「SMの話をするわ」
「SMの話をするわ」
「大丈夫ですか?
プレイは別枠で投稿してるんですよ?
こっちの読み切り、R-18タグついてませんよ?
投稿するシリーズ間違えてませんか?」
「性行為は生物として当たり前の繁殖行為。
三大欲求の1つに数えられる種の本能で
それにどこかタブー的な印象が付随したのは
人間が社会という群れを構築するに至ったため。
性は種には必要だけど、社会には不要なのよ」
「まぁ今も昔も、情念で判断間違えて人生終わる人なんて
星の数ほどいますからね。
悪女、ファム・ファタールなんてもう
集合的無意識にプリインストールされてるレベルです」
「そんな性行為が気持ちいいのも、
女性がエクスタシーと同時に『Come!』って叫ぶのも
種の本能としては正しく当たり前のことなのよ」
「性行為が苦痛だったら子孫残せず絶滅しますもんね。
『Come!』に関してはあれですよね、原始人類乱婚説ですよね。
それまだいろいろと賛否両論ある話ですよ」
「その理屈で考えるとSMはおかしい。
少なくともR-18で語られるのに性行為じゃない。
そう踏まえるとSM小説はR-18タグ外しても良くない?」
「今確認したところによると、
pixivのレーティングの理由には暴力、酒とタバコと薬物、
言語と思想、反社会的表現、宗教って書いてあるんですよ。
私が酒をカバーすることでお姉様はフルコンプなんで
むしろこっちもR-18タグつけるべきなんですよ」
「SMはある意味で自傷行為。
リストカットに近いようなもの。
でも、自傷で言うならそもそも自慰が自傷なの」
「臨床心理学的には余裕で自傷カウントで、
酷い場合は拘束衣を着せられますね」
「ただ、自慰に関してはまだ性行為が気持ち良いという
脳のシステムをハックしてるんだけど
SMはそれが完全に崩壊している。
つまり、SMは理念で脳を騙してるの」
「それが社会に抑圧された性の歴史に繋がるんですか?」
「そっちに繋げても語れるんだけどね。
私は、SMこそが究極的な愛を確かめ合う行為だと思うの」
「それについては同意します」
「そもそも世間的に行われている性行為の何%に愛があるのか」
「性行為なんて今じゃ真っ先にDVに繋がる要素ですからね」
「エロゲで『いっしょにイこう』ってキャラが言い合ってるのを見て
『なるほどそういうものか』と思った童貞は知らない。
2人が息を合わせていっしょにイくことなどほぼ不可能であると」
「少し考えれば当たり前にわかることなんですけどね」
「女性側が先に達してしまって
オーバーフロウする快が不快に反転する中
早く終わってと必死に天井のシミを数え続けるか」
「なんだか昭和のラブコメみたいな表現しますね」
「一瞬で達した男性に蔑視の視線を向けつつ
結局その場で自慰をして終わらせるか」
「そこからのまだ行けるでしょってシチュに憧れる男性も多いらしいです」
「とにかく、どうあっても性行為はどちらかの独善で終わる。
むしろ性行為こそが相手を無視した愛の対極なのよ」
「そんな一方的な衝動的暴力を受け入れることが
愛のような気はしますけどね」
「その点SMは違う。
SMはお互いが完全なコンセンサスの上で行う
究極的な歩み寄りなの」
「よくその手の小説だとS側が暴走しちゃって
M側が本気で苦しがって涙してるシーンがありますけど
ああいうのを見て勘違いするんでしょうね。
あれはSMじゃない。ただの暴力です。
本当に幸せなSMならあの涙も拒絶も全部演技で、
むしろ暴走すらも演技です」
「演技。そうね、演技ね。
昭和中期まで演劇は娯楽の王様であり
すべての知識人の基礎教養だった。
だから昭和のインテリはSMの文化的意味にハマる。
三島由紀夫にはじまり、あの時代の文学は
SMを理解しないと読み解けないものが多いわ」
「逆に言うとそれだけ難しくて、
結果もっとシンプルでわかりやすい娯楽が
求められちゃった現代に至るんですね。
媚薬とか洗脳とか時間停止とか」
「本当にくだらない。
みんな世の媚薬とか洗脳とか時間停止の99%が
小学校の学芸会レベルのお遊戯だと気付いてないのかしら」
「むしろちゃんとしたSMが描かれてるのを見ると
M側が満足できずにS側の心が折れる描写の方が多いんですよね」
「極まっちゃう本気で骨を折ったり爪を剥ぐことを
要求するようなMもいるからね。
流石にそれに答えられるSは多くない」
「お姉様、私が骨を折ってってお願いしたら」
「あなたはそんなこと言わない」
「……はい」
「とまぁ、ある意味SMは現代で唯一
ベトナム戦争でPTSDになった米兵の気持ちを
追体感できる合法的手段になっちゃうのよ」
「逃げるやつはMで
逃げないやつが訓練されたMなんですよ」
「そんなSMのイメージでいうと、
高級ホテルにスーツケースを引いた女王様に来てもらう
みたいなのがあると思うだけど」
「あれはダメですね」
「そうね、女王様には申し訳ないけど、ダメね。
本物のSMを体験するためには、
お互いの理念や人生すべてを理解しないとダメ。
むしろ私達ですらそこに至れていない気がする」
「3番テーブルの客よろしく、
同じ台本をお互いの立場のモノローグを入れながら
プレイの様子を描くSM小説とか読んでみたいですね。
あ、これステマです」
「とにかく、どんなプロの女王様でも
資本主義の豚が求める完璧なスウィートスポットに
鞭の一撃を入れることは事実上不可能」
「体験談を読んでると、女王様が豚に失望したり
逆に豚に引いたりする話ばかりですもんね」
「いずれ出来るようになるとしても、
SMプレイの相場は風俗の中でも高め。
理想的なSMに到れるまでに必要なコストは
あまりに高すぎる」
「普通に女王様の人生買った方が安いまであります。
実際にそうやってお願いしたり
女王様にマンション買ってあげる企業の社長さんは多いそうですよ」
「じゃぁどうSMをやるかって言えば、
それはもう普通に付き合ったり結婚に至った
幸せなカップルでやるしかないわけで」
「でも流石にSM趣味を暴露するのは
夜の相性チェックレベルEXTREMEなんですよ」
「だから言ったでしょ。
インテリは最終的にSMを基礎教養とするって。
つまり、高学歴カップルの9割は最終的にSMにハマる」
「お姉様、今本郷と駒場にあるご自身の母校の株を
致命的なレベルで暴落させませんでしたか?」
「まぁちょっと頭が良くて
ニーチェが基礎教養だと思ってる人なら
Eラン卒でもSMにハマれるわ。
そろそろ春も一段落で夏が近づき合コンのシーズン。
数合わせで誘われて会場に入ったら、
まず『僕が馬になるので鞭で打ってくれる方はいませんか?』
からお話をはじめるのをオススメするわ」
「二度と合コンに呼ばれなくなるRTAですか?」
「でも一度でもお互いのお互いのスウィートスポットを
的確にさらけ出すSMの快楽に気付いてしまったら
もう他のあらゆる快楽では満足できない体になる」
「それで本当に人生を楽しめるようになるのか、
人生をつまらなくさせるのかは諸説あると思いますね」
「私の目を見て本音を言ってもいいわよ」
「つまらなくなります」
「これって本当に学びの罠なのよ。
今YouTubeだといろんな学問をライトに学んだり
ゆっくりに喋らせるコンテンツが流行ってて
大人だからこそ学ぼう、学びは力だ、
みたいな風潮が流行ってるけどね。
人間、新しい知識は身につけられても
既にある知識はなくせないの。
その不可逆性は破滅にしか繋がっていない。
人類史の賢人はほとんどが自殺してるし、
人類最高の賢者に至っては裁判で処刑されてるのよ。
だから、こんな私の話は聞いてちゃダメなの」
「わかってるなら気軽に他人の人生破壊しないでください。
テロなんですよ、もうこれは」
「大丈夫、まだ全然浅い話しかしていない。
私達の会話の中で深く解説されない専門用語が
たくさんでてくるでしょう?」
「半分くらいアニメ・ゲーム系な気もしますが」
「そういうところを自分で深く学び始めたら終わりね。
特にニーチェの道は地獄に繋がってるわ」
「SMは途中駅を全部通過してジュデッカ一直線ですね」
「でもなんか、こういうインテリの会話を
なるほどわからんと隣で聞くのが
なんだか楽しいらしいと聞いてね。
それでこんな対話をやってるのよ」
「もしかして私ってプラトンだったんですか?」
「あと、普通にR-18版ではレズSMをやってるし。
あなたも毎回いろんなコスを楽しんでるし」
「そのアニメキャラ本人ではなく、
アニメキャラの衣装を着る別人に萌えるっていう
マニアックな需要があるらしいんですよ。
あ、でも流石にセンシブティブなので
ウマの衣装は着ません」
「そういうライトなとこから読んでくれてもいいと思うの。
私がいろんなとこで罠を伏せとくから」
「SM小説かと思ったらいきなり近代ヨーロッパの
貴族女性達が長手袋に物を出して植木鉢に捨ててた話とか
そんな明日絶対使えない豆知識を詰め込まれる読者がかわいそうでなりません」
「飲尿のコツはタメになったでしょう?」
「ならねぇんですよ。
ほぼ100%の人間は死ぬまでに一度も飲尿しないんですよ」
「スーツでサハラ砂漠に投げ出されないの?」
「キートン先生は凄い話だからマスターキートンなんです。
どこでもある日常の話だったらもう顧問キートンなんですよ」
「あなたもいきなり東京ポッド許可局のことなんて考えるから」
「いや、だってブロックワードの話されたので……」
「お互いがわかりあって調整しているとはいえ、
つい興奮してしまって行き過ぎてしまう時はある。
そんな時のため、SMにブロックワードは必須。
よくあるSMシーンでは『どうしてもダメ』とかが
ブロックワードになっているケースがあるけど
これはまるでブロックワードの体裁がなってない」
「お姉様、仮にブロックワードがそれで
私が『どうしてもダメ』って言ったらどうします?」
「興奮してもっと強く打つわね」
「ですよね」
「そもそもブロックワードが出てしまうような状況は
S側がヒートアップして判断を見誤ってる状況。
そんな状況で、命乞いや謝罪のようなブロックワードを吐かれても
まるで効果がないのよ。
だからブロックワードは、
一気にその場が冷めてしまうようなワードである必要がある」
「最近だと『ちいかわ』とか多そうですよね。
お姉様、プレイ中に私が
『ちいかわ! ちいかわ! ちいかわ!』
って言ったらどうします?」
「一瞬で我に返ってあなたを抱きしめて謝るわ」
「ですよね」
「その点東京ポッド許可局はいいブロックワードよね。
早口言葉めいてるから、
本当に限界になるワンテンポ前に言わないといけない」
「サンキュータツオさんには申し訳ないんですが、
これは本当にいいブロックワードですよ」
「あのサンキュータツオさんならむしろ納得の上で理解してくれるわ。
もしかしたら辞書のブロックワードの用例に使ってくれるかも」
「ブロックワードが収録されてる国語辞書とか嫌なんですよ」
「と、ここから本格的にSMの話をはじめるとなると」
「まだ全然本格じゃないみたいなこと言いやがります」
「流石にR-18タグが必要になるので」
「そのレベルの良心は残ってたんですね」
「読み切りではここまでにさせてもらうわ」
「あ、そうだ。
お姉様。私から1つお願いしていいですか?」
「なにかしら」
「pixiv小説に投稿したR-18版なんですけど
お姉様主観パートが初動の時点で
私主観の倍なんですよ」
「ふむ。セットで読むものなのにね」
「で、その原因なんですけど。
扉絵がお姉様主観は私が見えてるので
私がトネリココスで鎖に吊るされてる絵で
私主観はお姉様は普通のSMボンテージなところに
原因があるんじゃないかなと思うんですよね」
「なるほど。一理ある」
「ということで、
次回からはお姉様も私がコスを用意していいですか?」
「好きにしなさい」
「ありがとうございます!
えへへ、何にしようかなぁ。
水着獅子王とか、八雲さんとか風見さんとか、
ビスマルクだと艦これとアズレンのどっちかなぁ。
20周年だしなのはとか!
ほら私、フェイトちゃんの持ってますから!
お姉様がなの……」
「なのはなら私、
プレシア・テスタロッサがいい」
「……ちょうど、明日1日空いてますよ」
「はいはい今度ね。
1日じゃコス用意できないでしょ」
「うっ……それは、まぁ……」
「とりあえずご飯にしましょ。
なんか作るわ」
「あれ? 冷蔵庫の中まだ残ってました?」
「午前中にスーパー行ったの」
「引きこもりのお姉様がスーパーに!?」
「そしたら玉ねぎが安くて。
たくさん買っちゃった」
「うわーっ! 計画性ぃぃい!!
どうすんですかこんな量ぉぉお!!」