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一方その頃、アノスの殺害を企てていたイバシル・アーロンが頭を抱えていた。それもその筈、ゴートンとティナをくっつけてるつもりが件のティナがアノスを追いかけてしまったという事実を遅ればせながら知ったためだ
「なんてことだ」
アノス殺害だけならまだしもティナが巻き込まれもしたら、もし依頼先であるゴロツキが捕まろうモノなら両領域間の関係は悪化してしまうことに怯えていた。波風を立てたくないイバシルにとって最悪な状況である
「イバシル様」
「後にしろ、今は気分が優れない。このところ思い通りにいかないことばかりで腹が立つ、どうせ領内のことだろうゴートンに一任する」
「かしこまりました」
苛立ちを眉に集めながら顰めっ面のイバシルは机を叩いた
「全く、どいつもこいつも一から十を言わないと動けないのか、失敗作だらけだ。どうしてこうも無能ばかりが俺の周りに集まる」
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「腹が減った」
食事を用意させている間に次の作戦を考えなくては、何故アーロン家の当主ともあろう俺がたかだか追放者ひとりにここまで神経をすり減らさねばならんのだ
あの穀潰しめが今まで目をかけてやっていたのにあの【スキル】を授かりやがって目障りな所が弟そっくりだ
届いた食事を食い散らかしたイバシルは書類に目を通すふりをして居眠りを始めた
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「流石ゴートンだな、俺の息子」
いつにもまして税収がいい、ゴートンが領内を運営し、俺は贅沢三昧。民草が必死に働いている姿を肴に飲む酒は格別だ
最近では社交会の場でも俺の息子の話で持ちきりだ。俺の血は優秀だな
「あいつと出てくる腹を間違えたんじゃないか?」
だからこそアノス、お前が目障りで仕方がない。早々に自分で死んでいればいいものを何故言葉通りに出ていくと言う愚かな選択をとった
教育が足りなかったのか?
【デバッグ】がこの世界の情勢にどんな影響を与えるかも知らないガキが
「イバシル様」
「何だ?今は」
「ゴートン様が剣の稽古をと」
ほほぉ珍しいな、数年前まで半べそにになりながら剣すら振ることのできなかった息子が俺に稽古をつけて欲しいだなんて
「そこまで言うのなら
【真髄】【剛腕】の俺が見てやろう」
こんなに嬉しいことはない、事務仕事にばかり向かっていた息子に稽古をつけることができるなんて、あのアノスに割いてしまった時間分、存分に時間を掛けてやる
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「実戦形式の稽古とは分かってるな」
「…」
【スキル】を持っていようと使い方がなっていなければ宝の持ち腐れだ。順序が逆になってしまったが今からでも遅くないだろう
「ゴートン存分に打って来い」
嬉しい、模擬戦用の木刀を手にしてゴートンの剣を受ける、やはり細腕では存分に【神剣使い】を扱えていないな
しかし、威力だけなら俺と互角、これは大成すること間違いなしだ
「どれ、ここはひとつ」
鼻っ柱を折っておくか、余計な牙は要らない。扱い易い形にすることが一番安心だ
「…」
薙ぎ払い木々を薙ぎ倒す横尾
滝を枯らし雨にする昇爪
巨岩をも砕きチリにする降角
空、雲、宙を穿つ牙鉄
いくら【極】と言えどこの程度か、俺の一撃によろめき、牙鉄に至っては吹き飛ばされた。さてそろそろ優しくしてやるか
「この程度か、親父」
「はて?何と言った」
「無駄口は良い、型はこれだけか?」
「ははは、戯れるな戯れるな
では後悔するなよ!」
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何だこのクソみたいな剣は?まるでなってない、力任せの大振りをしてるだけじゃないか
目の前の男はまるでひとつの境地にでも至ったかのような豪胆ぶりだ。こんなのが親だなんて恥ずかしいことこの上ない
俺は剣を大きく振りかぶり、自らの本能に従い【スキル 】を発動した
「【横尾】」
片足を軸に飛び上がりしな、全体重を乗せた横薙ぎによる首元、胴を捉える2連の斬撃が放たれた。クソ親父の一撃なんて劣化品だ
「【昇爪】」
ほぼ同時に放たれた斬撃が地面を抉り上げながら受けた対象を防御諸共空中へと放り上げる3本の斬撃が放たれた。吹き飛ばすだけのクソ技とは訳が違う
「【降角・翼】」
空中で無防備になった対象を勢いそのままに剣の柄で捉え、逆手で切り落とす斬撃ではなく打撃の一喝。力任せに叩き伏せる何の捻りもない一撃が恥ずかしいとさえ思う
「【牙鉄】」
鉄すら刺し穿つ一撃は不可視の一閃。引き絞った一撃は何物にも拒むことは叶わず放たれたが最後武器、防具に至る障害諸共刺し穿つ。空気の壁程度で勢いのなくなる牙なんてあってないようなものだ
「な…に…がぁ?」
「これが正真正銘のアーロンの剣ですよ
親父、いやイバシル大罪人」
「ゴートン?なんだその口の利き方は?」
気持ちの悪い顔だ、潰れたカエルみたいな顔をしている出過ぎた腹を締め付けていた包帯が取れたせいでなおも醜い
「アーロンの剣を汚した貴方には言われたくない
当主殺しの大罪人め」
「…何を言ってるのか、さっぱりだ」
「調べはついてんだよ
当主であったアビス・アーロンを亡き者にし
アノス・アーロンに本家に劣る剣を教え
あまつさえ領外へと追いやった」
「こ、子供の世迷言にしては」
「戯け、全部調べはついてんだよ」
「くっ、くそ!」
俺は劣ってない、弟にだって負けない剣を身につけた。当主に相応しくないのは向上心がないくせに剣をあっさりと扱えるあいつが悪い
俺の言うこと全て否定して、俺より先にガキこさえて幸せになりやがって
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やぶれかぶれの振り回し、木剣が鈍い音を立て続けるあまりの醜態にゴートンは構えると一撃にてイバシルの木剣を叩き折った
「次期当主である者が当主である者を
追放する方法には幾つかある」
「は、はぁ?」
「ひとつ前当主が没した時
次期当主に定められている者
もしくはその族柄が近しい者がつく」
ゴートンは木剣を投げ捨て肩を回す
「ふたつ前当主との試合にて
その実力が優っている場合」
鋭い拳が腹に突き刺さる
「ひとつ目はこの限りではない」
泡を口から吐き散らかすイバシル
「みっつ前当主の統治する
税収、治安、出生率、産業が
滞りなく行えている場合」
側頭部を捉えた拳により意識が朦朧とするイバシル。倒れようとするイバシルの髪を掴み上げゴートンが首を鳴らす。14とは思えない鈍い音が連続して鳴る
「ひとつ目はこの限りではない
よっつ目は省略!」
蹴り上げた巨体に拳叩きつけ弾んだ身体を鞭打ちの如くしならせると浮き上がった顔面目掛け
「以上を持って俺ゴートン・アーロンが
ここに宣言する」
拳を引き絞ったゴートンによる顔面パンチが炸裂した
「てめえは用済みだクソ親父」
完全にフルボッコ、満身創痍、意識喪失、肉塊になっているイバシルは無様にもメイドの手によって野原にポイ捨てされることになった
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「うっし、スッキリしたし
改革始めっぞ」
ゴートンは非常に鬱憤が溜まっていた。それと言うのも全時代的な政策に書類制作と非効率極まりないこの現状を変えようとしても現当主であるイバシルが生きていた場合、話を通さねばならない
しかし、イバシルは変革を望まない。成長ではなく停滞を望むためこれへの同意は容易ではないと判断し、別の方法をとった
それが四項
『2番・3番を分担して行える場合
その者との同意を持って当主の座につくことを
是とする』
結局のところ、四項目が不要になったのだが晴れて当主・領主となったゴートンは余計な荷物を捨てることができたとあって自室に戻って行った
「これで兄さん呼び戻せるぞ〜」
晴れやかな気分で




