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アノスの機嫌が良くなっている。クラウンスパイダーとの戦いの後、足取りがいつにも増して速くなっている。質問をしてみてもはぐらかされる始末
「良かった」
不気味さ漂う雰囲気は残るものの概ねいつものアノスに戻ったことが喜ばしい。だが未だにガラス細工の様な脆さを感じさせる弱々しい表情が気になって仕方がない
「ティナ?」
「ん?」
「何か考え事?」
「ん〜と」
少なくとも今は前向きになっているアノスにアーロン領からの刺客の件は伏せておこうとアノスの歩幅に合わせて駆け足をした
◆◇◆◇◆
「そうですか」
いつかの日、撤収を始める駐屯地にて、そこにリリアナというメイドの少女がやって来た。荷物を片手に衛生兵と話していた
どうにも2人が出発してしばらくした頃、その2人がここにいるのではないかという情報を頼りにやって来たとのこと
鈴の様に小さな呟きの後、一礼の後、駐屯地をリバレー領に向けて向き直るとそそくさと去って行った
「アノス様は相変わらず分からない人ですね」
駐屯地を去り際リリアナは誰にいうでもなくそう呟いた。分からないことだらけの人───アノス・アーロンは家の中でも使用人に近い待遇の育てられ方をしていた人物であり、使用人の多くもまた表には出さないもののアノスを使えるべき主人ではなく、あくまで上司として見ていた
リリアナは密かに訝しみながらもそれに準じていたものの、終ぞリリアナの感じるその違和感が払拭されることはなかった
「ゴートン様も人が悪い」
リリアナは二言目の独り言を最後に現在使えるべき主君であるゴートン次期領主の命令を遂行するべく急いでリバレー領に向けて走り出した




