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「そう言えば水銀等級の冒険者はどうしたの?」
「さぁね」
街道を歩く途中でふと思い出したことをティナに尋ねた。ティナそれにそっけなく答えた。やや苛立っている様に見えたのでこの話はもう辞めることにした
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「…」
リバレー領もあまり治安がいいとは言えなくなっていることを兵士から聞いた。冒険者や領民の度重なる失踪と化け物の急激な活発化に領内が荒れに荒れているのだとか
今回のクラウンスパイダーも短期間ながら犠牲者が何人も出ており、それを懸念して領民はこぞって領地から離れる始末
終いには冒険者ギルドの昇級条件緩和により分不相応な輩が上級者となり、治安を乱しているのだとか
「醜い」
打つ手があまりに悪手過ぎる。他の領主への救援要請も出せただろうに
「思い出しただけでも向かっ腹が立って来た…」
「何があったの」
「全然大丈夫」
「とてもそうには見えないよ」
『水銀等級』───『銀等級』と対を成す等級
後衛の上級者を銀とし
前衛の上級者は水銀とされる
それがあんな腰抜けだなんて、ふざけるのもいい加減にして欲しいものだ
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「見えて来た」
途中で馬車との並走をすること半日、リバレー領の街が見えて来た。驚くことに街に入るのにあまり時間は掛からなかった
綺麗に舗装された道路に人の溢れた街、よく見れば殆どが冒険者と言った風貌をしていた
「冒険者の人が多いんだね」
「そうね、最近ここで冒険者登録をする人は
かなり多いみたい」
「そうなんだ、どうしてだろう」
「駆け出し冒険者向けの支援が
活発だからね」
ティナは何処か不機嫌そうな様子で辺りを見回していた。僕もそれに倣って辺りを見回すと陶器の首飾りが多いことに気がついた
「ティナ、あれって?」
「陶器等級、駆け出しの冒険者よ」
『陶器等級』───首飾りは己を表す。陶器は加工、量産のし易さから駆け出しに渡される最初の装飾品。殆どが手付かずの雑用や手伝いなどを生業とし、基本的に誰にでもできる仕事が与えられる
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「大事なんだね」
「そうね」
皆が皆、アノスの様な無垢な訳ではない。陶器の割れ方からして真面目にやっている人間はそういないのが分かる。失敗を恐れているからか
鉄等級に関しても綺麗過ぎる。凹凸の少ない装飾品なんて恥もいいところだ。冒険者が冒険をしない、それなのに等級は上がっていく、分不相応に
私の目にはこのリバレー領の街が酷く気色の悪いものに映って仕方がなかった。濁流の内にアノスが飛び込むのかと思うと吐き気がしてならなかった
まるで脆い土の壁の様だ───時間を掛ければ良い物を作れるのに酷く頼りのない見てくればかりに重きを置いた壁、お粗末極まりない様を現した言葉。この一言に尽きる




