「終戦の日なので戦争を考えましょう」
「終戦の日なので戦争を考えましょう」
「また今回も嫌な予感がしますねぇ」
「駅前で戦争反対9条改正反対の演説がされてたのよ」
「まぁそういう日ですしね。
個人的には同意します」
「そうね。私も戦争反対の側」
「そのスタンスであられることは安心です」
「ところがその演説の中で
今の日本の格差と不平等を訴えだしたのよ。
労働者と経営者、男性と女性みたいな」
「それも個人的には同意しますね」
「そうね。私も同意していい話だとは思う」
「良かった、今日はまともな話になりそうです」
「しかしこの両方を望むのはありえない。
どちらかを諦めなさい」
「は? なんで?」
「これはね。ロジックの問題じゃないの。
人類の歴史で必ずそうなってるという事実なの。
だから『そんなことない』と言われても
『なっとるやろがい』と言うしかない。
まずこの事実を認めてもらうしかないの」
「その証拠! 証拠を見せてください!」
「第一次世界対戦以降、戦争は国家総力戦になった。
軍人や軍需産業に関わっていなくても
空襲により家を焼かれてしまう。
これは日本人ならよくわかってる話ね」
「東京大空襲や原爆ですね」
「では第二次大戦のアメリカ市民が無事だったかと言われると
空襲こそ受けていないものの、
滅茶苦茶なデフレや資源不足で
市民も企業も相当苦しんでいた。
結局は戦争って、お互いに洗面器に水を突っ込んで
どちらが長く我慢できるかを強要される話なのよ」
「そうですね。
巻き込まれる側は溜まったものじゃないです」
「そう。覚悟を持って戦争に挑むなら
それは確かに政治と外交のひとつと言えるの。
でも、巻き込まれるのがよろしくないのよ。
特に子供が巻き込まれるのは絶対ダメね」
「まったくもってその通りです」
「こうして全員が水の中で息を止めるとね、
格差がなくなるのよ」
「そこがわからないんですよ。
最初に苦しむのは低所得者層のはずです」
「そのとおりよ。でもね。
人間ってわりとしぶといから、
雑草と雨水で生きてられるの。
戦争がはじまるとまず低所得者層がそうなる。
でもここで即座に死ぬわけじゃない。
そしてまもなく中所得者層もそうなる。
そして最終的に高所得者層もそうなる。
こうして最終的に全員平等になり格差が消えるの」
「あー……」
「しかもこの流れで当然ながら
低所得者層がたくさん死ぬんだけど、
そうなると今までの中所得者層以上も
働かないと戦後は労働力が足りなくなるの。
そこで高所得になれるのって、
戦前の地位じゃなくて、
その瞬間の能力が重要になるわけ」
「確かに戦後に成り上がって大儲けした
商才に優れた人のエピソードってよく聞きますね」
「つまり、戦争という理不尽が社会を平等化することは
認めるしかないのよね」
「それ以外の方法でも平等化はできると思いますが、
戦争が社会を平等化すること自体は間違いなさそうです」
「そんな理不尽な戦争が起きないと、
スタートダッシュの際に発生した格差が確定し、
どんどん広がっていくわけ。
これは当たり前な話なんだけどね。
理不尽がなければ、お金があればあるほど
学ぶチャンスや良い道具や就労環境が構築され
さらに収入がアップするでしょ?」
「そうなっちゃいますね」
「それ自体は当たり前だし悪いことじゃないんだけど、
これが50年100年と続くと上下の差がもう
個人の努力で覆さない差になっちゃうのよ。
そこをリセットするには、
長期間全体へ平等にかかる理不尽しかない」
「それが戦争なんですかぁ……」
「格差を悪く言う際にはよく、
上の人が下を抑圧して、
自己の権力を守る悪役が出てくるでしょ?」
「出てきますね。胸糞悪いです」
「もちろんそういう人もいて、
こういう人が格差の逆転を阻害するのは事実よ。
でもね、格差を広げるのはこういう小悪党じゃない。
まともに頑張ってる優秀で勤勉な人こそが、
一番格差を広げてるのよ」
「あー……」
「そしてそれを認めたくないから、
上の人間を悪役だと信じるバイアスが生まれるの。
ダークステイトとか言って、
頑張ってた人たちをみんな悪役だと考えたくなる。
でも、そうとしか思えないほど、
長く続いた平和な世界での格差は覆せないのよ」
「うわー……」
「と、そういう理屈で
戦争が格差をなくし、平和が格差を作る。
このデータは実際に国勢調査のグラフで出てるんだけど、
そうやってデータを見ても信じたくない人は信じないから、
データよりもロジックの方が納得感あると思うのよね」
「数字よりもエピソードの方がわかりやすいのもあります」
「納得したらした上でデータも見てほしいんだけど。
ともあれ、戦争も嫌。格差も嫌。
でも、どちらかを諦めないとダメ。
では、80年平和が続いた日本で諦めるのって、どっち?」
「うー……」
「という話になっちゃうわけよ」
「でもこれって、絶対に解決方法ないんですかね?」
「あるわよ」
「あるんですか!? それは!?」
「共産主義ね」
「うわー……」
「ただ、共産主義はみんなが平等になるのではなく、
みんなが貧乏になるクソ政策だというのは
歴史が証明してるわよね」
「そうですね。共産主義は結局夢物語でした」
「ならその平等化するためのリソース、
全体の財産が莫大なら?」
「全員そこそこに幸せになりますね」
「その財産が無限なら?」
「全員幸せになります!」
「目指すのはそこなのよ」
「うーん、まぁ理屈の上ではそうですけど、
無限の財産とかチート以外じゃありえないでしょ。
最近は水ですらこの地球の資源で足りてないんですよ」
「地球では、ね」
「あー、なるほど」
「そう。太陽の核融合エネルギーをダイソンスウォームで
発電に利用できれば発電や車のエンジンに使ってる
化石燃料が浮くようになる。
木星の衛星エウロパから水持ってくれば水不足も解決する。
最終的にはブラックホールを制御すれば、
鉄をはじめとしたあらゆる資材が生成できるの。
理屈の上ではね」
「SFだなぁ」
「だから合理的に全体の幸せの最大化を目指すなら、
宇宙開発と物理科学に全力で予算を回しながら、
100年周期くらいで戦争してみんなボロボロになって、
戦争、平和、革命のエンドレスワルツを続け、
最終的に無限宇宙共産主義を目指すべきなのよ」
「私今、ハサウェイを乗せたタクシードライバーの気分です」




