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◆◇◆◇◆


 後日、改めて修練や移動の準備をしようとしたところをティナや兵士達総出で止められた


「アノス殿?お気は確かですか!」


「え?」


「アノスはまだ安静にしてないとダメでしょ」


「いや、でも怪我の方は」


「表向きが治っても内側が

 回復してなかったらダメでしょ!」


 と言う風にはちゃめちゃに怒られた


 ここで回復魔法の話なんて出そうものならより一層どやされそうなので口を閉じた。後でティナにだけは報告しておこう


◆◇◆◇◆


「本当に治ってる…」


「うん」


 信じられないと言った様子でティナが指先から丁寧に僕の腕を確認していた。回復魔法での副作用特有の機能不全もなく全快している様子にティナは大きく溜息をついた


「でも、今日一日は安静にしてなさい」


「でも」


「してなさい」


「はい」


 ティナの鋭い視線に僕は抵抗するのをやめた。回復魔法の副作用はないと分かっていても不安なのには変わらないとのことで天井を眺めることを余儀なくされた


◆◇◆◇◆


「あの女から教えられた魔法ねぇ」


 俄には信じがたいが無理している様子も、魔力による『オーバーブース』───回復魔法の作用状態にも見えなかった


 完全な回復魔法の使い方なんて聞いたことがない。私は駐屯地に現れるAやらBの化け物を氷で滅しつつ考える


 何故そんな重要なことを外部に共有しないのか、アーロン家では何が起ころうとしているのか、疑問が出て尽きない


「ここが昨日アノスが夜襲を

 返り討ちにしたっていう」


 やがて森の中でも、わずかに開けた空間に出た


 木々が自然に切り倒されており、焚火の跡も巧妙に隠されていた。後処理の完璧さから手練れ、冒険者の休憩に使っていたとするなら水銀、もしくはそれ以上の等級が考えられる


 がそんな等級の人がわざわざ実入りの少ない夜襲をするのか?と言われれば考え辛い───食料品にしてもリバレー領までそれほどの距離はない上に問題行動がバレれば降格或いは剥奪と不利益が勝る


「六花の魔術師様」


 考え込んでいると突然声を掛けられた


 応援、後処理に来てくれた兵士のひとりだった


「報告がございます」


◆◇◆◇◆


「それは本当なの?」


「真偽は定かではありませんが

 本人達はそう言っておりました」


 やってくれたなあの男


 夜襲を行った野盗は皆一様に『アーロン家』に雇われた身だと供述していたらしい。これが本当であればアノスを秘密裏に始末する算段を立てていたことになる


 そこまでして何がしたいんだあの男は自分の地位を息子であるアノスが脅かすとでも?いや、寧ろ不出来な失敗作として始末するために差し向けたに違いない


「分かりました。この事は口外しないように」


「と言いますと?」


「機密事項として本件は私が預かります」


「分かりました」


 今回ばかりは階級があったことに感謝しよう


 思わず目頭を摘む、全くもって下らない現状に無力感と苛立ちが同時に襲ってきてどうにも鼻持ちならない


 アノスがこのことを知れば深く傷つくだろう。せめて今の気持ちが落ち着き、整理がつくまでは隠し通さねばならない


 私はもう一度大きく溜息をついた


◆◇◆◇◆


 昨日の様な襲撃もなく、今日は過ぎて行き、明日は日の登り、囀り歌う鳥の声と共に早々と訪れた


「アノス、起きてる?」


 ティナがテントの中に入って来た。出発の準備は万端といった様子で魔術師の装いは新品の様に一新されていた


「うん、起きてるよ」


 という僕も駐屯地の鍛治とお針子に装備の手直しをしてもらい新品に近い装備になっており戦闘中に気を失った僕にとっては申し訳ない待遇に困っていた


◆◇◆◇◆


 一回り大きくなった鞄を背負い駐屯地を後にする、明らかに見通しの良くなった林道を前に立ち止まる


 少し前を歩いていたティナが異変を感じて振り返ると白い糸が僕に真っ直ぐ伸びて来た


「アノス?」


 今なら少し理解できる白い糸の正体、襲って来た兵士達には存在せずティナや街道で僕達を止めようとしてくれた兵士からは決闘の後に伸びて来た


 恐らくは友好の証なのだろう


 そう言えば兵士との戦いの後に見える様になったのは偶然とは考えにくい


 恐らくあの時に僕のスキルに階位が付与されたのだろうか?付与条件が不明な点を除けば喜ばしいことだ


 取り敢えずはリバレー領で武勲を上げ、アーロン家に戻ろう───リバレー領についたら手紙を送り、スキルのことやこれからのこと、汚名返上の暁には父上の元に帰れないか相談しよう


「ううん、何でもない」


 気分が幾分かよくなった足取りは軽く、昇る朝陽が心地良いと感じるのが久しぶりだった。寝ても覚めても悪夢の続きは今終わったのだから、少しくらい浮かれてもいいかなと思った


◇◆◇◆◇


【恨めしい】


 これは何なんだ?

 半身を引き摺る化け物が

 同胞の屍の中で蠢き目覚めた


 瀕死───そんなレベルではなく、まるで死体。剥き出しの歯茎に折れた足、虚な瞳で先を眺めるその姿はどうしようもないほどの哀れさを持っていた


 乾きに乾いた喉を潤すべく虚な瞳が映し出す世界を歩き、小さな血溜まりに顔をつけた。しかし当の化け物はそれが血溜まりであることを知らない


 鼻腔は潰れて匂いが嗅げず、虚な目では輪郭を捉えるのがやっとのことだった。血溜まりを見つけたきっかけでさえ嫌に鋭くなった聴覚と液体に浸かった前足の感覚でようやっと見つけたに過ぎなかった


「う、うわぁ!」


 叫び声───ba獣は叫んだ何かに一心不乱に走り出した。聞こえる足音を頼りに大きく開けた口が噛みつき逃げる叫び声の主を捉えた


「た、助けてくれ!」


 叫び声の主がそう叫んだ次の瞬間、化ke物の首は宙を舞った。叫び声の主を噛んで話さなかった顎をその場に残す形で


「おいおい!どうしたんだ!?」


「薄気味悪いブラッドウルフが出たんだよ」


「分かったから落ち着きな、倒したから」


 叫び声の主はガクガクと震えながら化けmomomomomomomomomomomomomomomoのの顎を外すと傷口の処置に入った


「皆んな警戒して」


 この日、とある林の中で混沌が生まれた。死者でありながら生者を怨み、内から抜けた『何か』を【怨念】で満たして立ち上がる


 そんな新たな化け物

『不死者』が遠吠えをあげた


 偶然居合わせた一団が異常事態だということを何となく悟ると迎撃態勢に入った。剣を抜き、斧を構え、魔法を唱える


 冷静になり、ことの収拾に努めた。幸いなことに1匹1匹が焦げていたり、半身を持っていなかったりと苦戦をする様な敵ではなかった


 居合わせた一団がこれを解決した。かに思えた───武器は腐食した肉を割く度に斬れ味を目に見えて落として行き、金属の腐食は異常な程までに早く進行した。魔力も多勢に挑めば枯渇し、撤退を判断した時には退路も無かった


 ひとり、またひとりと喉仏を食い潰され、癒えぬ渇きと腹の内へと収められた。聞くに耐えない遠吠えが林に響くと『不死者』はゆっくりと行進を始めた


 新たに加えた二足歩行の同胞とともに筆舌に尽くし難い程グロテスクな行進はアーロン領に向けて歩き出した。音が大きく、犇めくその場所へと


◇◆◇◆◇


【思考】のバグから

【不死】のバグが派生した

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