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A.C.T アクト:謎の大学サークルに依頼した件について  作者:
Case4 A.C.Tの罪について

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17/17

因縁

Case4のイメージソング

tuki. 『ストレンジャーズ』

https://www.youtube.com/watch?v=lo-ocWYNKqk


結構、物語が動く予感がします・・・まだ確定ではないですがCase6での完結も考慮しています。

ぜひ後半戦を楽しんでください!!

病室の外。

心の晴れを象徴していた太陽は、流れる雲に覆われ、ゆっくりと姿を隠していった。

ポツリ、ポツリと落ちてくる雨粒が、頬を伝う。

私(咲白杏奈)は思わず一歩後ずさり、屋根代わりの陰に身を寄せた。

――忘れられない。

どうしても、あの言葉が頭から離れない。


「あいつが・・・優香を・・・」


挿絵(By みてみん)


『優香』は、今の高梨江が私たちのサークルに入るきっかけになった人物だった。

視覚障がいがあるとされていた彼女は、先月の交通事故で亡くなっている。

彼女自身を救うことはできなかったけれど、彼女を大切に想っていた高梨くんの心だけは、何とか守れた――そう思っていた。


でも、胸の奥には、ずっと小さな棘のような違和感が残っている。

もしかして、私たちが知らない何かが、まだ隠れているんじゃないか。


そう思った瞬間、私は反射的にスマホを取り出し、同じサークルの辻晴人に電話をかけていた。


「もしもし?」


「なんだ?」

といつもと変わらない、感情の読めない声。

画面越しでも、あの無表情が簡単に想像できてしまう。


「高梨くん……このサークルに入る前のさ、宮崎優香の件があったの覚えてる?あの時、調査していた内容以外で、彼女が何か被害を受けたって話、聞いたことない?」


一瞬、向こうが息を止めた気がした。


「どういうこと?」


「今日ね、高梨くんの病室に行ったら、『あいつが・・・優香を』って急に取り乱して……。私が入る前に、男の人が一人来てたみたいで。まだ終わってないことがある気がして。それに辻って、うちの中では先輩でしょ? 何か知ってるんじゃない?」


しばらく、何も聞こえない。

耳に当てたスマホが、やけに重たく感じた。


「・・・知らない」


それだけ言って、通話は一方的に切られた。

でも――「本当に何も知らない人」の声には、どうしても聞こえなかった。


その直後、視界の端を、ヨレヨレの病院服が横切る。


「え……」


ふらつきながら、それでも前に進もうとする高梨くんだった。


「ちょっと!!何してんの!!」


反射的に背中に左手を、腹に右手を回して支える。

でも、彼は荒っぽく私の腕を振り払った。


「高梨くん……何があったの?」


その瞬間、彼の足が止まる。

全身が小刻みに震えているのが、触れなくてもわかった。

突き刺すような視線が、まっすぐ私を捉える。


「お前は知ってたのか? なぜ宮崎優香の目が見えなくなったのか・・・」


「それは……元々からじゃ……」


「違う!!彼女が失明してしまうきっかけがあったんだ。それも俺たちがやってるサークルのせいでな!!」


詰め寄られて、思わず息を呑む。そこにあったのは、いつもの優しい高梨くんじゃない。怒りと絶望に塗りつぶされた、壊れそうな瞳だった。


「今すぐサークルやめろ!!あそこは、汚い手で染まってるんだよ・・・」


そう言い捨てて、また歩き出そうとする。

次の瞬間、彼の体が大きく崩れ落ちた。


「……!」


慌てて駆け寄り、支える。


「わかった。私が顧問と先輩に話、聞いてみる!!だから、今は無理しないで……」



*  *  *


その日を境に、何かが狂い始めている。

私の友人からもいくつか連絡が来た。


『ねえ、杏奈ちゃんのサークル、結構批判あるみたいだけど、大丈夫?サークル辞めた方がいいかもしれない』

『まさかとは思うけど、このSNSの噂って嘘だよね?』

と心配の声が相次ぐ。


#茜森大学 で関連づけられた投稿。

そこに書かれていたのは、目を疑う内容だった。個人情報の不正使用、恐喝まがいの依頼料徴収――。


「え・・・」


まだ夏休みというのに、SNSは茜森大学のサークルに関する投稿が大学内の学生を中心に広まっている。

特に、人助けサークルA.C.T公式アカウントを開く。検索をかけて、確認。


フォロワー数は急激に減っているし、コメント欄もかなり荒れ始めていた。


『結局、偽善サークルだったんだ!!』

『私の個人情報晒されたのかな〜、確かに依頼してから変なメールとか電話がかかるようになったの』

『最低、人間以下のゴミクズども!!』

『そういう奴が就職すると思うと、吐き気が出るわ!!』

と多くの記載が書かれていた。


多分だけど・・・顧問たちと辻晴人は何かを知っている、そう思い、電話をかけたけど、流れる着信音がリピートされるだけ。するとぷつりと応答なしの文字が表示される。


「もう何なの!!」


思わず漏れた独り言が、静かな廊下に溶けた、その時。

コツ、コツ、と靴音が近づいてくる。振り向いても、誰もいない。

――でも、確かに“いる”。


「あの……誰かいますか?」


返事はない。

代わりに、影からふらつく若い男が現れた。


「なあ・・・あんたらか?」


「え・・・」


「折り鶴連続強盗殺人事件・・・知ってるよな?」


「あ・・・」


今、世間を騒がせている事件だ。金目のものを狙い、高齢者の家を中心に侵入する連続強盗。

被害者は例外なく命を奪われ、遺体の口の中には、必ず折り鶴が押し込まれている。

逮捕された過去の容疑者には、若い学生が関わっていたケースも多い。

――それが、どうしてうちのサークルと結びつくのか。嫌な予感だけが、背中を這い上がってくる。


「お前のサークルで得た情報源は・・・連続強盗の実行者を探すために集めてるって本当か?」


その言葉に、思わず息を呑み、目を大きく見開いた。


「何それ!?」


「お前のせいで・・・今度は俺がその実行者に選ばれちまったよ・・・」


視線が、彼の手元へ落ちる。

そこには、鈍く光るナイフがあった。


「どっちみち逃げられねえんだ、殺してもいいよな?」


黒髪のボサボサに隠れていた瞳が、ぎらりと光り、私を捉える。

足がすくみ、声が喉の奥で凍りつく。


「死ねええええ!!!!」


叫び声と同時に、ナイフが大きく振り上げられた。その瞬間、小さな影が横から飛び込んでくる。

全身に強い衝撃が走り、私は思いきり突き飛ばされた。刃の軌道がずれ、男の体勢が崩れる。


「咲白先輩!!」


聞き覚えのある声に、はっとして顔を上げる。


「星野さん!!」


彼女は私の手を強く握り、立ち上がるよう必死に引き上げてくる。その勢いに身を任せ、震える足をなんとか踏ん張る。


「逃げるなよ!!」


「キャ!!」


次の瞬間、首元に荒々しい力がかかる。首の根っこを掴まれ、服が引きちぎられそうになる。

理性が吹き飛び、恐怖だけが一気に押し寄せた。


「やめて!!離して!!!」


必死に男の手首を掴むが、力の差は歴然だった。抵抗するほど、体は簡単に引き寄せられてしまう。

そのもみ合いの最中、再び視界を黒い影が横切った。

星野さんが、男の腹めがけて体当たりする。


不意を突かれた男の体が揺らぎ、足元が崩れる。その隙に、首を掴んでいた手が離れた。

――でも、動けない。

恐怖で、体が完全に固まっていた。まるで、捕食者を前にした子鹿みたいに。

逃げたい、逃げなきゃ。

でも、すぐ追いつかれる。

また掴まれて、今度こそ終わる――。

その時、


「走って!!」


星野さんの張り上げた声が、耳を打った。必死さと、悲痛さが混じったその叫び。私を逃がそうとする、真っ直ぐな瞳。――今は、彼女の行動を無駄にしちゃいけない。


杏奈、動いて。動いて!!

自分に言い聞かせるように、心の中で叫ぶ。

震える足に力を込め、無理やり地面を蹴る。

立って。立って。立って――。


必死に足を動かす。

振り返ると、体勢を立て直した星野さんが私の隣に並び、抱えるようにして一緒に走り出していた。

それ以上、男が追ってくることはなかった。


*  *  *


お墓の前に刻まれた名前をただただ眺める。『宮崎優香』


彼女は、自分にとってかけがえのない存在だった。だが彼女は、先月の交通事故で命を落とした。

周囲に頼れず、すべてを俺(高梨江)に任せていたからだ。


高校時代、なぜ視力を失ったのか。詳しく話してくれたことはなかった。


「アクシデントのせい」


そう言って微笑む彼女の横顔は、いつもどこか悲しげだった。彼女を死へ追いやったのは、光を失ったこと。

もしそれさえなければ――彼女の人生は、もっと違う未来を描いていたはずだ。


「一緒に終わらせましょう、あのサークルを」


俺の背後に現れた人の気配。

白い肌が強調された、優しい印象を与える男性が佇んでいた。病室に来てくれたあの男だ。


その男は少し目を細め、


「これ以上、苦しむ人が出ないように」



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