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◆◇◆◇◆


「どうしてこうなった!」


 アーバレスト領主は頭を掻きむしり、ことの深刻さに打ちひしがれていた。F級の化け物が領地を占領し、外の状況を知ることは愚か逃げることすら叶わない状況に少なくとも3日は晒されていた


 城内にいる奉仕人もその殆どが錯乱した。逃げ出した先で外にいる化け物に食べられた者もいれば、どうにか冷静さを保とうとする者や諦め物思いに耽る者、怯えた者ばかりが残っていた


「クソ、ギルドの言う通りにしていれば」


 後悔先に立たず───アーバレスト領主のやらかしは迷宮の敢えての放置にあった


◆◇◆◇◆


『…』


 黒龍はひたすらに地面を押さえていた。古龍アーテルレストは幾たびの戦場に出没しては戦況を混沌のうちに落とし屍肉をも食い尽くしたF級と恐れられる災害級のモンスター


 領域への侵入に躊躇いを持たず威風堂々たるその様は『神域』にも匹敵する知名度を誇る。そんな龍が『死に体である』と誰が思うだろうか


『ここまでか』


 黒龍は眼前に現れた『人影』を前にその表を挙げると静かに睨みを効かせた


『されど我が肉体を好きにはさせんぞ

 旧神の使徒よ』


「…」


 人影は黒龍の言葉を意に介す素振りなく剣を抜くと黒龍と交戦を開始した


◆◇◆◇◆


『アーバレストの家紋入りの指輪』───ティナが自ら破棄した指輪をアノスが修復したもの、アンブラ・ディアボリカとの戦闘により『封印』が『昏倒』の効果により強制解除された結果の産物


 半月の間に修復した後、返す機会を伺うも、それが叶うことはなかった。それが今アノスの指に収まっていることは領域間での問題になる───『特権』を象徴する『家紋入りの指輪』は他人がつけることは基本的にあり得ない


 領域主より下賜されたものを他人がつけていいわけがなく、これは重罪に当たる。アノスはそれを知っていながらも指に収めた。そのわけは『アーバレスト家』としてその場を治めるためだった


「…」


 最初こそは皆が不安を見せていたものの、未だ姿を見せない領主本人より現場で動くアノスに領民は次々と指示に従い避難を始めた


 何も死にたいがために領域に残っているわけではない領民にとって少なくとも今は信頼できるアノスは『縋れるモノ』だった


◆◇◆◇◆


「混乱はこれで落ち着いたが」


「問題はアレよね」


「だな」


 ロンとラントは城を見やる。姿は見えずとも黒龍の情報により警戒せざるを得ない状況は非常に逼迫しており油断を許さなかった


 未だ動きを見せない不気味さ極まる黒龍、領域主の安否も定かではない状況に手を出すに出せず、避難誘導に注力していた


 しかし、突如空気を揺らす方向が領域内、城下町の全体を大きく揺らした


「何だ!?」


「何?」


 けたたましい咆哮に続き、地面を不規則に揺らす振動、金属の衝突音、やがての静寂───分にも満たない一連の騒音に範囲内の誰もが心臓を押さえ死を覚悟した


「何だったんだ?」


「ロン、撤退の準備をしましょう」


「…だな」


 戻ってきたc部隊の面々を連れロン達は撤退を開始し、不気味に木霊する咆哮の名残が城下町を跋扈していた


◆◇◆◇◆


『…』


 黒龍アーテルレストは、自身の首の断面を眺めていた。地に落ち手の出せない状況───人類の脅威、災害級のモンスターがたったひとりの人間に首を両断され己の首を見上げることしかできないこの状況を誰が予想できただろう


『よもや、これ程に力を戻しておったとは』


 転がる頭蓋が見上げる先で黒龍の身体がひとりでに動き始めるとアーテルレストは驚きを口にした


『歯痒いな、見ているしかできぬと言うのは』


 黒龍が『◾️◾️』を始めると地面に転がるモノとは別の頭が生えると人影にこうべを垂れた


 最早別モノとなった黒龍をアーテルレストは眺めることしかできなかった

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