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◆◇◆◇◆


 翌朝、ギルドの掲示板に顔を出しつつ耳を澄ませる


 緘口令により僕が迷宮を破壊したことは口外されなかったものの『蝙蝠迷宮』の消失により『何者かが破壊した』という噂は真しやかに囁かれ、完全に隠蔽することは難しく広まっていた


 噂と言えば宿の埋まり具合の原因が判明した───『闘技場』なる催し物が近々開催されるとのことでそれにより宿屋は来月まで満員状態が続くことが【予測】された


 当分は一昨日、昨日と同じ宿の一室でティナと同じ部屋の中にて休むことになるだろう


◆◇◆◇◆


「お、お邪魔しています」


「おかえりアノス、お客さん来てるよ」


「…」


 何故か今日はシルビアさんもいた。部屋の机に座り、顔色の悪さから『ある』事情によるものだろうと予想はできた


「えっと、ラントさんのパーティーが解散

 してしまいまして」


「そうなんですね」


「まだ、正式には解散してないんですが

 ロンさんが次の雇い先を決めておけって」


「なるほど」


 酒場での噂話は本当だったようで『ラントさん』がリーダーを務めていたパーティーが解散するようだ


 ティナが何事かと心配そうに僕とシルビアさんを交互に見つめる。僕は昨日起きた『フォード』による災害とそれに連なる事柄を説明した


「…それを先に報告せんか」


「ごめん」


 僕はこっぴどく叱られた


「解決したなら問題ないけど

 最悪の場合領域間で戦争だって

 あり得るんだからね?」


「はい」


 僕は頭を下げることしかできなかった


「えっと、ごめんなさい」


 僕が頭を下げる中、シルビアさんも頭を下げる。ティナは目頭を押さえつつ「まぁいいわ」と前置きをしてシルビアさんに向き直った


「ったく、シルビアちゃんは

 これからどうするつもりなの?」


◆◇◆◇◆


 私は迷宮の中での出来事を話した


 緊張からか言葉に詰まったり噛んだりもしたけれどティナさんは相槌を打ちながら聞いてくれた


「アノス、間違いない?」


「うん」


「わかった

 アノス食事をとってきてくれる?」


「はい」


 アノスさんは部屋を出て行った


「それでシルビアちゃんは銅だっけ?」


「え?

 はい、支援魔法の銅です」


「魔術師か、せめて前衛なら問題ないけど」


「ダメですか」


「ううん、支援魔法は有難いのよ?

 でもバランスがね」


「えっと」


 私は迷宮で感じた違和感をティナさんにぶつけた


「アノスさんは

 何故前衛ではないんですか?」


「アノスたっての希望だからよ」


 ロンさんが言うには前衛でないことが不思議という話ですが、何やら複雑な事情があることがなんとなく分かりました


「色々事情があるのよ」


「分かりました」


「んじゃこれからよろしくね」


「ところで何ですが」


 私は当初から気になっていたことティナさんに聞いた


◆◇◆◇◆


 僕は3人分の食事を持って部屋に入ると話し合いは終わっているようで2人して僕の方を見てきた。やけに真剣な表情なので身構える


「そんなわけないですね」


「そう言う子なのよ」


「ん?」


 何の話だろう?


◆◇◆◇◆


 スープを口に運び咀嚼する。牛乳をベースに芋と肉、葉野菜と一食でバランスの取れた食事はそれだけで満足感を受けた


 野営の時も参考にしようと思った程、手軽なのに味がまとまっていることに驚いた。なるほど体験しなければ気が付かなかったな


「アノスさんは魔法も学ばれているんですか?」


 僕が食事を続けようとした矢先、シルビアさんが質問をしてきた。口に運ぼうとしていた匙を戻しつつ少し話す


「うん、そうだけど」


「ちょっと変わってますね

 戦いにおいて余計な知識は

 判断が鈍っちゃいますよ」


「そうかな?」


「錫等級なら分かりますが

 陶器等級だと特にですね」


 ティナの危惧していたことが何となく見えてきた。なるほど、等級の低いものが等級の高いものを見よう見まねで模倣するのは好ましく思われないようだ


「でもアノスさんには不要な助言ですね

 忘れて下さい」


「いや、他のパーティーと組んだ時の

 参考になるよ」


「…え?」


「え?」


 僕とシルビアさんがティナを見やる


「ごめん、説明してるとばかり思ってた」


◆◇◆◇◆


「お二人はパーティーを組んでないんですか?」


「う〜ん、どう言った方が適切かな?」


 アノスが口籠もる。そもそもアノスの集団行動慣れっていうのと、波長が合う人がいれば勧誘したいってだけなんだけど


「アノスは集団での戦闘に不慣れなの

 だから慣れるまではパーティーを転々として

 経験を積んで貰おうと思ってるのと」


 うわすっごい不安そうなシルビアちゃん


「パーティーメンバーの吟味ってところかな」


「あ、なるほど、それは一理ありますね」


「まぁ〜ねぇ〜」


 そもそも新しい役割を定着させようなんて馬鹿な考えに賛同してくれる様な酔狂者が後ひとり欲しいなんて贅沢な悩みがあることは口が裂けても言えない


 斥候何て建前だ。既存の戦闘形態ではどうしてもアノスがハブられてしまうし、かと言ってアノスが経験を積んで使い分けられるなんて保証はどこにもないわけで


「う〜ん」


「私、お邪魔ですかね?」


「違う違う」


 さて後ひとり、どうしたもんかな…


◆◇◆◇◆


「さてと、シルビアちゃんは

 私と探索に行っとこう」


「え?アノスさんは?」


「まぁまぁ」


 参加すると言った手前断れない雰囲気の中、私はティナさんと2人で探索に出かけた


◆◇◆◇◆


「ティナさんって【剣姫】何ですか!?」


「『素人』だけどね」


 私のスキルについて話しておいた。アノスと私がスキルを伏せておくのは不公平だし、信頼関係にも響く私のは別段バレたところで問題はないため開示した


「凄まじいです!」


 イタズラに振った剣にさえ威力が乗り、振るう剣技にはキレが冴え渡る───【剣舞】は全く忌々しい【スキル】だ


「今から私の

 鍛錬に付き合って貰おうと思ってね」


「でしたらアノスさんの方が」


「シルビアちゃんの実力も見ておきたいの」


「私のですか!是非!」


◆◇◆◇◆


「【気配遮断】」


「おぉ本当に分かんなくなった」


「支援魔法をかけた後は

 こうやって隠れてるんです」


「なるほどね」


 私の【気配遮断】───私の気配を霧散させる【支援魔法】のひとつ。魔術師の弱点でもある『狙われ易さ』をカバーしてくれる

 

「よしそれじゃあ能力向上を試してみよう」


「はい【スウィフトストライク】」


【スウィフトストライク】───攻撃の速さを瞬間的に上げる【支援魔法】にして、ラントさんによく使っていた魔法だ


「どうですかティナさん?」


「なるほどね、確かに便利だね」


 ティナさんの剣先が全く捉えられない速さを出しています。ラントさんの時でさえこんなことにはならなかったのに


「後は撹乱魔法だけど」


「…ティナさん」


「どうしたの?」


◆◇◆◇◆


「…」


 アノスが撹乱魔法の内容を見えていたなんて、信じられない話がシルビアちゃんの口から出てきた


【撹乱魔法】───『対象』の『動揺』や『錯乱』を誘う『幻覚』を見せる魔法。当然ながら見えるものはそれぞれで異なる


「アノスさんは【天眼】でも

 持っているんですか?」


「どうだろうね」


【デバッグ】───不思議なスキルだ。元々『外れ』と言われているにも関わらずいざ成長してみれば机上の空論に等しい『複合スキル』の様な立ち振る舞いをする


「あの男といい、何か違和感がある」


「ティナさん?」


「あ、ごめん、気にしないで」


「後、能力向上には…」


 アノスは勝手に強くなる。元来の器用さがそれに拍車をかけている。今恐るべきは足手纏いになることだ。追いつかれこそすれ、追い越されていないと願いたい


『鉄の装飾品』になった私も【剣姫】に向き合わなければならないと決心をした


◆◇◆◇◆


 一方その頃、アノスは『地図』を片手にギルドに到着し『鉄の装飾品』を受け取っていた


◇◆◇◆◇


『鉄の装飾品』───各種依頼をこなし、役割に順応できたこと、ギルドから信頼を受けた証

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