「やっぱSNSが全部悪いのよ」
「今日はいつもと落ちが違うんだけどね」
「あ、いつも結局人類滅びろになるやつですね。
もしかしてお姉様、光落ちしたんですか?」
「いや、全然」
「あ、はい。じゃぁ落ちだけ先にどうぞ」
「やっぱSNSが全部悪いのよ」
「あー……まぁ、はい」
「順番に話すとね、
まず最初はマンスプレイニングの是非を考えてたことなのよ」
「お姉様ずっとそのこと考えてますよね」
「私わりと自然にマンスプレイニングにしちゃっては、
上から目線がうざいって言われてきた身だからね。
そこへの苛立ちがずっとあったのよ」
「言われること事態は仕方ないと思うんですけどね」
「そうなのよ。仕方ないのよ。
そうやって自己正当化した上で、
じゃぁどうしてこのすれ違いが起きるかを考えたわけ」
「なるほどなるほど。
じゃぁ私、日々マンスプレイニングされてる側をやってみますね」
「いいわね。実例出しながらだとわかりやすい」
「最近私、ジークアクスからファースト見始めたんですよ」
「嘘松」
「たとえ話だって言ったじゃないですか!」
「それにしてもそんな炎上と宗教戦争待ったなしの話題を選ぶなんて」
「だからこそじゃないですか?」
「確かに。続けなさい」
「それで、改めてガンダムって面白いなって思ったんですよ。
今日から私もガンヲタを名乗っていきますよ!」
「待ちなさい。ファーストを見ただけでガンヲタを名乗らないで」
「でも漫画のオリジンも見ましたよ?」
「オリジンは全部読んで映像も凄いなぁって思ってから
それでもやっぱりこれは富野ガンダムじゃないって吐き捨てないとダメなのよ」
「なにそれめんどくさい」
「少なくともガンヲタを名乗りたいなら、
朝日ソノラマ版の小説ガンダムと、Zガンダムと、
ベルトーチカ・チルドレンと、閃光のハサウェイと、
ガイア・ギアを読んでから名乗りなさい」
「なんなんですか私はガンダムの話がしたいだけなのに
そうやって自分の知識をひけらかすみたいに!」
「というのが典型的なすれ違いよね」
「そうですね。この例だと私は、
新しいことに興味を持って、
新しく知った話をお姉様と共有したいって思ってるんですけど」
「私は共有したくないのよ。
いちいち不正確な情報を訂正したり、
知らないことを教えながら話すのはめんどくさいのよ。
私もガンダムの話はしたいんだけど、
するならするで私と同等の知識の人と話したいのよ。
教えて教えてってつきまとう素人ほど
鬱陶しい悪党はいないのよ」
「つまりさっきの会話の状況、
最後に私がキレたからお姉様はマンスプレイニングしてきた悪者になりましたけど、
そこで私がキレずに話が続いたら今度はお姉様がキレて私が悪者になるんですよね」
「そういうこと。絶対にキレて終わる会話なのに、
最後まで我慢してキレなかった方が悪者になる。
どうしようもなく悲しい話だわ」
「このすれ違いの原因って、
2人の知識に差がありすぎることですよね」
「と、思うじゃない?
そこが違うのよ。そもそも普通なら、
知識に差がありすぎる人同士に会話の機会は訪れないのよ」
「あー、なるほど。
歴史研究してる大学教授の先生に
大河ドラマ好きのおじさんが本能寺の変について話がしたいなんて言っても
当たり前に無視されて終わりで会話なんてできないですよね」
「仮に知識に差があるとしても、
2人が最初から仲が良い知り合いなら問題ないの。
その場合私はあなたに順番に見るべきガンダム作品を教えるし、
あなたも私のめんどくささを知ってるから、
とりあえず教わったものを見てから話をしようと思うわけ」
「なるほど。そうなりますね。
もう先が読めました。
それでSNSがダメなんですか」
「そういうこと。
SNSは大学教授と歴史好きのおじさんが会話できちゃうし、
見ず知らずの人とのコメントのやり取りもできちゃうのよ」
「しかも見ず知らずの相手と話す場合、
上の例での私の『ガンダム詳しいですよ』と
お姉様の『ガンダム詳しいわ』が最初は同じ情報に見えるんですね。
そりゃぁ知識差マッチングが乱立してクソコメラッシュです」
「そうね。その上で実はさらなる問題があるのよ」
「さらなる問題ですか?」
「上の例の状態で私もあなたもお互いに
『ガンダムを語り合える人を探そう』と思っていたと仮定しましょう。
それをSNSを用いて探そうとした場合、
どういう方法を取るのが目的達成の最短ルートかしら?」
「そうですねぇ……『ガンダムについてお姉様と語り合いたい』のではなく
『ただガンダムが語れる相手が欲しい』のであれば
とりあえず絡んでみてこの人ダメだって思ったら
適当に会話を打ち切って次へ……あ」
「そう。それが出来ちゃうのがSNSの問題なのよ。
どれだけ他人を傷つけても、
傷つけた後を見なければノーダメなのよ」
「効率だけ考えたらそうなりますよねぇ。
けど、それはあまりにも人の心がなさすぎませんか?」
「じゃぁ最初にマッチングした相手が
どうしようもなく知識差がある相手だとしても
知識がある側は無条件に教え続けないとダメで、
無い側はどれだけバカにされても耐えないといけないの?」
「……せ、せめて、穏便な立ち去り方を……」
「出来る人、出来る相手がすべてだと思う?」
「無理ですねぇ……」
「これね、ガンダムに限った話じゃないのよ」
「まぁそうですよね。とにかく知識差があると……」
「単純な知識差もそうなんだけど、思考力の差もそうだわ。
お互いがゼロからスタートで会話をするにしても、
片方だけ物わかりが良すぎたら最終的に知識差が出来ちゃうの」
「つまりはある程度同じくらいの頭の良さ、
同じくらいの価値観の相手とだけ固まるべき、と」
「で、それが一番簡単に構築できるのが、
学歴社会なのよ」
「そういう話になるんですか?」
「なっちゃうのよ。
実はね、偏差値60オーバーの中高一貫校の進学校と
その辺の公立中学で教えてる内容って全然差がないのよ。
むしろ進学校にも適当な教師はいるし、
公立にもすごくわかりやすい良い先生はいるの」
「でもクラスメイトの頭の良さがまるで違うんですね」
「そうなのよ。
だから中学高校受験ってね、偏差値が高い学校に行くのが重要なんじゃないの。
自分の偏差値に合った学校に行くのが重要なの。
そこで学歴で世界を分断することが、個々の幸せになるコツなのよ」
「で、でも、そこから話を続けると、
国とか民族とかで世界は分断されるべきって話になりませんか?」
「それは極端な話よ。そもそも学歴社会の賛美も十分極端。
でもね、こういう分断を悪と定義して、
誰もが繋がれるグローバル社会を良しとする風潮作って
一番得するのって、SNSの運営よね」
「あー……」
「結局、極端はダメでちょうどいいを目指すのが一番ってのは
どんな話でも結論になる話だと思うわ。
けどね、SNSという環境がそもそも極端なのよ。
総理大臣や大統領がアカウント持ってて、
そこにコメントをつけると読んでもらえて、
レスが返ってくることもあるような環境って、極端すぎない?」
「言われてみると物凄く極端です……!」
「この問題事態はSNSの運営も理解していて、
是正する方向で話が進んだこともあったわ。
けど、自由であること、便利であること、気軽であることが
理想であるSNSを意図的に不自由にすることは
結局誰も求めてないし、なによりSNSで稼いでる
運営も広告主も求めてなかったのよ」
「聞いたことあります。
Facebookでそういう動きがあったんですよね」
「そうなるとYouTubeのコメント欄がクソコメで荒れるのも当たり前の話でね。
もう結局自由なインターネットがダメなのよ」
「実はここもコメントできるんですけど、つかないですよね」
「つけてみなさいよ。10倍でカウンターするか3秒でブロックするから」
「だからコメがつかねぇんですよ」
「ともあれSNSって、実は極端な環境なの。
そして、SNSは一利あるけど百害がある巨悪なのよ」
「これはわりと同意できちゃいますねぇ」
「SNSが当たり前の環境に慣れると
結果どんどん病んでいくにしてもSNSから離れられなくなるわ。
それは私もよくわかってるし、
SNS断ちはかなりの苦行だった。
もうほとんど麻薬だったと思うわ。
けど、どうにかSNS断ちをした結果今の私は健康だし、
もう二度ともSNSは触らない。
ちらりと見たくもないの。
同じ理由で私、YouTubeのコメント欄とかも
全部の動画で表示されないようにアドオン入れてるし」
「わかります。とにかくSNS断ちは絶対辛いですよ。
でも、SNSは断った方がいい。
これは事実なんでしょうね」
「まぁ辛くない人は別にいいのよ。
汚い水の中でしか生きられない魚もいる。
そんな魚にとっては清流こそが泥水よ。
ともあれ繊細だと思うなら、
生き方を考えないと今の社会は地獄よ」
「そうやって苦しんでる人たくさんいますからねぇ。
一体どうすれば人類はインターネットやSNSと
うまく付き合っていけるんでしょうか」
「実はとても簡単な方法で解決できるわ」
「それは」
「半年ROMれ」
「温故知新!」




