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◆◇◆◇◆


 ギルド全体に鐘の音が響いた


「緊急依頼だってよ」


「最近いつもこれだ」


「緊急依頼?」


 突然の鐘の音が聞こえ不思議に思う依頼掲示板を眺めていたアノスに少しくたびれた様子の冒険者が近づいてきた


「お?お前さんも陶器等級か」


「はい、先ほど登録したばかりで」


 世間話ついでに陶器等級の冒険者がアノスに説明を始めた


「そいつは運がないな

 恐らく物資運搬に駆り出されるぜ

 あれがきついのなんのって」


 陶器等級の冒険者は緊急依頼の内容を一瞥しながら気怠げにそう言った


「俺ら陶器等級は直接戦闘に駆り出されることは

 殆どないがその代わり前線維持に努めるんだ」


 アノスは『いつも通りのことをするなら、問題ないな』と思っていた


◆◇◆◇◆


「領主さまは動かなかったか」


「兵士を総動員してこれかよ」


「悪夢だ」


 阿鼻叫喚の地獄絵図、緊急依頼の鐘の音が響いた直後のこの雰囲気を見るに実戦経験がないのだろう。アノスと落ち落ち食事もできないなんて


「街道に現れたクラウンスパイダーか」


 ん?


「ここから馬車で半日ほどの距離か」


 ん?ん?


「領の兵士も手を焼くらしい」


「何せD級だ、無理もない」


「『スカー』もあるって話だ」


 ん?ん?ん?


 聞けば聞くほどに知っている情報ばかりで頭が混乱する───『クラウンスパイダー』『D相当』『スカー持ち』『林道』の情報に少し考え込みアノスの元へと向かった


◆◇◆◇◆


「ほほぉこれは中々丈夫だな」


 何やってんだこの子は…。目を離した隙に『糸縄』を誰かに見せながら商売の話を終えていた。何故目を離すとこうなるのやら


「アノス、ちょっとこっちに」


「ティナ!では、色々と話してくださり

 ありがとうございました」


「いやいや、俺もいい買い物できたからな」


◆◇◆◇◆


「どうしたのティナ」


 ティナに呼ばれて合流するといつもより少し強めの力で腕を引かれた。察するに何か緊急依頼がらみのことだろうか


「アノス、あの縄まだある?」


「ティナも使う?」


「そうじゃない」


 ティナに腕を引かれながら気が付けばギルドの中心に来ていた


「受付嬢さん」


「ティナさんにアノスさん、先程ぶりですね」


「はい」


「良ければですが物資運搬にご協力を…」


「アノス、縄出して」


 ティナがぶっきらぼうにそう言った。逆らう理由もないため鞄の中から『糸縄』のひと束を取り出してカウンターに置いた


「…これは?」


「クラウンス…」


 僕が話そうとした時、ティナにほっぺを両手で挟まれた。鋭い目つきで喋るなと無言の圧を感じる


「確かめてみて下さい」


「…?ってこれは!?」


◆◇◆◇◆


 それから程なくして『緊急依頼』は

 一度の落ち着きを見せた


「アノスさん、これは何ですか」


 しかし、その一角に落ち着きとは無縁な雰囲気の応接室───小さな一室で取り調べのような雰囲気漂うピリピリとした受付嬢は糸縄を何度も調べていた


「ティナ?」


 アノスはティナを見やるとティナは頷き


「話しても大丈夫」


 真剣な面持ちでそういった


◆◇◆◇◆


「分かりました、ありがとうございます」


 受付嬢に林道での活動を話した。クラウンスパイダーの情報も併せて報告すると真顔で感謝を述べ部屋を出て行った


「これで良かったの?」


「大人数での移動はそれだけで大型出費になる

 それでもし討伐対象がいないとなれば?」


「討伐後の目算が破綻するね」


「これで良かったのよ」


 事実確認が取れるまで待たされることになった。虚偽の報告をすれば罰則があるのだとか、そんなことをする意味がイマイチよく分からないが罰則があるということはやる人間がいるのだろう


◆◇◆◇◆


「…」


 受付嬢は驚きのあまり表情を作るのを忘れて真顔のまま歩いていた。それもその筈───件のクラウンスパイダーは通常個体ではなく傷持ち、苦戦は避けられない。現に領兵が戻ってきていないのがそれを物語っている


 受付嬢は六花の魔法使いが居れば可能かと無理矢理納得をしたものの、どうにも飲み込めず、その疑念はアノスへと向けられる


「…」


 丁寧に編み込まれた蜘蛛の糸は元から一本であった錯覚を持たせるほどの技術を見せてくる


 錬金術系統であれば魔術大学や魔術師ギルドが適任なのだが敢えて『冒険者ギルド』に来たのは何故なのか不思議でならない


 完成度もそうだが長さも目を見張るものがある。素材採取だけなら討伐を諦め逃げ出しながらでもできるが、にしては糸の状態が良過ぎる上に目視で確認できる太さを用意する程の価値は疑わしい、倒した後に集めなければ不可能な量だ


「ははは」


 受付嬢の脳裏にはティナとアノスの両名が刻まれた。双方が陶器等級にしておくにはあまりにも損失が大きいと苦笑いを浮かべた


◆◇◆◇◆


 別室で軟禁されること数時間、程なくして事実確認ができたため解放された。どうやら討伐に成功したという情報が行き違いになっていたようでほっと胸を撫で下ろす


「あんなのが複数いたら骨が折れるね」


「やめてよ、考えたくもない」


 僕の冗談にティナが呆れ笑いを浮かべた


◇◆◇◆◇


 等級への還元は見送り中

 現在の等級は『陶器』

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