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昼食を終え、ギルドの中でゆったりとしていたいると受付嬢がアノスに試験の日程を伝えにやって来た。やたらと距離が近いように見えるのは気のせいだろうか?
「分かりました」
アノスが受け取ったのは白紙の地図だった。ということは試験内容は迷宮探索だろう。斥候に就いている者は戦闘では妨害工作や敵の撹乱、非戦闘時には味方の補助に回る職業だ
迷宮探索や野外探索でも引っ張り凧な職業なのだが如何せん絶対数が少ない。これの難しいところは必ずどちらかを独学で習得しないといけない点だ
「どういけそう?」
「うん、問題ないよ」
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「日程はどんな感じなの?」
「明日の朝から見たい」
ティナは咽せた
「大丈夫!?」
「うん、平気〜」
ティナが先に述べた通り斥候というのはそもそも成り手が少ない。混沌の時代ならいざ知らず、女神がスキルを授ける昨今において『鍛える』というのは時間と費用のかかる者である
「何考えてるんだ、ここのギルド長は…」
ティナの機嫌が悪くなる一方、アノスは白紙の地図を眺めながら大まかな予想を立てていた
「多分、最初は作製の仕方を
学ばせてくれるんだよ」
『地図製作』───斥候の基本技能、地形の把握や道の周知、共有など一枚を通じて様々な技術が必要とされる
「だからって明日なんて急過ぎる
アーバレスト領だったら
まだ期間を設けるわよ」
御立腹のティナを宥めつつアノスは時間までに学べることを探し始めた
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「いらっしゃい」
僕は街の地図を作ることから始めた。しかし頭の中で理解していたとしても紙に起こすとなった時、寸法を間違えて早々に紙の端で筆が空中を撫でてしまった
「何ここ?」
「製図屋だよ、装備品の設計図なんかが
売られてるんだ」
「何でそんなところに?」
「んと」
僕は『海上艦』の設計図を手に取り、店員に断りを入れてからティナに見せる。ティナは首を傾げ、ため息をついた
「どういうこと?」
「完成品ってこんなに小さいかな?」
「そんなわけないでしょ?これじゃあ…あ!」
完成品と製図が同寸法ならそれが一番なのだがそうなれば費用が掛かる、結局のところそこが一番の難題だった。詳しく書き込もうとすればするほど、余白は少なくなり結果、筆は空中を散歩することになる
「地図を作る時もこの技法が使えないかなって」
「よくもまぁ覚えてたわね」
「たまたまだよ」
設計図を戻し、道具の方へと向かう
「魔道具だとお金が足りないか」
設計図を作るのに最適な道具を用意しようとすると費用が青天井なため考え込み、思考がまとまらなくなったため、仕方なく【スキル】に頼った
「【デバッグ】」
◇◆◇◆◇
『情報精査』…
『報告』
『知識の取得』『製図』の本が『最適』
『必要となる道具』『可視化』
◇◆◇◆◇
「便利だな」
僕は道具の棚の先、下の段にあった『製図知識』の本を手に取り店員に金銭を手渡す。合わせて指定されていた『白紙』と『製図道具』を幾つか買い鞄の中に入れた
◆◇◆◇◆
「やっぱりお金が掛かるわね」
「極めればそれが商品になるからね
仕方ないよ」
「でも、誰も使わないものなら
安くても良いでしょ」
「そうだね」
まずは僕が出来ることを少しずつ見極めていきたいと思うが、やっぱりお金が掛かる。『縄』と『報酬』で相殺はできたは良いもののこれが続くと正直厳しいと思いつつ朝に受けた残りの依頼を進めていった
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「ふぅ〜疲れた」
「お疲れ様」
「街の中だけって言っても
こうも歩かされてたらね」
地図作製と依頼の進行、同時にやっていたら寄り道も増え、地図が粗方仕上がった時には陽が傾きを見せていたため宿に戻った
軽い食事を終え、ベッドに横になるとティナは就寝準備を始めた。僕は机に地図と道具を用意し地図を眺めて今日の成果をまとめていく
「マメだなぁ」
「初めてのことだと、やっぱり不安があるからね」
昇級試験の内容が予想と違うかもしれない。不安が生じたその時に手元が狂わない様にするのは『慣れ』だ
アーロンの剣や野営、狩猟においても何度も繰り返しているうちに身体の震えは止まり、動きにキレが生まれた
「ティナは寝てて」
「起きとく」
「え?でも」
「今寝る?それとも練習して寝る?」
◆◇◆◇◆
「今寝る?それとも練習して寝る?」
こうなると徹夜をしかねないのがアノスという子だ。制限を設けないと納得いくまで突き詰める。正直なところ【スキル】がその手のものじゃなくてホッとしている自分がいる
病的なまでの『研鑽主義』───突き詰め、行き詰まるところまで実力を高める凡ゆるものを犠牲にしてまでも。あの男とはまるで別人だ
「え?あ、えっと」
私はベッドを叩く、慌ててるなぁ、添い寝はそれほど嫌じゃなかったのは嬉しい限りだ
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『地図製作』における
『縮図』『簡略化』を取得した
『斥候』の階位『修練』
『初学等級』───『地図製作』
『錬磨等級』───『投石』




