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◇◆◇◆◇


『閲覧』しますか?


「いいえ」


◇◆◇◆◇


「…」


 一度冷静になろう、最近【デバッグ】に頼り切っている節がある───【スキル】はあくまで『最終手段』だ。過信していたら取り返しがつかなくなる


「どうした?アノス、具合でも悪いのか?」


「いえ、大丈夫です…」


 父上に不甲斐ない姿を見せてしまった


「アノス、お待た…お前」


 ティナの声が聞こえたが、返事をする元気を捻出するにはまだどうしても時間が掛かる


◆◇◆◇◆


 前回の昇格の時に問題が起こったこと、銅等級に上がるに当たってパーティーでの参加が必要とあってアノスと合流しようとしたら『あの男』がいた


 一切悪びれる様子なく現れ、薄ら笑いを浮かべている糞野郎が


 何故この男がここにいる?いや、それよりアノスが苦しんでいることが問題だ。私は一瞬の気の迷いを断ち切り剣へと手を伸ばした。アノスを守ることが最優先だったからだ


「アノスから離れなさい、イバシル」


「どうしてですか?愛しの我が子に

 会いに来てはいけないと?」


「アノスを追放しておきながら

 何ですかその言い草は」


 氷相を抜き放てば必殺の間合い、イバシルの喉元に狙いを定めるが放つことはできないだろう。傷つけることは叶わない、今にも斬りかかってしまいたいが『グッ』と堪える


 それは『領主かも知れない人物』に手を上げるのは正当な理由がなければ人類に対する叛逆行為とされ、重罪を科されるからだ。証拠不十分なら罪人になってしまうのは私の方だ


 リリアナは明日帰ってくる、それまでは『こいつ』に手出しができない。だが何より腹立たしいのはこいつの『軽薄』さとそれが滲み出る薄ら笑いだ


「何故ここにいるんですか?」


「何故も何もただむす…」


「再三言わせる気ですか?」


 歯痒い時間が流れる


『こいつ』がここにいること───『領主の座』をゴートンに取られたか或いは逃げているか、いずれにしろ『継承』という確証が欲しい。いくら座から退いている様に見えても『視察』と言い張ればそれは『視察』になるのが領主の権威だ


 この男に限ってそれはあり得ない。あのだらしない腹がそれを物語っている。しかし、あり得たとて何か裏があるに違いないという確かな負の信頼がこいつにはある


「ティナ、本当に大丈夫だから」


 氷相を握る私の手をアノスが解いた。その表情はどこか複雑さを見せつつ、断固として引く気はないそんな気迫を感じさせた


◆◇◆◇◆


「父上、先にも述べたとおり

 僕はまだ帰るに足る功績を上げておりません」


「何故だ」


 どうにか今日は帰ってもらうことはできないだろうか、頭に絶え間ない拳による打撃を受けている様な不快感が僕の集中力を掻き乱す


「これは何の騒ぎですか?」


 そんな折、騒ぎを聞きつけたのかフランさんがギルドから出てくると風向きが変わった。父上から伸びる糸が減った


「っち」


 明らかに動揺している。そんな怖気づく姿も記憶の中の父上とは違う点となり僕の頭痛の種になる


「アノス、どうしても帰る気はないんだな?」


「はい」


「なら仕方ない」


 父上が剣を抜いた


「アノス、お前が我儘を通すなら

 俺を倒してみせろ」


「え?」


◆◇◆◇◆


 こいつまた勝手なことを


「イバシル、あなたは自分が何を言っているのか

 分かっているんですか?」


「分かりやすい様に言ってやろう

 俺と決闘をしろアノス

 お前が勝てば晴れて自由の身だ」


 追放しただけじゃ飽き足らず公衆の面前で堂々と決闘を申し込むなんてどこまでも非常識な奴


「アノス!こんな奴の言うことは」


「分かりました」


「アノス!?」


◇◆◇◆◇


 ひとつの整理がつこうとしていた───踏みとどまりを見せた分岐の先、それはアノスの中にある『トラウマ』に向き合う一歩であり、これから始まる長い決別のたった一幕でもあった

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