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「おはようございますアノスさん」
「おはようございます」
翌日、受付嬢さんに紹介された銅の装飾品を身につけていたラントさん───鉄より上の等級で集団での依頼は銅等級から斡旋される程にギルドからの信頼が厚い等級
彼女がリーダーを務める3人組のパーティと迷宮に潜ることとなった。ラントさんは槍と革の小盾と前衛なのが窺える
「よろしくお願いしますアノスです」
「ラントだ、よろしく頼むよ」
一通りの挨拶を終え、ティナが見送る中、試験会場である『蝙蝠洞窟』に向かった
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向かう道中は順調というより出る幕がなかった
何と言っても銅等級のパーティー
槍使いのラントさん
大盾使いの大男のロンさん
支援魔法を使う魔術師のシルビアさん
息のあった連携で敵を早々に仕留めるので『荷物持ち』になっていた
僕はラントさんに連れられて、洞窟の前にやってきた『B・蝙蝠洞窟』───生物が生息できるほどの穏やかな洞窟、油断しなければ問題なく帰ってくることができる難易度、準備万端で挑むべき洞窟
「ん?」
僕はふと感じた違和感に空を見上げた、日差しの入り方がやや過剰に思えたのだ
「ラントさん、蝙蝠洞窟は
どんな化け物が出ますか?」
「化け物?あ〜モンスターのことか
蝙蝠型のモンスターね、吸血とか
魔法とか使ってくるから気をつけて」
「分かりました」
僕は白紙に化け物の情報をまとめていく
『化け物』と『モンスター』───似ているものの少し違う意味になる『化け物』は人間を見るや否や襲い掛かってくる獣、『モンスター』は人間を襲う化け物や動物全般を指す言葉である
「っても、B迷宮なんて目を瞑ってても
踏破は可能だ、そう気張るなよ」
「いえ、迷宮に潜るのは
(集団では)初めてですので頑張ります」
「硬いなぁ、おい」
迷宮とは、洞窟や森、自然の地形の一部が変化して生じる化け物の巣窟である。生息する化け物によって危険度が設けられAからEまで存在する
例外として、これらは放置すると数を増やし、領域を侵攻してくる異常事態を引き起こすフォード───『F』の危険度が設けられる
迷宮を早々に破壊すれば良い様に思えるが結局のところ化け物が増えることができる環境というのは人間にとっての宝物庫の様なものであり、おいそれと破壊に踏み切れないのが現在である
そのためギルドが管理している迷宮では定期的に中の化け物を駆除することでこれを予防している
「よく考えるなぁ」
人間の領域内で発生したものを壊して周るアーロン家では先ず考えつかない発想に僕は興味が湧いた
「でもアノスさんは試験ですから
それが正しいと思います」
「は?何だそりゃ?」
「ロン?お前また話すっぽ抜けてんの?」
「パッといって解決、それで十分だろ」
「脳筋が」
ラントさんたちはそんなこんなで迷宮へと入っていき、僕もそれに続いた
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「初めて見つけたモンスターは、とにかく防御を固めて様子をうかがうんだ」
「早速お出ましだ」
ロンさんがそう言って眺める先には蝙蝠型の化け物がこちらを凝視していた
「【アテンドシーカー】」
ロンさんは敵の意識を自分に向けさせる【スキル】を使用すると大盾を構えた
スキルに当てられた蝙蝠の幾つかがこちらに飛んでくると大盾に向かって突進を開始する。しかし、大盾に突っ込んだ端から光の粒子となって消え去った
「ロン、スキルを使う時は始めにいいな」
「あいよ」
「またやるよ、いつもそうだし」
そんなこんなで迷宮を使った試験は続いていった
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「アノスさんは何で
スキル登録じゃないんですか?」
シルビアさんが僕に話しかけてきた
「そんなの決まってんだろ
スキルが弱いからだろ」
「ロン、やめな」
「今時等身大登録なんざやる奴は居ねえよ」
「ロン!」
「いえ、合ってますよ
僕のスキルは弱いというより
前衛にも後衛にも向いていないんです」
僕自身も集団での作戦実行は素人だ
役割を分担するその利点にさえ気がつけない上にスキルも直接作用するものじゃない、対外的に見れば弱いと言われても仕方がない
「ほらな」
「もう」
険悪な雰囲気なのはどうすればいいんだろうか?こういう時にティナみたいに場を和ませつつ仕切ってくれる人がいればな
そう思いながらも迷宮の奥へと進んでいく
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「む、すまん」
化け物の数が増えてくるとロンさんの盾をすり抜ける化け物も出始め、ラントさんが槍を構え始めた
空中で突っ込んでくる化け物相手に槍は不利かに見えたがひと突きの速さは蝙蝠の羽ばたきよりも早く穿つと蝙蝠の胴を捉え光の粒子へと変えた
「ロン気張らないと蹴り入れるよ」
「あいよ」
険悪な雰囲気と思っていたものの進む程にそれが彼、彼女らの雑談であることが分かってきた。僕が原因でパーティーの崩壊が起きたのではないかと冷や汗が止まらなかったがひと安心だ
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ギルド管理下ということもあり、苦戦することなく最深部といわれるところまでやってきた
基本一本道の迷宮には化け物以外はなく、地図も形を帯びてきたのが少し嬉しく思う
「おや?」
先導していたラントさんが素っ頓狂な声を上げた
「ここ、道なんてあったかい?」
「あ?地図持ってないのかよ」
「生憎とBの地図なんざ買う方が損だよ」
「たく」
「でも妙なんだよ
昔来たときは確かにこんな道なかった」
「成長期でしょうか」
「あり得なくはないがギルドが言いそびれるとも
考えずらいし私の記憶違いかも」
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『地図製作中』
『蝙蝠洞窟』『良品質』
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