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◆◇◆◇◆


 歩く度に筋肉が硬直する。煩わしい


 まるで『そっちに行くな』と身体が拒否しているみたいだ


「こんなの初めてだ」


 僕の歩く意思に反し、硬直を繰り返す足に疲労が蓄積したのかとマッサージをしてみても効果はなかった


 道中暗闇に乗じて蝙蝠が飛んでくるも赤い糸により奇襲にも対応できた。この先に居るであろう化け物の予想が全くつかず、握る拳に力が入る


◆◇◆◇◆


「どこまで続くんだ?」


 さきほどの化け物の群れとの戦いの後、体感で数分は歩いたと感じるものの実際は分からない。太陽の光がないせいで体内時計でしか把握ができていないからだが


 単純に罠の類を疑ったが続く通路に化け物の姿も次第に減っていった


◆◇◆◇◆


「水、食料に問題はないな」


 ひとしきり歩いた後、鞄の中から軽食と少量の水を口にする。ただ単に生き残るだけならより食を細められるが先に潜み長を討伐することを念頭に置くなら回数を増やし、量を減らすことが最善だろう


 これまでも飲まず食わずは当たり前だった。野営と違い食料調達ができないのが問題だ。あり得ないとは言い切れないのがこの先終わりがないと言うことだが


「冗談じゃない」


◇◆◇◆◇


 ついに下りが終わり恐らく最深部に到着した。永遠に続くなんてことがなくて一安心だ


「核が見えるな」


 不思議な状況だ。空間に侵入してからかなり経つが守護者の姿がない


「…」


 早々に核を破壊できるなら問題はない


 端から端まで走って2分程の広さの円形状の部屋に足を踏み入れる。青白い松明が視界の端で灯る、それは瞬く間に部屋に並べられた同じ松明に伝播していくと真っ暗だった部屋を不気味に照らした


 部屋の奥には核を攻撃している様な女神像が2つ、向き合うように並んでおり、核は見慣れた半円のものではなく、禍々しい『何か』を祀る祭壇の様な姿をしていた


 そして、歩き続けた僕の目にあり得ざる物が飛び込んできたため、瞬間的に剣を抜いた


「誰だ」


 剣先を向けた先、小柄な人影がそこにはいた


『まさか、ここまで早く

 辿り着く人間が居るなんてね』


 真っ白なタキシードに顔は帽子を深く被っているせいで見えないが如何にも怪しげな存在───全身から溢れ出る冷や汗がこいつをただの人ではないことを僕に知らせる


「人型の化け物、魔王?」


 俄には信じ難い噂のひとつに魔界を統べる存在というものがいる───魔界の王『魔王』と呼ばれるそれは人型をした化け物と聞く


 それが目の前にいるこいつなのだとしたら僕では太刀打ちできないだろう。言うまでもなく『F級』だ


『いいや。俺は魔王じゃないよ』


「…」


 魔王以外にも人型の化け物が存在するとでも言いたげな物言いに鞄の中にある『切り札』に手を伸ばそうとすると目の前の化け物が帽子を徐に持ち上げ、見事な一礼をした


「???」


『…人間でもないよ』


 そう言った化け物は面白がるように僕を見た


「ならもう喋るな」


『おぉ怖い怖い』


 人型の化け物にこれと言った違和感はなかった。しかし、自らを人ではないと言うのならそれは化け物以外にあり得ない。僕は懐に入りさえすればと一足飛びによる牙剣を放った


 心臓を捉えたひと突きからの鞄の中身を投げつける様にばら撒き、片っ端から手に取り武器で攻撃を加えた


「!?」


『素晴らしい攻撃(ダンス)だったよ』


 僕の放った攻撃の悉くがかすり傷すら与えることはなかった。槍、片手斧、短剣、投石、手応えはあったにも関わらず人型の化け物には効果を発揮しなかった


「どう言う仕組みだ?」


『はは、終わりならこちらの番だ』


 人型の化け物が煙幕を発生させたかと思えば、何かの紙片が宙を舞っていた。何事かと身構えたものの思わぬところで変化が現れた。核を囲んでいた女神像の目から血が流れ、女神像がそれぞれ掴んでいた武器がボロボロと崩れていった


「!?」


『天罰覿面』


 聞いたことのない呪文に核へと走り出す。僕の役目は化け物退治だが迷宮を閉じることを優先にした。もしアイツが迷宮の長ならこれで決着がつく


『え?』


 祭壇に向けて投げた槍が祭壇に触れようとした直後、禍々しい気配が漂い始め、槍は弾き飛ばされ天井に突き刺さった


「は?」


『ふむ、君は◾️◾️◾️か…

 ちっ、言葉が伏せられている』


「?」


『まぁいいか、アノス・アーロン

 もし君が生きてここを出られたなら

 いつかまた相まみえよう』


「何を訳の分からないこと…」


 僕は目を離していない。瞬き───たった一瞬その人型の化け物を視界から消した瞬間にそいつの姿は掻き消えていた


◆◇◆◇◆


 祭壇から這い出てくるそれを前にアノスは先ほどまで感じていた絶望的な状況に比べて幾分かマシになった気配を前に悪態をついた


「あの人型に勝てる気がしない」


 感覚の麻痺したアノスがゆっくりと構える先で祭壇から這い出し終えたそれがアノスを真正面から見つめた

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