車の戸を開けるとレイアは顔を出した


「レイア様?」


「馬車の中で待たれよ」


「はい」


 レイアは遠方から凄まじい速さで移動する何かの気配を感じると扉を開け、屋根の上に登ると気配のする先を眺めた


「やや」


「賊の類ですか?不遜ながら私が」


「レパス殿は手綱を引き続き頼みます

 それに」


 遠方で上がる土煙、それが扱う手綱捌きは賊とするにはあまりに気品の溢れるものだった。それ以上にレイアはもうひとつ、見知った気配があることに気がつき


 腰で抜き放たんとしていた蛇腹剣から手を離し、屋根から飛び降りた


「噂をすればなんとやら」


 それと同時に道の脇で止まりしな、立ち上がった猛進していた馬が勢いを殺しながら追い越し、その後方───荷車の中には馬車の勢いに酔い潰れたシルビアと


「レイアさん」


「アノス殿」


 どこか落ち着きを欠いていたアノスの姿があった

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