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◆◇◆◇◆


『陶器の装飾品』を受付嬢さんに返却し、代わりに『鉄の装飾品』を首から下げる。鉄のひんやりとした感触が今はひとつの目標を遂げた証と考えると何だか不思議な気持ちになる


「おめでとうございますアノスさん」


「ありがとうございます」


◆◇◆◇◆


「さてと」


 ギルドの掲示板を眺めつつふと気になった依頼書を手に取る


「トレントねぇ」


『トレント種』───木でありながら生物の特性を併せ持つB級のモンスター。多種多様な存在を持っており『古代』───混沌の時代以前より人間の側に存在するため中には友好的な個体も存在する


「珍しくもない話だけど」


『理由もなく襲われて』───耳を澄ました先で『陶器等級』の冒険者が愚痴のように溢していた。どうにもこの近辺のトレントは『友好的』なのが一般的なのだとか


「すみません」


 僕は噂の確認も兼ねて冒険者に接触した


◆◇◆◇◆


「レッドトレントは数が増えやすいから

 同種での小競り合いが発生して

 倒れたトレントを回収する依頼をしていたら」


「なるほど」


『緋杉』『トレント』───レッドトレントは赤身だけの『やや濁った赤色をしているトレント』のことだった。工芸品や建築物の内装等に使われるとあって依頼書の中でも『陶器』が受けられるものでも破格で人気なのだとか


「でも最近は人も襲い出すようになって」


「…」


「いきなり攻撃を仕掛けてきて

 受けた腕がこのザマさ」


 包帯と添え木の見るからに痛そうな格好をしている冒険者が落胆の表情を浮かべ、ため息をつく


「最近、ここらの動物も凶暴化して

 手がつけられなくて

 仕方なく冒険者になったらコレだもんな」


◆◇◆◇◆


「だとしたら厄介だな」


 聞き込みを続けていると思ったよりも厄介な内容に少し考え込む。というのもレッドトレントの擬態先である『緋杉』との見分けは基本つかないとのことだった


 パーティーで挑んだ場合被害が出かねない


「う〜ん」


 かと言って僕だけで行けば恐らく怒られる。仲間を持つってのはとても大変だなと思いつつ鞄を片手にギルドを後にした


◆◇◆◇◆


「なるほど」


 斧を片手に伐採依頼も含めた下見をしてみたのだがなるほど見分けがつかないことが分かった。線の伸びも『アレ』と比べればかなり遅く、万が一にでも被弾したところで被っている布のおかげで攻撃は不発に終わる


「でも」


 斧を振り抜き感じる弾力の強さに手首が痛みを訴え始める。動く樹木というのはここまで厄介なのかと痛感したところで『攻め手』を変えた


「【デバッグ】」


◇◆◇◆◇


『解析』


『レッドトレント』


『条件合致』


 名称:レッドトレント


 トレントの『派生種』

 一般に普及している木材である緋杉に擬態しているがその目的は伐採されることであり、切られたレッドトレントは『挿し木』の要領で増えていく


… … …


『報告』

『アーロンの剣・二』による

『戦斧術への応用』が『不完全』な『問題』に対し

【デバッグ】による『解決』をしました


◇◆◇◆◇


「そんなつもりはなかったけど」


 思いがけない習得に苦笑いを浮かべるアノスは斧を構えた。一足飛びで距離を詰めての一撃がレッドトレントの枝を易々と切り飛ばした。宙を舞う枝が地面に落ちてくるのを掴み取れる程の猶予をアノスに与えながら


「加工の依頼もあったけど」


 レッドトレントの伸ばす根や枝を『横?』で薙ぎ払う。地面に落ちんとする枝を二、三度振り回し、放った鞄が全て回収し


「ギルドに帰ったら」


『昇?』で根もろとも隆起したレッドトレントが反撃の打ち下ろしを放った刹那、懐に入り、渾身のフタ振り目の『昇?』で引っこ抜き様


「受けるのもいいな」


『降?』で両断───一見すれば『コン』という心地の良い音と共に弾かれただけに見えた斧の一撃はレッドトレントから伸びる白い糸をなぞり追い放たれた一撃。『メキメキ』と伝播していく亀裂は倒れた衝撃で対岸にまで波及すると半円の緋杉をひと組作り出した


 そこから数分、襲ってくるレッドトレントを処理していたもののある問題に直面してギルドへと戻ることになったアノスだった


◆◇◆◇◆


「受付嬢さん」


「あら、こんにちはアノスさん」


「依頼を出したいんですが」


「かしこまりました

 前衛ですか?後衛ですか?」


荷物持ち(フローター)なんですが」


 僕は鞄から『レッドトレントの枝』を取り出してカウンターに置いた。受付嬢さんはそれを確認すると手を止めた


「フローター…ですか」


 受付嬢さんは目を点にして僕を見ていた


「はい」


「分かりました」


 受付嬢さんは多くを語らなかったもののその視線から僕の行動が一般的なものじゃないことを理解した

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