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◆◇◆◇◆


 始まりは同族を食った時だ


 今まで靄のかかっていた頭が晴れ渡ったようになり、思考を手に入れた


 糸の使い方、巣を張るだけではなく創意工夫を凝らすことができるようになり、自分よりも強い獲物も狩ることができるようになり餌が増えた


 ある時、人間と呼ばれるモノを食った時、それを見つけた『小さなヒトガタ』それは糸に繋がりもう一方にある『木の板』で操ることができた


 そこから狩れる獲物がより増えた。群がる奴らのひとりを操り、少しずつ食っては居なくなるまで食って次へ、あの場所で◼️に歯向かえる奴はいなかった


 近くにある人間の集まりを見つけてからは餓えることはなかった。ひとりずつ釣り上げて食べていれば【操り人形】も食うに困らなかった


 だが今は違う。人間が燃やした


『初めて受ける不快感』───◼️の肢体にできた欠損が妙に視界をチラつく、身体の内から湧き出る身を震わせる気色の悪いものはなんだ?


 傷を残したあいつらを食えば分かるかも知れない


 同族を食った時みたいに


◆◇◆◇◆


 それは異様な光景だった。兵士に連れられ少し潜ったその先は人ひとりいない街道だった。しかも聞いていたクラウンスパイダーの姿は確認できなかった


「見当たらない」


「それが今回のクラウンスパイダーは

 少し特殊なんです」


 私の呟きに兵士の人は話し始めた


「特殊?」


「糸が限りなく細く紡がれているせいか

 肉眼での確認が非常に困難な上

 襲われるまでその姿が見えないんです」


◆◇◆◇◆


 それは異様な光景だった。赤い糸だらけ、街道沿いの木々を覆いつくし、街道に広がる巨大な蜘蛛の巣は壁を形成していた


 確かに蜘蛛の糸なのだろうと確信が持てるのは森や廃墟で見かける様な見事な蜘蛛の巣を形作っていたからだ。ここに本体であるクラウンスパイダーがいればいよいよを持って断定できるものの姿は見えなかった


 兵士の話を聞く限り普通には見えないものだと分かったため姿を探すのを諦め、蜘蛛の巣に手を伸ばそうとしたところで兵士の人に止められた


「アノスさん、あまり近づかれないよう

 糸に絡まれば奴が飛んできます

 狡猾で糸に獲物がかからない限り

 奴は滅多に姿を現しません」


 僕の目に見えている赤い糸が蜘蛛の糸かを確かめようとしたものの止められたのでやめた。3人で襲われ挙句ひとりも情報を持ち帰れないのであれば損失は大きい、そう考えて手を引っ込めた


◆◇◆◇◆


 一先ずの撤退を余儀なくされ戻る選択をした。リーダーという柄ではないもののこの中では最も階位の高い私が仕切らなければいけなかった


「クラウンスパイダーは獲物が掛からなければ

 姿を現さないか、なかなかに厄介ね」


「ティナ」


「アノスは一旦静かに」


 分かっている。獲物がなければ出てこない───のであれば獲物を用意すればいい。単純で最も効果的な方法だ。しかし、私はそこまで冷酷にはなれない、知人にも他人にも酷を強いることを私自身が良しとしない


◆◇◆◇◆


「ティナ」


「アノスは一旦静かに」


 ティナに言われて口を閉じる。しかし、辺りに漂う赤い糸を目の前に『蜘蛛の糸』ではない何かが見え始めてきた


「…」


 黒い糸、赤い糸は恐らく攻撃を意味するのだと思う『ボーパルスライム』の時もそうだった様に張り巡らされている蜘蛛の糸は『クラウンスパイダー』の攻撃なのだろう


 僕にしか見えない糸、親しい仲?のティナですら疑うのであれば説明しても兵士の人には信じて貰えないだろう


『辺りを覆い尽くすのは黒い糸の奔流だった

 黒い糸は不規則に流れているものの

 一様に木々から伸びる糸の周りに

 存在しているのが分かった』


 何事もないといいけど

 僕は心の中で呟いた

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