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◆◇◆◇◆


「『エアロスラスト』『ファイアボール』」


『複合魔法』───『ヴァーミリオンサイス』


 不可視の斬撃に追従する様に飛翔する火球、空中で混ざり合い上位魔法へと強化を果たす


 轟々と燃え盛る三日月の形をした焔の刃が飛翔し、標的に触れると同時にしなり、巻きつき勢いよく燃え、爆ぜる魔法


 生物に対しての威力は申し分なく、本来必殺に近いこの技でさえ、黒龍には効き目が薄い様子を見せていた


「『キャリアー』」


 徐々に詰められる戦況が圧倒的不利を突きつけてくる現状にアノスは焦りを生じさせていた


「…」


『出力低下』───エレメンタル鉱石が安定期に入り、魔力への『恩恵』が受けられなくなってくるとアノスの残存魔力では黒龍にかすり傷を与えるのが関の山となった


「2個目を…」


 鞄の中にあるもう一つの『装飾品』を使おうか使わまいか迷うアノス


◆◇◆◇◆


「(倒し切れる気がしない)」


 止む気配のない黒龍の息吹はなるべく地上に打たせない様に高所を、回避に余裕を持たせるために距離を取ってはいるものの、安全優先とした場合、当然とも言うべき問題が発生した


『圧倒的火力不足』───エレメンタル鉱石の補助のなくなった攻撃では最早傷すらつけるのが難しい


 物理的干渉は悉くが弾かれる。初手の槍を含め警戒すらされていない


 手数が欲しい、その一心で脳裏に過ったのは『憎いアイツ』だった。今日まで問題の根幹にいた奴の遺品を取り出し、唱えた


「【エレメント】」


◇◆◇◆◇


 元来、エレメンタル鉱石の内包する『混合魔力』を『制御』する為の『呪文』をアノスは化け物由来の物品に使用した


 B級以上の化け物が撃破されると同時に残る物品は本来、化け物本体同様に光の粒子となって消えるものではあるが消えないと言うことはその物品には『存在を維持する程度の魔力』を有していることになる


◆◇◆◇◆


「【エレメント】『クラウンスパイダー』」


 手の内で糸が爆ぜるように解けると僕の身体を包み込んだ。視界を奪われる愚策かに思えたそれは『クラウンスパイダー同様』飛んできた攻撃───黒龍の息吹を『糸が切れた』という結果にて回避を可能にした


「…『リリース』!」


 僕は鞄の中身を全て吐き出す『呪文』を唱える。空中でカバンの中身がばら撒かれた。今まで集めてきた武器や防具が散乱する中『エレメンタル鉱石の装飾品』を糸で引っ張り身につける


「【エレメント】」


 何を血迷ったことを思ってたんだか、今できることを全力で遂行する。それは『剣』だからじゃない


「もう、後悔はしたくないから…」


 溢れ出る魔力を糸の隅々まで行き渡らせる。愚策?不合理?無鉄砲?僕自身を貶める言葉が心から無限に出てくる


 それでもいい


「今できなきゃ!」


 先なんてない


「【魔法陣展開】!『クラウンスパイダー』!」


 手札を小出しにしてちゃ負ける。そうなればアーバレストは陥落する。そんなことはあっちゃいけない


「…」


 数分で突破口をこじ開ける


◇◆◇◆◇


 空を覆い尽くす魔法陣から地面に降り立つのは『蜘蛛の糸』───アーバレストから離れた位置でより多くみられたそれを目撃したのは『避難中』の人々だった


 倒れ伏したアレやソレが立ち上がり、アーバレストに向けて歩き出したその姿は、一時は絶望的に見えたものの敵意がないことを悟るや否や


 皆がある種の神々しさに動く死体に頭を垂れた。うちの何人かはこれに魅入られ『死霊術』の研究を始めることとなる


◆◇◆◇◆


「…」


 援軍が届くまでの55秒、アノスは静かに『オリジナル』の糸を引き絞り、空中で糸を足場に眼前の敵を見据えた


「ふぅ…」


 町の広場に刺さった無数の武器と散乱する防具、惜しみなく練り続けられる魔力を前に黒龍は態度を変えることなくアノスに向けて『黒龍の息吹』を構えた


「…ッ」


 黒龍が放とうとした息吹は首に巻きつき千切れんばかりに張り詰めた『蜘蛛の糸』により青空に向けて放たれた


『身体強制操作』───クラウンスパイダーの十八番をアノスは真似をした。しかし、オリジナルの技を人間であるアノスが再現したならその歪みが身体に現れる。両腕を締め付ける糸の食い込みはまさにソレだった


 アノスは垂れていく鮮血を眺めながら黒龍の足元まで蜘蛛の糸を足場に歩き、ふと弛みを感じると黒龍の首を締め上げていた糸が消えているのを感じた


「【エレメント】『ボーパルスライム』」


 アノスは新たに得られた情報を元に刻々と詰めに向けた楔を打ち始めた

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