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「音楽は馴れ合いのツールなのよ」

「音楽は馴れ合いのツールなのよ」

「……どうしよう。

 物凄く否定したいのに

 否定できる切り口が見つかりません」

挿絵(By みてみん)


「昔ね、思ってたのよ。

 高校生以上になると、みんなバンドに憧れるじゃない」

「この国ってずっとそういう風潮ありますよね。

 けいおん! の人気とか関係なしに。

 もう少しクラシックの人気が出てもいいと思うんですよ」


「で、実際に高校からバンドはじめた人が

 社会に出ても社会人バンドとか組んで

 週末に仲間内で集まるんでしょ?」

「社会に出たことねーくせに詳しいですね」


「そういう人たち見てて思ったのよ。

 どうして弾いてるのが既存の楽曲ばかりで

 ほとんどが所謂コピーバンドなんだろうって」

「あっ! ダメですダメダメ!

 この話ここで終わりです!」


「今どきピアノ教室にもJASRACが乗り込んでくる時代だし、

 なにより音楽って芸術のジャンルなわけで

 自己を表現してなんぼじゃない?

 作曲もそんなに難しくないし。

 いくつかある音の並びのパターンを把握した上で

 それを適切に並び替えるだけ。

 言うなら将棋とやること変わってないのよ」

「それに気付けてる時点でお姉様は天才なんですよ!

 作曲と将棋がどちらも同じって言う人はじめて見ました!

 一般人はどっちもできねーし、

 そもそも取っ掛かりすら気付かねーんですよ!」


「まぁ自分の好きな曲を自分で弾いてみて

 楽しむって気持ちはわかるのよね。

 小学校ではじめてリコーダーを手にしたその日に

 まず当時放送されてたアニソンを全部吹いてみたし」

「お姉様小指が長いから、

 低い方のドも普通に出せたんでしょうね。

 そうですよ、好きな曲をやるのが楽しいからなんですよ。

 お願いなのでここで思考を打ち切ってください」


「でもね、カラオケで知らない歌を歌われた時の

 スンッ……ってなる感じで気付いたのよ」

「あっ、ダメっ……」

「知らない曲を演奏されても人は観客は盛り上がれない。

 それどころか……」

「ダメッ! ほんとにそこはダメですっ!

 やめてくださいっ! 壊れるっ!

 壊れますからっ!」




「知らない曲かつ下手な演奏なんて、聞いてられない」

「逝くぅぅぅぅうううう!!」




「コピーバンドが世に溢れるのは

 下手の横好きで許されるのが

 コピーバンドだけだから。

 そういう後ろ向きな理由で芸術性を殺し、

 ただ馴れ合うためのデバイスとしての価値しかない楽器に

 本来の楽器としての意味はあるのかしら?」

(びくんっ……びくんっ……)


「どうしたの今日はやけにダメージ受けてるわね。

 かわいい……

 気に入ったらなら今度のプレイの時は

 ずっとこういう言葉責めしてあげるけど」

「それマジでやったらドSを通り越してますからね!

 暴力なんですよ! 真実の暴力!」


「でも一周回って正しい気がするのよね。

 現代音楽の中で一番原始音楽に近いのって

 黒人音楽だと思うのよね」

「所謂ブラックミュージック、

 ブルースやソウル、ジャズですよね。

 私ジェームス・ブラウンが大好きなんですよ」


「で、この辺の黒人音楽って

 知らない曲なのに知ってる曲のような気がする。

 何かのコピーなのかな? って思って

 いろいろ自分の記憶を探っていくと

 あ、これお母さんの子宮で聞いた

 心臓の音だって気付くわけよ」

「気付かねーんですよ。

 その当たり前のように絶対記憶持ってるのがずるいんですよ。

 というか天才というキャラ設定で、

 百歩譲ってほんとに絶対記憶持ちだとしても、

 言語認知がない脳が認識した記憶を引き出せてしまうのは

 脳科学的にありえねーんですよ。

 もうそのまま『海の中に住んでた頃に聞いた並の音だ』

 とか言い出すスピリチュアルがまかり通るレベルなんですよ」


「つまり結局原始の音楽って

 誰もが知ってる音楽を再現して盛り上がるもので

 なんでもありな現代芸術の流れをくんだ

 そのミュージシャンだけの個性が出るような楽曲は

 音楽の源流から外れてしまった別物だということ。

 コピーバンドこそがバンドの目指すべき

 始原にして究極だということよ」

「最初からその結論だけ話してくれていれば……」


「言葉なんて素直な思いを丈にしても伝わらない」

「3分の1伝われば十分すぎますね」

「むしろ事実を淡々に伝えるのは暴力になるわ」

「そろそろ私DVを訴えてもいいんですか?」

「だから結局音楽が一番気持ちを伝えられるの」

「いいこといいますねぇ(現実逃避)」


「ということでね」

「ん? なんですかその箱」


「買っちゃった」

挿絵(By みてみん)


「は? ちょ、ちょっと貸してください」

「f字孔覗くのが『通』っぽくていいわね」

「うわーっ!

 やっぱりダニーロ・フィオレンティーニだーっ!」

「よくニスの反射だけで予想できたわね。

 いいとこの出って妬ましいわ。

 私の家は普通に青森の港町の漁師なのに。

 あ、これで貯金なくなったから

 資産運用のスタート用のお金貸して」

「このダメ人間がぁ!

 いやでも前見た時2500万はありましたよね?

 これ、せいぜい250万ですよね?」


「うん。あなたのもあるのよ」

「いや私はお姉様じゃないので

 いきなりヴァイオリン弾けないんですが」

「明日ヤマハCFXが届くから」

「そのピアノ多分この家より高いやつぅ!!」

「あと余ったお金で

 今更ながらヤマハ初音ミクも買っちゃった」

「余ってねぇんですよぉぉぉぉおおおお!」


「まぁともあれこれで前々から弾きたかった曲が弾けるわ」

「もういいです……

 シャコンヌでもパルティータでも

 好きなの弾いてください……」

「本当にいいとこの出よねぇあなたは。

 もっとライトなのが弾きたかったに決まってるでしょ」


「ダニーロ・フィオレンティーニの無駄使いですねぇ。

 紅蓮華でも弾くんですか?」

「元からヴァイオリンの曲よ」

「じゃぁ亡國覚醒カタルシスか

 Greed's accidentあたりですか?」

「まぁ聞きなさい。

 すぐわかるから」


 ♪~~


「え、なんでしたっけこれ。

 聞覚えはあるんですけど。

 ていうか普通にめっちゃうまいの腹立ちますね」

「岩肌刻む文字は all shining blue」

「ガリアンワールドだこれ!!」

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